ここまで見てきたように、対外的にも、自分自身にとっても、アウトプットにはさまざまなメリットがあります。筆者自身、アウトプットを繰り返すことで、自分の考えを整理でき、さまざまなチャンスにつながりました。いまでは、仕事を楽しむための便利なツールになっています。
けれども、ただ書けばいいというわけではありません。
以下のことを少し意識することで、毎日のアウトプットも楽しくなってきます。
最も重要なのは、「相手のことを思って書く」ことです。
例えば、筆者が文章を書く場合は、以下のようなパターンを意識します。
まず、読んでくれる人が
など、どんな現実に置かれているのかを考えます。
次に、
など、理想の状況を考えます。そして、理想と現実を埋めるためには、どんなことが必要なのかを、解決策として提示していきます。
こうして、読んでくれる人がどんな気持ちなのかを考えながら書いているのです。
筆者がアウトプットの一環としてメールマガジンを書き始めたころは、「プロジェクトのリーダーは○○であるべきだ」というような、格好良いことや理想論を書かなければならないと思っていました。けれども、読者からの反応はなかなか得られず、メールマガジンを書き続けるモチベーションが下がっていた時期がありました。
そこで、「○○であるべきだ」という理想論から、筆者がプロジェクトリーダー時代に、部下との接し方で失敗したことや、悩んでいたこと、そこから何を考え、どんな風に工夫したのかを書くようにしました。すると、読者からの反応が得られるようになってきたのです。
多くの人にとって、「理想論は分かる。けれども、できない」というのが現実だと思います。だから、理想論ばかりを書いても、共感を得るのは難しいのです。
自分の失敗談や悩みを文章にするのは恥ずかしいかもしれません。それでも、失敗談や悩んでいたことを共有し、そこからうまくいくようになったプロセスを文章にすることで、共感を得やすくなるのです。
記事を書く際、「こんなことは当たり前すぎるかもしれない。ほかの人の役に立つのだろうか」と考えてしまことがあると思います。
筆者が本を書いたときもそうでした。「こんなこと、ほかの本にも書いてあることだ。それを、いかにも自分の意見のように書いてもいいのだろうか」と悩んでいたのです。筆者の悩みに対し、編集者は次のように回答をくれました。
どんな当たり前のことでも、あなたの体験を、あなたの言葉で書けば大丈夫なのです。
「クラウド」「ソリューション」……IT業界で使われる言葉は、専門用語や横文字であふれています。IT業界にいる人にとっては当たり前の言葉でも、IT業界に関わりのない人にとっては、まるで理解できない言葉かもしれません。
難しい言葉が並ぶと、人はそれだけで抵抗感を抱いてしまいます。
誰にでも分かるような言葉を使うことで、読者からの共感を得られやすくなるのではないかと思います。著者の場合は、小学生にでも分かるように書くことを意識しています。
文章を書いていると、さまざまな考えが頭に浮かんできます。その考えを、1つの文章の中に詰め込みたくなるでしょう。けれども、さまざまなテーマが詰め込まれている文章は、焦点がはっきりせず、読みにくいものです。
1つのテーマに絞ると焦点が明確になり、いいたいことが伝わりやすくなります。
インターネット上の記事で、批判的な意見で注目を浴びることを「炎上した」などといいます。せっかく自分の考えを書いたのに、批判されるのはつらいものです。批判されるのが怖いがために、ブログをなかなか書き出せないという人もいると思います。
炎上する記事にはいろいろなパターンがありますが、記事自体に批判的な要素が含まれている場合が多いように思います。批判的な記事は批判を集めやすいのかもしれません。
インターネットは過去の記録が残ります。自分という歴史を残すためにも、批判的な内容には気をつけたいところです。
今回は、主にブログなど、文章を通じたアウトプットのメリットと、そのポイントについてお話をしました。ブログに限らず、音声や動画など、ほかのアウトプットにも同様のことがいえるでしょう。
もし、「山ほどあるブログの中で、読んでもらうのは大変だ」と思う場合は、@IT自分戦略研究所 エンジニアライフなどでコラムを書いてみるのも1つの方法だと思います。
アウトプットは、自分と向き合うことができる、成長感を味わえる、自分をアピールできる――と、良いことずくめです。外部要因に振り回されず、エンジニアの仕事を楽しむための最初の一歩として、あなたが日々感じたことや、身につけたスキルを、ぜひアウトプットしてみてください。
竹内義晴
テイクウェーブ代表。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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