ワークグループネットワークには手軽にファイルを共有する仕組みがある。OSごとに異なるその設定方法を解説。
前回はワークグループ・ネットワークとは何か、主にユーザー・アカウント管理の視点から見たワークグループ・ネットワークの運用形態について簡単に解説した。今回は、Windows OS別に見た、基本的なファイル共有のセットアップ方法について解説する。
以下、Windows OS別にファイル共有の機能やその操作方法について、簡単にまとめておこう。
Windows 3.x(Windows for Workgroup 3.11)やWindows 95/98/Meなどは、Windowsネットワークにおける最も基本的(原始的)な形態のファイル共有機能を提供している。以下は、Windows Meにおけるフォルダの共有設定画面である。
現在のWindows OSと比べると、これらのWindows OSでは「共有レベルのアクセス制御」が利用されているのが大きな違いである。画面から分かるように、共有ごとに「読み取り専用アクセス用」と「フル アクセス用」の2つのパスワードが設定できるが(どちらか片方でもよい)、どちらのパスワードを使ってアクセスしているかで、書き込みが禁止されたり、許可されたりする。誰がアクセスしているかは関係なく、パスワードでのみ保護されている。
これに対して、アクセスしているユーザーを識別して、ユーザーごとに個別にアクセス権を設定できるようにしたものを「ユーザーレベルのアクセス制御」という。NTドメインが利用できるようになったWindows 95から導入されており、現在のWindows OS(Windows NT以降のOS)ではこの方法しかサポートされていない。
なお、デフォルトではフォルダの公開機能は無効になっている。最初にネットワーク・コンピュータのアイコンを右クリックして、ネットワークのダイアログでファイル/プリンタ共有を手動で有効にしておく必要がある。
Windows 2000以降(正確にはWindows NT以降)のWindows OSでは、ユーザーという概念が導入され、ユーザーごとにそれぞれ独立したデスクトップ環境を持つようになっている(Windows 9x/Meでは、どのユーザー名でログオンしても、デスクトップは同じであった。ユーザー名は単にネットワークへ接続するときの識別にのみ利用されていた)。そしてユーザーごとに利用できる権限や権利が厳しく管理される、「アクセス制御」という考え方が取り入れられている。ネットワーク経由でリソースを利用する場合も同様で、ユーザーやグループごとに可能な操作が細かく設定できるし、権限のないユーザーにはリソースそのものをまったく見せないようにするといった設定も可能である。
ファイル共有の設定は次の画面の通りである。ファイルの共有機能そのものはあらかじめ有効になっているため、[このフォルダを共有する]を選択すれば、すぐにフォルダの共有が開始される。アクセス権の設定は、デフォルトではEveryoneに対してフルコントロール可となっているが、これは危険なので(Windows XP以降では、デフォルトではEveryoneに対して読み取りのみ可、となっている)、必要に応じてアクセス権を設定する。
アクセス権の設定は次の画面のようになっている。デフォルトではEveryone=フルコントロールとなっているので、「読み取り」のみなどに変更し、ほかのユーザーやユーザー・グループを追加する。
なお、アクセス権を設定する場合は、上のように個別のユーザーではなく、ユーザー・グループを追加するのがよいだろう。この画面でユーザー・アカウントを直接追加・削除していると、ユーザーが増えたときにいちいち共有の設定を変えなければならないからだ。その点、グループを使ってアクセス権を設定しておけば、ユーザー・アカウント作成時に適切なグループを割り当てるだけで、共有の設定は何も変更する必要がないはずだ。
また原則として、保護したいリソース(ファイルなど)にはファイル・システム側で厳密にアクセス権を設定し、共有側ではあまり複雑にならない程度に緩和した設定にするのがよいだろう。上の画面で分かるように、共有側で設定可能なアクセス権の種類は3つしかないからだ。
ファイルの共有機能についていえば、Windows XPの共有機能はWindows 2000のものとほとんど同じであるが、セキュリティについては強化されているので若干注意が必要である。Windows 2000の頃はファイアウォールがまだOS標準機能としては含まれていなかったので(機能が非常に限定されたパケット・フィルタはあったが、設定が面倒なこともあってほとんど使われていなかった。連載「常時接続時代のパーソナル・セキュリティ対策――Windows NT/2000のパケット・フィルタリング機能」参照)、ファイルを共有する手順は非常に簡単だった。例えばコマンド・プロンプトを開いて「net share data=c:\data」というコマンドを入力・実行するだけですぐにフォルダを公開することができた。
だがWindows XP(特にWindows XP SP2)以降ではファイアウォールの機能が強化され、デフォルトではファイル共有サービスは、外部からアクセスできないようになっている。そのため、コマンド・プロンプト上でnet shareコマンドを実行するだけではファイル共有は利用できず、さらにファイアウォールでファイル共有サービス用ポートを許可するといった操作も必要になる。
このような面倒を避けるためには、Windows XPの持つ共有設定GUI画面を使うとよい。GUI画面上で共有を設定すると、自動的に必要なファイル共有ポートなどをオープンに設定してくれるので便利である。少なくとも最初の共有だけはGUI画面で設定し、net shareコマンドによる設定は2つ目以降にするとよいだろう。
さてWindows XPをワークグループ・ネットワーク構成で利用している場合、フォルダを公開するには2つの方法がある。以下、それぞれについて見ていこう。
これはWindows XPのデフォルト状態で可能な共有のモードである。このモードでは、同一ワークグループに属しているユーザーとファイルを簡単にやり取りできるように、設定手順が簡略化される。従来のWindows 9xの頃のような簡単なファイル共有機能を実現するためのものであり、次のような状態でファイル・アクセスが行われる。
「匿名アクセス」とは、パスワードなしでファイル・サーバにアクセスする特殊な方法であり、ファイル公開側(サーバ側)のセキュリティ設定を緩和して誰でも簡単にファイル共有を可能にする機能である(前回の「■Guestアカウントによる匿名アクセス」およびTIPS「匿名ファイル・アクセスを許可する」参照)。
簡易ファイルの共有では、Guestアカウント経由でアクセスされることになる。そのため、例えばファイルを読み書きするためには、共有のアクセス権でEveryoneに対して読み書きの権限を与えるだけでなく、共有対象のファイル・システム上のフォルダやファイルにおいても、Everyoneに対する読み書きの権限を与えておく必要がある。セキュリティ的にはその分だけ脆弱になるので、十分注意して利用していただきたい。
「簡易ファイルの共有」機能を有効にするには、エクスプローラの[ツール]−[フォルダ オプション]メニューを実行し、[表示]タブを選択する。そして[詳細設定]にある以下の設定をオンにする(TIPS「簡易ファイルの共有機能を利用する」も参照)。
次にエクスプローラで公開したいフォルダを選択して右クリックし、ポップアップ・メニューから[共有とセキュリティ]を選択する。すると、最初の1回は次のようなダイアログが表示されるので、内容を確認後、[危険を認識した上で、……]のリンクをクリックする。
すると次のように表示内容が変わるので、共有のためのチェック・ボックスをオンにする。細かいアクセス権の設定は必要なく(そもそも設定できない)、これだけでフォルダを共有できる。可能なアクセス権は、「読み取りのみ」か「読み書き可」の2種類だけである。
こうやって共有されたフォルダをほかのコンピュータから使用している場合、それは匿名アクセスが使われている。匿名アクセスであるかどうかを確認するには、コンピュータの管理ツールで共有フォルダのセッション情報を確認すればよい。右端の「ゲスト」欄が「はい」になっていれば、それは匿名アクセスを表している。
簡易ファイルの共有を利用しない場合やドメインに参加している場合は、従来のような共有ダイアログを使った共有設定を行う。[共有]タブにこの設定画面を表示させるには、前述のフォルダ・オプションの設定で[簡易ファイルの共有を使用する (推奨)]のチェックを外してオフにする。
[アクセス許可]をクリックすると細かいアクセス権設定が行える。この部分はWindows 2000と同じである。
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