本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNP(Cisco Certified Network Professional)のうち、2010年12月に日本語版が改訂された新試験【642-813 SWITCH】を解説します。
今回はMST(Multiple Spanning Tree)を学習します。
MSTは、複数のVLANをインスタンスというグループにまとめて、そのインスタンスごとにスパニングツリーを動作させる技術です。MST はIEEE802.1sで定義されています。MSTにおいて使用するプロトコルがMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)です。MSTPを使用することで、スイッチのCPU負荷を減少させ、またRSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)も有効になり、高速なコンバージェンスが実現できます。
PVST(Per VLAN Spanning Tree)は、VLANごとにスパニングツリー計算が行われるため、スイッチのメモリやCPUに負荷をかけます。MSTPでは、VLANをインスタンスというグループにまとめ、インスタンスごとにスパニングツリー計算を行うため、その負荷を減少させられます。
例えば、図1では3つのスイッチにおいて、1000個のVLANが存在します。もしVLANごとにスパニングツリーを動作させたとすると、1000のスパニングツリー計算が発生します。そこで、1000個のVLANを2グループ(インスタンス)に分けて、インスタンス単位でスパニングツリー計算を行うと、インスタンスごとにルートブリッジやブロックポートが決定し、負荷分散を行えます。
MSTには「領域」という考え方があります。MST領域とは、同じMSTPの計算を行う範囲のことです。複数の領域が存在する場合には、それぞれの領域を1つの大きな仮想スイッチとみなして、仮想スイッチ間でSTP(Spanning Tree Protocol)の計算を実行します。
各スイッチを同じ領域にするためには、各スイッチに3つの一致した情報を設定する必要があります。
領域名は、大文字・小文字が区別されます。32バイトまでの英数字を指定します。リビジョン番号は領域内のすべてのスイッチで同じ番号を設定します。VLAN番号とインスタンスのマッピングは、何番のVLAN番号を、何番のインスタンスに関連付けるか、を指定します。
リビジョン番号を指定しておくと、領域設定の変更管理に有効です。設定を変更するごとに管理者がリビジョン番号を1つ増加させます。ただし、同じ領域内のすべてのスイッチで、リビジョン番号を統一する必要があるので注意してください。この3つの情報が一致すると、同じ領域のスイッチであると認識されます。
MSTPでは、インスタンスごとにスパニングツリー計算を行います。BPDU(Bridge Protocol Data Unit)は、インスタンスごとに送信されるのではありません。1つのBPDUの中に、Mレコードというものが追加されます。各Mレコードにインスタンス情報が入ります。インスタンス情報にはブリッジIDが含まれ、インスタンスを区別するために、ブリッジIDの拡張システムID部分にはインスタンス番号が格納されます。
また、MSTを有効にすると、自動的にRSTPも有効になります。
MSTにおいて、同じ領域にするために設定する項目を、次の選択肢の中からいくつでも選択しなさい。
a.VLAN番号とインスタンスのマッピング
b.ルートポート
c.領域名
d.リビジョン番号
a、c、d
MSTを有効にするためにルートポートを指定する必要はありません。MST設定には領域名、リビジョン番号、VLAN番号と対応するインスタンス番号を設定します。
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