これまでに述べてきた入力値チェックのやり方は、JavaScriptを一切用いていませんでした。JavaScriptを用いなくとも、ユーザビリティの高いクライアントサイドでの入力値チェックが行えるというのは非常に大きな利点です。
が、これまで述べたような単純な入力値チェックでは要件を満たせない場合や、Ajaxを用いてサーバとの通信を行うWebアプリケーションなどでは、入力値チェックをJavaScriptで制御する必要が生じます。
HTML5では、そうしたニーズにも答えられるよう、フォーム関連要素に以下のようなAPIが用意されています。
上記のAPIを組み合わせれば、かなり高度な入力値チェックを実装可能です。
以下の例は、パスワードとパスワードの確認入力が一致するかどうかを、上記のAPIを使用してチェックしています。また、入力値に1つでもエラーがある場合、画面の上部に「入力にエラーがあります」と赤字で表示しています。
<!DOCTYPE html> <meta charset="UTF-8"> <style> #errorMessage { color: red; } </style> <form> <div id="errorMessage"></div> <label for="name">お名前:</label> <input name="name" id="name" required><br> <label for="password">パスワード:</label> <input type="password" name="password" id="password" required><br> <label for="passwordConfirm">パスワード(確認):</label> <input type="password" name="passwordConfirm" id="passwordConfirm" required><br> <input type="submit" value="送信"> </form> <script> var form = document.forms[0]; form.onsubmit = function() { // エラーメッセージをクリアする form.password.setCustomValidity(""); // パスワードの一致確認 if (form.password.value != form.passwordConfirm.value) { // 一致していなかったら、エラーメッセージを表示する form.password.setCustomValidity("パスワードと確認用パスワードが一致しません"); } }; // 入力値チェックエラーが発生したときの処理 form.addEventListener("invalid", function() { document.getElementById("errorMessage").innerHTML = "入力値にエラーがあります"; }, false); </script>
これまでの内容でお分かりのとおり、入力値チェックは基本的にマークアップで「静的に」行うものです。しかし、いついかなる時でも入力値チェックが実行されるというのは、あまり柔軟性がありません。
例えば、ウィザード形式で対話型に進んでいくようなWebページを作成している場合は、「前のページに戻る」といったボタンが必要になるでしょう。そうした「戻る」というアクションを行うときに、入力チェックは必要ありません。
HTML5では、こうした「(状況に応じて)入力チェックをオフにする」という方法も用意されています。具体的には、以下の属性を付与したり、プロパティにtrueを指定することで実現します。
前述の例で挙げた「入力チェックの必要がないボタン」を実現するには、以下のように、送信ボタンにformnovalidate属性を使用すればいいのです。
<!DOCTYPE html> <meta charset="UTF-8"> <form> <label for="name">お名前:</label> <input name="name" id="name" required><br> ... <input type="submit" value="送信"> <!-- 入力値チェックを行わずに、1つ前のページに戻る --> <input type="submit" value="戻る" formaction="/back" formnovalidate> </form>
上記コードについては、このサンプルで確認できます。
これまで4回にわたって解説してきましたが、フォーム関連要素はもともとボリュームが多いうえに変更点が多岐にわたり、説明できていない属性などもまだまだ有ります。
今回はフォーム関連要素に関する説明の最終回ということで、今までの説明から漏れていた重要なトピックについても簡単に説明します。
autofocus属性は、画面ロード時に最初にフォーカスが当たる要素を指定するための属性です。画面が表示された瞬間から入力を始められるかどうか、はユーザーにとっての使い勝手が大きく異なる部分ですので、積極的に使っていきたい属性です。
以下のように、フォーム要素に「autofocus」という属性を指定するだけです。Chrome 10、Firefox 4、Opera 11、Safari 5での動作を確認しました。
<input type="text" name="name" autofocus>
HTML5では、フォームに関連した要素(<input><button><textarea>など)は、<form>の内部に記述する必要がありません。すべてのフォーム関連要素は「form」という属性を持ち、その属性値として<form>要素のIDを指定すれば、そのフォームに所属しているものとして扱われます。
これは非常に大きな変化です。今までは、自由にフォーム要素をレイアウトしようと思っても、すべてを<form>の内部に書かなくてはならないというのが、デザイン上の足かせになってしまっていました。これからは、<form>要素との入れ子関係に縛られることなく、自由にWebページのデザインができます。
以下の例は、「form01」というIDのフォームの外に、<input>要素を配置しています。このサンプルはChrome 10、Opera 11、Firefox 4での動作を確認しました。
<!DOCTYPE html> <meta charset="UTF-8"> <label for="name">お名前:</label> <!-- input要素がform01の外に出ている --> <input name="name" id="name" form="form01"> <form id="form01"> <input type="submit" value="送信"> </form>
多くのフォーム関連要素は、これまでも値が変更されたことをchangeイベントで検知できました。また、テキストを入力するタイプの<input>要素(もしくは<textarea>要素)では、ユーザーの入力をinputイベントでも捕捉できした。
HTML5から新しく加えられたforminputイベントやformchangeイベントを利用すると、フォーム内の要素に対して入力や変更が行われたことを、1つのイベントハンドラで捕捉できます。
document.forms[0].addEventListener("forminput", function() { // フォーム入力時の処理 }, false);
現在のところ、forminputイベント/formchangeイベントに対応しているのはOperaのみです。forminputイベントについては、このサンプルで確認できます。
また、これらのイベントを明示的に発生させるための「dispatchFormInput()」や「dispatchFormChange()」といったメソッドが<form>要素のJavaScript APIとして追加されました。
フォームに関連した要素の説明は、今回でいったん終了とさせていただきます。次回からは、<video>要素や<audio>要素などのマルチメディア系の機能についての解説を行います。
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HTML5関連でいろいろ活動中。いまはHTML5をビジネスに活用すべく、日々奮闘中です。第1弾サービス、「DaVinciPad」は順調に稼働中。趣味は子どもたちと遊ぶこと
著書
・「HTML5&API入門」(2010 日経BP社)
・「Google Gearsスタートガイド」(2007 技術評論社)
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