「スクラム」は、アジャイル開発の手法群の中でも、「チームとしての仕事の進め方」に特化したフレームワークだ。スクラムの知識を応用して、開発チームの日常をちょっとリファクタリングしてみよう。
●課題:
●スクラムのプラクティス
「上司とのコミュニケーション時には、常に“ほう・れん・そう”をしなさい」
「報告しろ、連絡しろ、相談しろ」。新人研修で、必ずと言っていいほど教えられるフレーズです。もしかしたら今、教える側の人がいるかもしれません。
「ほう・れん・そう」は、覚えやすいという素晴らしい利点があるのですが、重大な欠陥があります。「いつ/どのくらいそれを行えばよいか」を教えてくれないのです。
もう1つのほう・れん・そうの問題は、「意外と時間が掛かる」という点です。ですが、時間を無駄にしないようにするために、コミュニケーションを疎かにするわけにもいきません。
「時間を節約する」ことと「コミュニケーションロスをなくす」、どちらもうまく両立させる方法はないでしょうか?
あります。
皆さんは「スクラム」をご存じでしょうか? スクラムは、世界中で採用が進んでいる、ソフトウェア開発のマネジメント・フレームワークで、アジャイル開発の手法群の中でも、「チームとしての仕事の進め方」に特化した枠組みです。
本連載は、「まずはちょっとしたスクラム」をモットーに、チームとしての仕事の進め方を改善するスクラムの知識を簡潔にお伝えします。
「開発現場でスクラムやアジャイル開発を使ったことがないんだけど……」というエンジニアでも大丈夫。多くの現場で使えるような、汎用性の高い「スクラムのプラクティス」を紹介する予定です。
部下:「○○の件はこのように進めていますが、××についてお客さまに指摘されて、問題になってまして……」
上司: 「ふむふむ、……どうしてこういう進め方になっているの? こんな大事なことを事前に相談しなかったんだ」
部下:モヤモヤ(どこからどこまで相談すればいいのさ!)
上司:モヤモヤ(どの問題が大事かも判断できないのか!)
こんなやりとりが、きっと今もどこかのオフィスで繰り広げられているでしょう。上司にどこまでを報告し、どこは報告しなくていいのか、境界線を明確にすることは簡単ではありません。
「そんなことは簡単だよ。いつでも報告しろ」―― 上司はこう言うかもしれません。しかし、実際には「いつでも」報告されると、上司側は仕事になりません。
1回の相談にどれくらい時間が掛かるかを考えてみましょう。状況の説明を行い、議論を行うとします。経験上、10分のつもりが気が付くと30分、会議の時間になって時間切れ、なんていうことがたびたびありました。
10人の部下を持つ上司が、平均週20分ずつ部下の話を聞くとすると、合計200分の時間が掛かります。しかも、細切れに。相談が必ず20分で終わるという保証は、どこにもありません。10分で済んでラッキーということもあれば、1時間かけても終わらないことだってあります。突発的なミーティングをいつ仕掛けられるか分からない状況で、上司は他の業務もこなさなければいけません。
「ほう・れん・そう」は上司にとっても、頭を悩ませる大きな問題なのです。上司にとっても部下にとっても役に立つうまい解決策として、スクラムのプラクティス「朝会(デイリースクラム)」を取り入れてみましょう。
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