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» 2011年11月14日 00時00分 公開

エンジニアは自分の名を売って稼げ――Android技術者認定の狙いIT資格Watch!(1)(2/2 ページ)

[星暁雄,@IT]
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教育コンテンツを「バザール方式」で作る

 少々話がややこしくなるが、OESFは資格事業とは別に、Android技術者の教育事業も行っている。

 資格と教育事業は完全に分離しているため、ベンダ資格のように「認定試験の受験には教育コースの受講が必須」というわけではない。ただ、Android技術者を育成・認定していく上で、教育と試験は両方とも必要だったと、満岡氏は語る。

 教育コースの立ち上げには、OESF独特のやり方が取り入れられている。

 「教育コースを作るためには、まず講師と教材が必要です。そこで、Androidに興味を持っている開発会社に足を運びました。彼らはエンジニア向けの社内教育用のコンテンツを持っています。それを提供してほしい、と言いました」(満岡氏)

 この話だけ聞けば、対価を伴わないコンテンツ提供ということになり、なんとも無茶な話だと思うかもしれない。だが、満岡氏はここで「オープンソース・ソフトウェア」の世界に特有の「バザール方式」の発想が重要だと語る。

 「コンテンツを提供するリターンとして、私たちは教育コンテンツに社名やクレジットを明記します。いずれ、資格と同様にグローバル展開させる教育コンテンツに、自社の名前が掲載されることは良いPRになると、企業側は納得してくれました」

 開発者がオープンソース・プロジェクトにソースコードをコントリビュートするように、教育コンテンツを企業とOESFが一緒になって作る。これが、OESFが目指す「教育制度」の在り方だ。そして、これらの提供コンテンツを使って、OESFが認定した講師と認定トレーニングパートナーが教鞭を執る。現在はアプリケーション、プラットフォーム合わせて5コースのみだが、今後はさらにコースを拡大していく予定だという。

 ちなみにOESFでは、収益を他の活動に再投資している。例えば、ワーキンググループ内のプロジェクト運営や、国内外での展示会出展などだ。特に、アジア諸外国とビジネスを活性化させるために、台湾のCOMPUTEXには毎年出展しているという。

「組み込みエンジニアの意識を変えたい」

 「エンジニアにはもっと、アウトプットを明示してほしい。自作のAndroidアプリを公開すれば、名刺以上の役割を果たします

 自己アピールをしたいなら、名刺の代わりに技術的な成果を公開するべきだ、と満岡氏は力説する。Webエンジニアの間ではこうした「アウトプットで自分の実力を示す」という考え方は広まりつつあるが、組み込みエンジニアにとってはまだなじみがない考え方かもしれない。

 従来の組み込みソフトウェア開発は、専門性が強く、かつ守秘義務の制約もあったことから、エンジニア同士の情報交換が活発ではなく、閉鎖的な世界だった。だが、Linuxをはじめオープンソース・ソフトウェアの活用が進み、さらにオープンな仕様に基づくインターネット対応のスマートデバイスが普及してきたことで、状況は急激に変わりつつある。Androidは組み込み開発者にとって「オープンな世界」への重要な足掛かりとなるのだ。

 「私自身、組み込みの世界に10年以上いたエンジニアです。日が当たらないエンジニアも大勢知っています。彼らの意識を変えたい、そんな思いがあります」

 エンジニアが名前を売るチャンスを作る、そしてエンジニアがきちんと稼げるような仕組みを作る――満岡氏の興味はそこにある。

 だから、Android技術者認定試験は、運営そのものもオープンソース・ソフトウェアの発想に則っている。問題の作成は誰でも参加できるようにして、参加したエンジニアの名前はきちんと残す。そうすれば「Android技術者認定試験の開発に関わりました」と自己アピールに応用できる。

 「“どこそこの会社に勤めています”といったアピール方法ではなく、エンジニアが自分の腕と名前で“自活”していけるようにしていきたいんです」と満岡氏は本音を漏らしてくれた。

 こんな「熱い」思いを秘めた資格が日本から登場したことは、実に興味深い。2012年以降、Android技術者認定試験は世界でどう受け入れられていくのか――今後に注目したい資格である。

筆者紹介

星暁雄(ほしあきお)

Tジャーナリスト。1986年から2006年まで日経BP社に勤務。1997年から2002年までオンラインメディア『日経Javaレビュー』編集長を務める。

イノベーティブなソフトウェア分野全般に関心を持つ。今はAndroidが特に興味深い分野だと感じている。

もう1つの関心事は、ITの時代のメディアのアーキテクチャ。2008年、次世代メディアの探求の1つとして、ソーシャルアノテーションサービス『コモンズ・マーカー』を公開。より詳細な経歴はこちら



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