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» 2011年12月08日 00時00分 公開

FCoEとマルチパスイーサネット技術の関係次世代データセンターを支えるイーサネット(3)(1/2 ページ)

クラウド時代を迎え、ネットワーク環境には仮想サーバとの連携やネットワーク自体の仮想化、高い冗長性の実現といった一段高い要件が求められるようになった。こうした課題の解決を目指して標準化が進む新しいイーサネット技術、Shortest Path Bridging(SPB)について解説する(編集部)

[日野直之,日本アバイア株式会社]

イーサネットストレージの登場

 今回は、データセンターで求められるもう1つの大きな要件、イーサネットストレージへの対応について検討していく。レイヤ2のマルチパス対応技術であるSPBTRILL(TRansparent Interconnection of Lots of Links)イーサネットストレージの関係を具体的に説明する前に、少し、イーサネットストレージのおさらいをしておきたい。

 まず、ファイバチャネル(FC)などの専用メディアではなく、イーサネットを介してストレージを処理するイーサネットストレージが、一体なぜ登場してきたのかを考えてみたい。

 よくいわれる理由は、ケーブリングの簡素化やI/Oの統合である。USBがPCのさまざまなI/Oを統合したように、イーサネットでサーバのI/O接続を統合できれば、運用は非常に楽になるだろう。

 しかし、実利用上の大きな理由がもう1つ考えられる。それは、ライブマイグレーションへの対応だ。

 ハイパーバイザーが提供するライブマイグレーション機能によって、仮想サーバは、異なる物理サーバの間を自由に移動可能になった。しかし、仮想サーバが移動しても、ストレージが同時にそれに付随して移動することは難しい。ライブマイグレーションの前と後とで、同じようにストレージに接続できることが必要とされるのである。

図1 ライブマイグレーションではストレージの移動が課題に 図1 ライブマイグレーションではストレージの移動が課題に(クリックすると拡大します)

 これを実現するため、移動した先のサーバからSANを経由してストレージに接続することも考えられるだろう。だが、イーサネットからストレージにアクセスできれば、新たにSANを構築する必要性も小さくなる。そこで登場するのが、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)に代表されるイーサネットストレージ技術である。

 ストレージのへのアクセスさえ確保できればいいというのであれば、CIFSやNFSといったプロトコルを利用し、NASへアクセスする形でもいいのではないか? という意見もあるだろう。確かに、NASの利用も解決方法の1つである。

 しかし、NASではどうしても処理速度の面で不満を感じる場面が出てきてしまうし、FCが持っているゾーニングのような仕組みがないため、複数のポリシーを持ったユーザーやアプリケーション間で効果的にアクセス制限を実現するにも限界がある。

 そこで、イーサネット上で利用可能で、処理のオーバヘッドが少なく、FCで実現しているストレージ共有の仕組みをそのまま利用可能なFCoEなどのイーサネットストレージ技術が登場してきた。2Gbpsや4Gbps FCよりも高速な10Gbpsイーサネットが登場し、利用しやすくなったことも背景の1つにあるだろう。

FC技術、4つの特徴

 まずは、FCoEへ移行するに当たって最低限でも考慮しなければならないFCの特徴についてまとめてみたい。

 1点目は、「FCはロスレスである」ということだ。FCには、送信ノードと受信ノードの間でBuffer-to-Bufferクレジット(BBクレジット)を用い、ノード間にある装置のバッファサイズを超えるようなフレームは新たに送信しない仕組みが備わっているからである。

 2点目は、「FCはマルチパス対応である」ということだ。ここでノードへの到達を保障するための仕組みとして、Fabric Shortest Path First(FSPF)を備えている。

 3点目は、「FCのネットワークであるファブリックに接続する際には、ログインが必要である」ということだ。ファブリックへのログインと同時に、FCの通信に必要なFCIDが払い出され、BBクレジットの値を決めたりする仕組みになっている。その後さらに、アダプタの属性をファブリック全体で共有するためのネームサーバへの登録や、ノード間での通信を可能にするための情報の交換をするポートログインという動作も実施する。

 4点目は、「ゾーニングというセキュリティ機構が備わっている」ことである。FCを利用してSANを構築し、複数のサーバでストレージを共有できるのはいいが、用途によっては逆に、共有させたくないという場面も生じる。そこでFCには、どのノードとどのノードが通信できるかといった事柄を、ファブリック全体で管理できる機能がある。

 例えていえば、イーサネットやIPネットワークで共有しているサーバに対し、アクセスコントロールリストを設定し、不必要な共有はさせないよう設定することと似ている。違いは、個々のスイッチで設定するのではなく、ファブリック全体(VSAN)でゾーン設定を共有することだ。

「ロスをしない」イーサネットの実現方法

 さて、イーサネットストレージは、FCの特徴をどのように実装しているのだろうか。まず、FCの1番目の特徴であるロスレス通信をイーサネット上で実現する技術であるDCB(Data Center Bridging)について見てみよう。

 DCBは複数の標準から構成されている。具体的には、「IEEE 802.1Qbb Priority Flow Control(PFC)」といわれる優先制御の手法、「IEEE 802.1Qaz Enhanced Transmission Selection(ETS)」といわれる帯域確保の手法、そして「IEEE 802.1Qau Congestion Notification(CN)」(すでに「IEEE 802.1Q-2011」の一部として標準化完了済み)といわれる輻輳(ふくそう)制御の仕組みである。さらに、IEEE 802.1Qazに含まれているプロトコルに、DCBX(Data Center Bridge eXchange Protocol)がある。

 詳細の紹介は避けるが、簡単にそれぞれの役割を説明しよう。PFCは、フローを8つのプライオリティに分け、それらを独立した論理的なリンクとして扱う。それにより、PAUSEフレームを受信した場合でも、すべてのトラフィックを停止する必要はなく、特定の論理的なリンクだけPAUSEさせることが可能になる。

 CNは、輻輳が発生したノードからエンドノードにそのことを通知し、輻輳を抑制させる技術である。トラフィックの送信元であるエンドノードに通知することによって、HOLブロッキングを防ぎ、無駄なフレームロスを発生させない仕組みである。

 ETSは優先度を定義し、帯域をあらかじめ確保する技術である。イーサネットにおけるQoSのようなものだ。

 これらはイーサネットの拡張として標準化が進められており、SPBは比較的親和性が高い。しかし、SPB、TRILLはともにトンネル技術であるため、DCBのフレームがカプセル化する前に、フレームが持っていた情報を、カプセル化しているフレームにコピーする必要がある。一方で、一部のフレームはカプセル化せずに、そのままノードに届ける必要もある。TRILLでは、これらDCB関連フレームや情報をカプセル化するために、draft-eastlake-trill-rbridge-dcbというインターネットドラフトを作成し、標準化を進めている。

2つのプロトコルからなるFCoE技術

 続いて今後の議論のために、FCoE技術の要点を簡単にまとめておきたい。

図2 FCoEのフレーム構造 図2 FCoEのフレーム構造(クリックすると拡大します)

 FCをイーサネット上で利用するには、2つのプロトコルが必要である。1つは、FCフレームをカプセル化するデータプレインを形成する、FCoEプロトコルである。

 もう1つは、FC技術の特徴で述べたが、FCではネットワークを利用する際にはファブリックにログインが必要である。そのログイン機構をイーサネット上で実現するのがFIP(FCoE Initialization Protocol)だ。このFIPによるログインのやりとりの中で、FCoEのデータプレインで利用するイーサネットのMACアドレスが、ファブリックから払い出される。このため、FCoEのデータプレインではアドレス解決のためのブロードキャストが発生しない。

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