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» 2011年12月08日 00時00分 公開

FCoEとマルチパスイーサネット技術の関係次世代データセンターを支えるイーサネット(3)(2/2 ページ)

[日野直之,日本アバイア株式会社]
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2つに大別できるFCoEのデザイン

 ところで、FCoEには(イーサネット的に)マルチホップなネットワークを作成する際には、大きく分けて2つの考え方がある。

 1つは、中継するすべてのノードで完全なFC機能を動作させるもの。もう1つは、中継ノードにおいては、FCoEフレームをイーサネットフレームとしてのみ、もしくは通過するFCフレームとして処理し、一部の必要なノードにおいてのみ完全なFCとして処理するものだ。前者を「スパースFCoE」、後者を「デンスFCoE」と呼ぶこともある。

図3 スパースFCoEとデンスFCoE 図3 スパースFCoEとデンスFCoE

 デンスFCoEに必要とされる機能に、FCF(FCoE Forwarder)がある。デンスFCoEは、FCから見ると非常に単純なデザインだ。各ノードは受け取ったFCoEフレームからFCフレームを取り出してFCとして処理を行い、イーサネットでカプセル化して、FCoEフレームとして処理をする。

 つまり、各ノード間はFCそのものとして接続されている。このため、FCoEが利用しているネットワークではFSPFが動作しており、ループの発生がない。さらにFIPにより、FCoEフォワーディングで利用するMACアドレスもファブリック全体で共有されているため、アドレス解決のためのブロードキャストも発生しない。従って、デンスFCoEに基づいてネットワークをデザインすれば、SPBやTRILLといったマルチパスイーサネットの技術を必要としないのである。

 一方のスパースFCoEの場合は、各ノード(イーサネットスイッチ)からFCoEに対する関与の仕方が複数ある。ここでは、FIPパケットを監視し、FCのネットワークが前提とするPoint to Pointの通信をイーサネット上でも実現するために、ACLを動的に設定し、安全にFCoEを利用可能とするFIP snooping機能を持ったスイッチの例を考えてみよう(もっと単純な例として、DCBに対応したスイッチをFCに関わる処理をせずに通過する場合もある)。

 FIP snooping対応のスイッチは、FIPによるログインについては認識して処理するが、FCフレームをスイッチ内で処理することはない。イーサネットフレームとして処理するだけである。従って、すべてのノードでFSPFが動作していないため、マルチパスを取ることが困難である。

 スパースFCoEとデンスFCoEの機能的な違いについても見てみよう。デンスFCoEの場合、FCの特徴の1つである「ゾーニング」などすべての機能をFC上で実現できる。また、BBクレジットの値も、ノードのキューを表現したものになっている。

 スパースFCoEの場合、FIP snoopingでは、BBクレジットの値もFIP snoopingを実行しているノードのイーサネットのキューについては何も関与できない。ここは、DCBのPFC機能が保障しなければならない。

 さらにセキュリティに関しても、FIP snoopingではFCが備えているゾーニングではなく、MACアドレスに対するアクセスリストを自動的に設定し、FCoEのフォワーディングがポイントツーポイントになるように保障しているだけである。当然、FIPフォワーディングするスイッチがあっても、FCFが動作しているスイッチではゾーニングは動作可能である。

FCoEとマルチパスイーサネットの関係は

 こうした理由から、FCoEを使うからといって、必ずしもそのネットワークはマルチパスなイーサネットで構築される必然性はないことが分かっていただけただろうか?

 ところが、である。賢明な読者であればお気付きだろうが、データセンターのネットワークはFCoEだけが利用するわけではない。当たり前ではあるが、いままでのIP通信なども同時に利用する。

 従って、デンスFCoEなデザインをした場合にFCoEがマルチパスを要求しないからといって、データセンターネットワークにはSPBやTRILLといったマルチパスネットワークは必要ない、ということにはならない。IPによる通信などには、マルチパスによるメリットがやはり求められる。

 もちろんFCoEは、スパースFCoEなデザイン、例えばマルチパスイーサネット上でFIP snoopingを利用して構築することも可能だ。また逆に、SPBやTRILLのすべてのノードでデンスFCoEなデザインを採用し、FCF機能を動作させることも間違っているとは限らない。

 マルチパスイーサネットのメリットは、イーサネットストレージ以外にもあることは、これまで述べてきた通りである。必要な機能、コストなどを見極めて、適切なネットワークを構築すべきだ。

FCoEのデザインから見たSPBとTRILL

 FCoEのネットワークデザインという点から、SPBとTRILLを比較してみよう。

 第1回第2回と述べてきたが、SPBとTRILLの大きな違いの1つに、中継ノードでの処理がある。SPBは「ブリッジ」でTRILLは「ルーティング」であるといわれる。

 SPBでは、SPBの網に入るエッジのノードで生成されたフレームが、そのまま伝送されていく。つまり、エッジのノードでどのような経路を通って伝送されていくか決まっている。それに対してTRILLでは、TRILL網のエッジノードだけでなく、通過するすべてのノードにて、どこに転送されるか決定されていく。

 ここで注意しておきたいのが、SPBやTRILLの上で2つのFCoEのデザインを実現するときに、どちらを選ぶかによって大きな違いが生じるように思われていることだ。いわく、「SPBの場合は、各ノードで経路選択をしないのでスパースなFCoEのデザインにすべきである」とか、「TRILLの場合は各ノードで経路選択をするので、スパースでもデンスも、どちらのデザインもとりやすい」といった考え方だ。

 しかしSPBにおいても、隣のノードをあて先にしてフレームを転送するのは自然なことである点を思い出してほしい。デンスFCoEのデザインでは、たまたま宛先が網内の隣のノードになっているだけである。つまり、SPBでもどちらのデザインもとれるのである。

互いに独立した技術

 結論からすると、イーサネットストレージの利用には、必ずしもSPBやTRILLのようなマルチパスイーサネット技術を要求されないという話となり、非常に恐縮である。だが繰り返しになるが、マルチパスイーサネット技術によって、FCoEネットワークを構築する際、デンスFCoEなデザインのFCFを利用する高コストなネットワークを選択せずに、スパースFCoEのような、より安価なデザインが採用可能になるのである。

 データセンターネットワークの三種の神器である、マルチパスイーサネット技術のTRILL/SPBと、DCB、EVBの技術は、それぞれ独立して機能する。それぞれを同時に利用し、補完することが可能だが、互いに必須の技術というわけではないことを再認識いただけたと思う。

 以上3回に渡って、SPBを中心として、データセンターネットワークを支えるマルチパスイーサネット技術について紹介してきた。最終回では、マルチパスイーサネットとキャリアイーサネットに触れて、まとめとしたい。


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