私が常に心掛けていることがあります。
「聴講者が、必ず1つ何かを持って帰ることができる内容にする」
内容は何でも構いません。ちょっとしたTipsやトリビアのようなものでもいいので、いただいた時間のお礼として必ず入れるようにしています。
今回の例で言えば、「あいまいなモノゴト(曖昧領域)」(p.22)と、その正体である「適当な握り、過度な期待、ほのめかし、病んだ政治」(p.43)です。
そして対処法として、とある名プロジェクトマネージャから教わった「曖昧領域は必要悪」(p.44)と、書籍(PMBOK)からの引用であるP.52の「プロジェクトチームとプロセスの関係性」を紹介しました。これらはいずれも、知っていれば最悪の事態を回避する確率を高められるTipsです。
私は話下手です。モノゴトを整理して順序良く人に説明することが得意ではありません。
そもそも人を退屈させずに話せるスキルを持つ人は、実はそんなに多くありません。皆さんだって、結婚式などの宴席でよくある乾杯の挨拶で退屈した経験があると思います(もし経験がないなら、あなたはとても幸せだ!)。乾杯のスピーチは、せいぜい3分から5分。それでも「しゃべりだけ」では退屈してしまうものなのです。話だけで聴講者の興味を引くことは、誰であれ難しいのです。
そこで、ページが次々と切り替わる「フラッシュプレゼンテーション」が有効になってきます。
これは推測ベースですが、人間は視覚から得る情報を無意識的に重視します。料理の世界でも、「食べる人の満足度は味1割、見た目9割」といい、調理の専門学校では講師が生徒にそのような説明をすることがあるそうです。
スライドのページを次々と変えていくと、視覚に刺激を与え続けるので、興味を引きやすくなります。またインパクトのある画像などを挟んでおくことで驚きを与えることができますし、序盤にそれをしておけば聴講者に「次は何がでてくるのだろう?」と期待を抱かせることもできます。
このようにトーカーは、「少しでも退屈させずに最後まで楽しんでもらう」ために腐心しています。フラッシュプレゼンテーションは、話す順序を事前にしっかり組み立てる必要があります。準備に手間はかかりますが、物語性を持った分かりやすいプレゼンテーションにすることがわりと簡単にできます。
そして「分かりやすい」をさらに追求しているのが「状態変化する図」です。「状態変化する図」については、今後の連載で紹介します。
今回は、イベントの趣旨を踏まえ、このぐらいの少ないコンセプトで準備を始めました。これが例えば商談なら、「説明が終わった後に聴講者がサービスの購入に前向きになる」、あるいは「興味を深め質問をしたくなる」などの狙いを設定します。
次回は、いよいよLTの具体的な準備方法について紹介します。お楽しみに。
嵩原將志(たけはらまさし)
クラスメソッド株式会社 技術部所属。認定スクラムプロダクトオーナー。プロジェクトマネジメント、アジャイル(スクラム)、UXデザイン、RIA、ビジネスアナリシスに強い関心を持つマーケター。Flex User Group、DevLOVEといったコミュニティ運営の支援も行っている。
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