それでは実際にWindows 8 CP版でストレージ・プールを作成してみよう。ストレージ・プールを利用するには、GUIのツールで行う方法と、PowerShellで制御する方法があるが、今回はGUIで操作してみる。より進んだ使い方などについては、今後改めて取り上げる。
ストレージ・プールを作成するには、[コントロール パネル]の[システムとセキュリティ]を開き、[記憶域]というアイコンをクリックする。
[記憶域]の管理ツールが起動するので、[Create a new pool and storage space]をクリックする。するとシステムに接続されているディスクが一覧表示されるので、プールに追加したいディスクを選択して、[Create pool]をクリックする。するとストレージ・プールが作成され、すぐに次の仮想ディスク・ボリュームの作成画面が表示される。
もしフォーマット済みのディスクが接続されていると、「Formatted drives」というセクションの下に警告メッセージとともに、ディスクをオフラインにしてアクセスを禁止するかどうかの選択肢が表示される。フォーマットしてもよい場合は、チェック・ボックスをオンにして先へ進めばよい。
ストレージ・プールが作成されると、すぐに、次のような「記憶域の作成」画面が表示される。この画面では、作成する仮想的なディスクに付けるボリューム名、ドライブ文字、耐障害性機能、容量を指定する。
ここでは、冗長化なしで10Tbytesの仮想的なディスクを作成してみる。「Storage pool capacity」が作成したストレージ・プールのサイズ(物理ディスクの合計サイズ)、「使用可能な容量」が未使用の空き容量である。ここでは1Tbytesのディスクを5台使って構成しているので、合計は5Tbytesになっている。
「Logical size」が作成したい仮想ディスクのサイズである。シン・プロビジョニングを想定して、ディスクの物理的な合計サイズを超える10Tbytesに設定している。
「Storage spaces」の下に、プールに含まれるドライブが表示されている(この場合は E: ドライブ)。仮想的なドライブが作成されるだけでなく、同時にNTFS形式でフォーマットされている。
ここではさらに[Add drives]をクリックして、ほかの種類のディスクも作成してみよう。4種類のディスクを作成したのが次の画面である。
それぞれ10Tbytesの仮想的なディスクが全部で4つ作成されている。この状態をディスク管理ツールで確認すると、次のようになっている。
10Tbytesのディスクが4台作成されている。そのプロパティ画面を見ると、各ディスクはGPT形式でフォーマットされていることが分かる。
ではディスクに障害が発生したことを想定し、1台のディスクをオフラインにしてみる(環境の都合上、以下の画面はVMware Workstationで動作しているWindows 8 CP版でキャプチャしている。ディスクをオフラインにするには、仮想マシンの設定画面でディスクを1台削除するだけだが、実機でもディスクを取り外したり、USBケーブルを抜いたりすればよい)。
ディスクを1台削除して再起動すると、記憶域の画面は次のようになる。
物理ディスクを1台削除したため、各仮想ディスクにも障害が発生している。が、よくみると、まったくアクセス不可能になったのは(赤いアイコンのディスクは)、耐障害性機能が「None(冗長性なし)」のディスクだけである。プールにディスクが5台あっても、1台障害が起これば、冗長性のないディスクではこうなるのは当然であろう。ほかの3台のディスクは、黄色い警告アイコン(冗長性が失われているという意味のアイコン)が表示されているが、冗長性のおかげでアクセスすることは可能である。この状態でシャットダウンし、ディスクを元に戻して起動すれば、すべて正常に戻る。
ところで警告やエラー・メッセージの出ている上記の各ドライブであるが、しばらくすると、次のように表示が変わる(保存されているデータが多いと時間がかかる)。
「Three-way mirror」と「Two-way mirror」のドライブの状態が緑色のアイコンになり、正常動作状態に戻っている。これはどういうことかというと、残ったドライブからデータを取り出し、障害の起こっていないほかのディスクへミラー・セットをコピーし終えたので、正常状態に戻ったということである。2ウェイ・ミラーでは最低2台、3ウェイ・ミラーでは最低3台のディスクがあればよいので、5台のディスク中4台が稼働しているこの環境では、正常にミラー機能が動作しているようである。
このようにWindows 8のストレージ・プールでは、自動的なスラブの割り当てや再配置などにより、ユーザーはRAIDシステムの管理のような面倒なことを行わなくても、非常にスマートにディスクを自動管理してくれる。
ところで上の黄色いアイコンの「Parity(いわゆるRAID5)」のディスクであるが、これはいつまでたっても黄色いままである。そこで通常のディスク交換作業を想定して、新しいディスクを追加してストレージ・プールに追加してみたところ、自動的に「Repairing」作業が始まり、しばらくして緑色アイコンに変わった。RAID5では、プール内のディスク全体に分散してデータを書き込んでいるため、ディスクが1台なくなってもアクセスすることは可能だが(ただし冗長性はない)、パリティ・データを記録するディスクがない。また、すでに分散して書き込んであるデータは、ディスク5台を前提としているので、5台のディスクがない限りRAID5として運用できない。そのため、パリティ方式の仮想ディスクを復旧させるには、元と同じ台数のディスクを揃える必要がある。
ストレージ・プールを使えば、仮想ドライブに保存するべきデータが、自動的にプール内の各物理ディスクに分散して配置されるため、同時に各物理ディスクへアクセスすることで高速化できるはずだ。そこで、実際に速度を測定してみた。ディスクを4台ストレージ・プールに追加し、冗長性なしの構成(いわゆるRAID0のようなストライプ)にして、読み書き速度を測定してみた。IntelのDQ67SWというマザーボードにCore i7-2600 CPUを搭載し、64bit版のWindows 8 CP版をインストールしている。使用したディスクは、(全部同じディスクにできなかったので)2Tbytes×3台と1Tbytesを1台使用している。またストレージ・プールでは256Mbytesずつのスラブに分割してディスクに割り当てているため、4台でストライピングを行うなら、読み書きのファイル・サイズは1Gbytes以上にする必要がある。そこで最大テスト・ファイル・サイズを2Gbytesにして「ATTO Disk Benchmark」というベンチマーク・テスト・プログラムを実行してみた(※Windows 8 CP版はまだ発売前のソフトウェアであり、これが最終的なWindows 8の性能となるわけではないことをあらかじめお断りしておく)。
ストレージ・プールを使えば、仮想ドライブに保存するべきデータが、自動的にプール内の各物理ディスクに分散して配置されるため、非常に高速にアクセスできるようになる可能性がある。そこで、実際に速度を測定してみた。ディスクを4台ストレージ・プールに追加し、冗長性なしの構成(いわゆるRAID0のようなストライプ)にして、読み書き速度を測定してみた。IntelのDQ67SWというマザーボードにCore i7-2600 CPUを搭載し、64bit版のWindows 8 CP版をインストールしている。使用したディスクは、(全部同じディスクにできなかったので)2Tbytes×3台と1Tbytesを1台使用している。またストレージ・プールでは256Mbytesずつのスラブに分割してディスクに割り当てているため、4台でストライピングを行うなら、読み書きのファイル・サイズは1Gbytes以上にする必要がある。そこで最大テスト・ファイル・サイズを2Gbytesにして「ATTO disk Benchmark」を実行してみた。
まずは単独のディスクの速度である。ストレージ・プールに1台だけ追加してテストしている。
読み書きの速度はだいたい120Mbytes/s程度と、一般的なこのクラスのハードディスクの外周部の速度である。
次はディスク4台でストレージ・プールを作成して、同じテストを実行してみた。
読み書きのピーク速度が400Mbytes/sオーバーまで伸びていることから、ディスク4台によるストライブの効果は十分出ているといえるだろう。書き込み速度(赤いバー)は順調に伸びているが、転送サイズが256Kbytes以下だと読み出し速度が元のディスクより遅いようだが、このあたりはOSのディスク・キャッシュのアルゴリズムなどに大きく依存するところなので、ここでは特にコメントしない(ベンチマーク・プログラムからの書き込みがディスクへのライト・スルーになっておらず、途中で必ずバッファリングされていると思われる)。
今回はWindows 8のストレージ・プールについて簡単に見てきた。PowerShellを使えば、ストレージ・プールの細かい設定変更や管理なども行えるのだが、それについては別の回に譲ることにする。またServer版のWindows 8でも同様にこの機能は利用できるのだが、それについても今後解説する。
ストレージ・プールを使えば、複数のディスクを組み合わせて仮想的な大きなディスクを作成したり、耐障害性に優れたストレージ・システムを簡単に構築できる。物理的なディスクの容量や構成方法などに左右されず、管理の手間もほとんど不要なこの機能は非常に期待できる。システムのブート・ドライブとしては使えないとか、作成した仮想ディスクのバックアップや復元、移行などの機能はない、物理ディスク構成を意識した細かい管理(割り当て)ができないなど、いくつか機能不足は否めないが、将来に期待したい。
「[Windows 8プレビュー] Windows 8 Consumer Preview ―― 再構築された次世代Windows ―― 」
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