データをグループ化して表示してみよう(1)Webブラウザで気軽に学ぶ実践SQL講座(9)

前回は、SQLの複雑な自己結合や外部結合について説明しました。今回はグループ関数を使った集計結果について説明します。グループ関数を使うと、行毎ではなく、表全体のデータを集計した結果を求めることができます(編集部)

» 2012年05月30日 00時00分 公開

グループ関数とは

連載バックナンバー


 連載第5回では「単一行関数」を紹介しました。単一行関数を使うと、数値データを四捨五入したり、文字データから特定の文字列を取り出したりして表示することができます。単一行関数は、名前の通り、行ごとにデータを加工して表示する関数です。例えば、20人の社員情報が入っているEMP表に対して単一行関数を使うと(給与を四捨五入するなど)、20行の結果が表示されます。

 一方、社員単位ではなく、社員全員や部門ごとの合計給与や平均給与を求めたい場合には、グループ関数を使用します。グループ関数を使うと、1つ1つの行ではなく、表全体のデータを集計した結果を求めることができます。

 代表的なグループ関数には、以下のようなものがあります。

グループ関数 説明
MAX 対象列のデータのうち、最大値を戻す
MIN 対象列のデータのうち、最小値を戻す
AVG 対象列のデータの、平均値を戻す
数値データ型に対してのみ使用可能
SUM 対象列のデータの、合計値を戻す
数値データ型に対してのみ使用可能
COUNT 問合せによって戻された行の数を戻す
表1 

 グループ関数の使い方は、単一行関数の使い方と同じです。集計処理をしたい列の前に、関数を指定します。

SELECT    関数(列名), 関数(列名), …
FROM     表名
・・・

EMP表の確認

 今回も、EMP表を使って考えてみましょう。グループ関数を使った集計結果を確認するために、EMP表の全てのデータを以下に示します。以降の実行結果と比べてみてください。

図1 EMP表の全てのデータ 図1 EMP表の全てのデータ

グループ関数を使ってみよう

 それでは、表1のグループ関数を使って、EMP表の全社員の給与から、最大値、最小値、平均値、合計を求めてみましょう。

SELECT MAX(sal), MIN(sal), TRUNC(AVG(sal)), SUM(sal)
FROM   emp;
図2 全社員の給与の最大値、最小値、平均値、および合計を表示 図2 全社員の給与の最大値、最小値、平均値、および合計を表示

 図2の実行例では、平均値を求めるAVG関数の結果が小数になるため、単一行関数TRUNC(切り捨て)を使って小数以下を切り捨てています。このように、単一行関数とグループ関数は組み合わせて使うことができます。AVG関数とSUM関数は数値データに対してしか使うことができませんが、MAX関数とMIN関数は、文字データや日付データに対しても使うことができます。

 次の例では、社員名、および入社日に対してMAX関数とMIN関数を使用しています。それぞれ昇順に並べた場合の最小値と最大値が表示されています。

SELECT MAX(ename), MIN(ename), MAX(hiredate), MIN(hiredate)
FROM   emp;
図3 全社員の社員名および入社日の最大および最小を表示 図3 全社員の社員名および入社日の最大および最小を表示

データ件数を数えてみよう

 COUNT関数を使うと、データが何行あるかを数えることができます。次の例では、EMP表の総行数、ENAME列に格納されたデータの行数、COMM(歩合給)列に格納されたデータの行数を検索しています。

SELECT COUNT(*), COUNT(ename), COUNT(comm)
FROM   emp;
図4 全社員の総数、ENAME列の総行数、COMM列の総行数を表示 図4 全社員の総数、ENAME列の総行数、COMM列の総行数を表示

 図4の実行結果で、COMM列の件数が4であることに注意してください。図1と照らし合わせて確認すると、COMM列には値が4つしか格納されておらず、残りがNULL(データが格納されていないフィールド)であることが分かります。COUNT関数では、NULL値を省いて行数を数えます。また、WHERE句で条件を指定すると、条件に該当する行数を数えることができます。

データをグループ化してみよう

 ここまでの例では、社員表全体を1つのグループとして、社員全体の中から給与の最大値や最小値、行数などを集計しました。しかし、部門や職種単位で集計結果を出したいケースもあるでしょう。このような場合には、GROUP BY句を使用します。

SELECT   グループ化する列名, 関数(列名), …
FROM     表名
GROUP BY グループ化する列名
・・・

 それでは、GROUP BY句を使って部門ごとにグループ化し、部門ごとの社員数と平均給与を調べてみましょう。以下のようなSQL文を書くと、部門ごとにグループ化した集計結果を表示することができます。次の例では、結果を見やすいように、部門番号でデータを並べ替えて表示しています。また、「社員数」「平均給与」という列別名を付けて表示しています。

SELECT deptno, COUNT(empno) AS "社員数", TRUNC(AVG(sal)) AS "平均給与"
FROM   emp
GROUP BY deptno
ORDER BY deptno;
図5 部門ごとに社員数と平均給与を表示 図5 部門ごとに社員数と平均給与を表示

 GROUP BY句に複数の列を指定すると、複数の列を使ってさらに細かくグループ化することもできます。次の例では、GROUP BY句にdeptno列と、job列を指定しています。このように指定すると、最初に指定したdeptno(部門番号)でグループ化し、部門が同じ人をさらにjob(職種)でグループ化することができます。

SELECT deptno, job, COUNT(empno)  AS "社員数", TRUNC(AVG(sal)) AS "平均給与"
FROM   emp
GROUP BY deptno, job
ORDER BY deptno, job;
図6 部門内の職種ごとに社員数と平均給与を表示 図6 部門内の職種ごとに社員数と平均給与を表示

 図6の結果を見ると、部門20にはANALYST、CLERK、MANAGERという3つの職種があり、職種ANALYSTとCLERKの社員は2名、職種MANAGERの社員が1名いることが分かります。また、職種ごとの平均給与も表示されています。

特定のグループだけを検索してみよう

 グループ化した結果に条件を付けて、特定のグループだけを表示することもできます。例えば、図6の結果のうち、社員が2人以上いるグループだけを表示したい場合には、どのように指定すればよいでしょうか。

 「条件を付けて結果を絞り込む」ためのキーワードと言えば、真っ先に思いつくのはWHERE句ですよね。しかしWHERE句は、1行1行のデータに対して条件を指定するキーワードであるため、グループ化した結果に対して使うことができません。そのため、以下のようにWHERE句でグループ化した列を指定すると、エラーになります。

SELECT deptno, COUNT(empno) AS "社員数", TRUNC(AVG(sal)) AS "平均給与"
FROM   emp
WHERE  COUNT(empno)>=2
GROUP BY deptno, job
ORDER BY deptno, job;
図7 グループ関数を使った列にWHERE句を使用するとエラーになる 図7 グループ関数を使った列にWHERE句を使用するとエラーになる

 そこで、グループ化した結果に対して条件を付けて、特定のグループだけを検索する場合には、WHERE句ではなく、HAVING句を使用します。

SELECT   グループ化する列名, 関数(列名), …
FROM     表名
GROUP BY グループ化する列名
HAVING   グループ化した結果に対する条件
・・・

 例えば、社員が2人以上いるグループだけを表示したい場合には、以下のように指定します。

SELECT deptno, COUNT(empno) AS "社員数", TRUNC(AVG(sal)) AS "平均給与"
FROM   emp
GROUP BY deptno, job
HAVING COUNT(empno)>=2
ORDER BY deptno, job;
図8 部門内の職種でグループ化し、社員が2人以上いるグループだけを表示 図8 部門内の職種でグループ化し、社員が2人以上いるグループだけを表示

コラム---職種は何種類?

 COUNT関数を使うと、データの個数を数えることができますが、データが「何種類あるか」を数えるにはどのようにすればよいでしょうか。

 例えばEMP表の職種(job)列には以下のようなデータが入っています。

図9 図9

 では、職種は何種類あるのでしょうか。job列の種類を数えるには、重複しているデータを排除した後で、データの個数を数えれば良さそうです。このような場合には、重複を排除するためのキーワードDISTINCTを使用します。DISTINCTキーワードは、SELECT句の列名の前に指定します。

SELECT DISTINCT job
FROM   emp;
図10 図10

 それでは、COUNT関数とDISTINCTキーワードを組み合わせて、職種が何種類あるかを数えてみましょう。

SELECT COUNT(DISTINCT job)
FROM   emp;
図11 図11

 今回ご紹介したCOUNTやDISTINCTを使ってデータを「数える」方法は便利ですが、検索対象の全てのデータにアクセスをしてデータを集計する動作となるため対象のデータ量が多くなると、大量の読み込みが発生することを覚えておいてください。

 例えば、「条件に合うデータがあるかないか」を調べるためにCOUNT(*)を何度も使うのは効率的ではありません。そのような場合には、次回以降で紹介するEXIST条件などを使用するとよいでしょう。


筆者紹介

日本オラクル オラクルダイレクト所属。

須々木尚子(すすき なおこ)

オンラインセミナーの講師や、お客様への提案、案件の支援などを担当。著書に「Oracle SQLクイズ」(翔泳社)があります。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。