米IBMは6月3日から7日(米国時間)にかけて、ソフトウェア開発ツール「IBM Rational」を総合的に取り扱うカンファレンス「Innovate 2012」を、米国オーランドで開催した。
今年のテーマは「Next Now!(次にあるべき姿を今ここで)」。世界中のIBM Rationalユーザーや開発者が4000名以上集まった。
「世界中のCEOの7割以上が、最もビジネスに影響を与える要因は“技術”であると認識している」
シニア・バイス・プレジデントのロバート・レブラン(Robert LeBlanc)氏は、同社が実施しているCEO調査の結果を発表した。同調査は、65カ国、18産業のCEO1800人に対して2年ごとに行っているもので、「技術」の重要性がここ10年でどんどん上がってきていることが分かる。2004年には6位にすぎなかった「技術」が、2012年には「人材育成」「市場環境」を抜いて、首位に立った。
特にCEOが重視するのは「開発のスピードを加速させること」である。システムやアプリケーションへの要求を即座に反映させなければ、競争力を維持することはできない。変化への即応性、柔軟性が求められる今、ソフトウェアの納期はどんどん短期化している。いまや数年単位の悠長な開発などはしていられず、数カ月、数週間、数日単位でのリリースが求められている。
「あらゆる産業において、顧客に価値を提供するためには、ソフトウェアが機動力になる」とレブラン氏は強調する。スマートフォンを使ったモバイル銀行、外科治療の効率的なシステム化などを例に挙げ、「これらの新しい価値はソフトウェアによって生み出される。ビジネス成功の鍵は、ソフトウェアの提供を加速させることにある」と解説した。
では、「ソフトウェア提供を加速させる」ためには、何が必要なのか? レブラン氏は3つのキーワード「統合」「コラボレーション」「最適化」を掲げた。
Rationalは、設計から開発、テスト、運用まで、ソフトウェア開発におけるライフサイクルを1つのツールで管理する「アプリケーション・ライフサイクル・マネジメント」(ALM)を実現させるソフトウェアとして、多くの実績を生み出してきた。
フェイズの壁、部署の壁、開発ツールの壁、国籍・言語の壁、文化の壁、こうしたあらゆる「壁」を取り払って一元化することで開発速度を上げ、開発者は余計なことに時間を取られることなく、クリエイティブな仕事に集中できるようにする。これが、Rationalが目指す「加速」の姿である。
続いて登壇したのは、Rational部門のゼネラル・マネージャ クリストフ・クレックナー(Kristof Kloeckner)氏。「今はソフトウェア開発者にとっていい時代だ」と切り出す。
「実に多くの機会がある。まず、グローバリゼーション。そして、クラウドやモバイル、ソーシャルビジネスといった技術の革新」。一方で、システムは複雑化しており、「Move faster or die」(素早く行動するか死か)という厳しい時代でもある。しかし、クレックナー氏は「エンジニアにとって非常にエキサイティングな環境だ」と語る。
さらにクレックナー氏は、迅速なソフトウェア開発を阻害する原因として、「ビジネス部門や顧客のフィードバックの遅延」「ビジネス部門と開発部門の無駄なやりとり」「開発側と運用側がうまく連携していない」という3点を挙げた。
特に、最後の課題について、クレックナー氏は「DevOps」(Development+Operation)――開発と運用の連携強化の重要性を説く。
「運用してみて改善」というライフサイクルを速く回していくためには、開発と運用が密接に連携することが必要不可欠だ。Rationalでは、両者の溝を埋めるために必要な、情報共有やバグ修正などを迅速に行える環境を提供しているという。
実際にDevOpsを実行している例として、クレックナー氏はRationalを導入した顧客企業の事例を紹介した。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ )ではRationalを導入したことによって30%ほど生産性が向上し、SAMSUNGではリリース遅延が0になり、チームの満足度が25%向上したという。
さらに基調講演では、IBMが2012年に買収したGreen Hatの自動テストツール群を紹介。同社は仮想テスト環境プラットフォームを提供しており、テストに掛かる手間を削減することで、さらにソフトウェア提供を加速させられるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.