いまオープンソースデータベースがきているDatabase Watch(2012年9月版)(1/2 ページ)

 今月は商用からオープンソースまで幅広くデータベース製品を取り扱っているアシストの取り組みと、9月10日にリリースされたPostgreSQL 9.2についてお伝えします。

» 2012年09月20日 18時37分 公開
[加山恵美フリーライター]

昨年の夏から顧客の目がオープンソースに向いてきた

 アシストは1987年からオラクルの販売代理店となるなど、早い段階からデータベース製品を扱っている会社です。近年では商用データベースに加え、オープンソースデータベースの取り扱いにも力を入れています。理由は「お客さまの選択肢を増やすため」。商用データベースが必要なケースもありますが、オープンソースデータベースの方が適したケースもあるからです。

 アシストがオープンソースに目を向け始めたのは2006年頃から。“まずは自社利用”ということで、オフィス製品にOpenOfficeを使うところから始めました。2007年からはデータベース稼働状況診断サービス「パフォーマンス・セラピー」をPostgreSQLで稼働。商用データベースの稼働状況を診断するサービスがオープンソースデータベースで稼働しているとは、意外で面白いですね。さらに2009年からはPostgreSQLのサポートも開始するなど、着々とオープンソースデータベースにも手を広げています。

 「昨年の夏から、顕著に変わってきています」と話すのは、同社 情報基盤事業部 データベース製品統括部 ビジネス推進部 部長の岸和田隆氏(写真)

岸和田隆氏

 昨夏から顧客からのオープンソースデータベースに関する問い合わせが顕著に増え、これまで商用データベースを使っていた顧客がオープンソースにも目を向け始めてきていると言うのです。主眼はやはりコスト面。言わずもがなですが、オープンソース製品なら大幅にコスト削減が見込めます。またベンダの買収やロックインなど、“ベンダに依存するリスクの回避”という観点もあるそうです。

 いずれにしても経営寄りの判断です。対照的に現場は移行など技術面での懸念があり、抵抗を抱えていることもあるのだとか。岸和田氏は「オープンソース製品へ移行するなら、イニシャルでコストがかかります。個別のプロジェクトだけで評価しようとすると断念したり、失敗してしまうことがあります。オープンソース製品への移行はより長い目で考えることが重要です」と話しています。昨今の傾向としては、特にグローバルな製造業がオープンソース製品への移行を積極的に試みているそうです。

 採用される製品の傾向もあるようです。オープンソースデータベースというと、定番はMySQLとPostgreSQLです。「Web関係ではMySQLがデファクトとして定着していると言えます。一方、企業の業務システムにはPostgreSQLが入ろうとしてきています」と岸和田氏。後者はPostgreSQLのユーザー会はじめ、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの活動が後押しとなっていることが挙げられます。またベンダロック回避などを理由に純粋なオープンソースデータベースを選ぼうとするなら、おのずと選択肢はPostgreSQLに帰結することになるためでもあります(MySQLはオラクルが買収したため)。

MariaDBがいよいよMySQLに追いついた

 ただし、MySQLにはMariaDBがあります

 「MariaDBはMySQLの“フォーク”と呼ばれることもありますが、より正確には“ブランチ”です」と話すのは同社 情報基盤事業部 ビジネス推進部 関俊洋氏(写真)枝分かれしたものというよりは、“後を追うもの”という意味です

関俊洋氏

 MariaDBは2009年、MySQLの中心的な開発者だったMichael "Monty" Widenius氏がMonty Program ABを設立したところから始まりました。MySQLのコードがオープンソースとして存在し続けることを目指すためです。MySQLと完全な後方互換性を持ち、独自の機能を追加してMySQLの後を追っています。当然ながらコミュニティ版のみ。

 MySQLコミュニティではMariaDBは話題になっていますが、一般的には知名度がまだ高くありません。その理由の1つには、MySQLに追いついてなかったことが挙げられるかもしれません。「実はMariaDBがMySQLに追いついたのは今年になってからなんです」と関氏。MySQLが5.5になったのは2010年末だったにも関わらず、MariaDBがMySQL 5.5に追いついてMariaDB 5.5.23-stable (GA)を出したのが2012年4月。まだ最近なんですね。

 MariaDBに加わる独自機能は主に3つ。XtraDB/FederatedX/Ariaなどの新しいストレージエンジンの追加、スレッドプールやサブクエリキャッシュなどパフォーマンスの向上、スロークエリログの出力詳細化やユーザー統計の拡張など運用管理の負荷軽減です。関氏によると「これでやっとMariaDBが使える土台が整ったところです」。

 これを言い方を変えると、“これからに期待”でしょうか。

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