ARM対応の新Windowsがいよいよデビュー。Windows RTとは何か、IntelアーキテクチャのWindows 8とはどう違うのかを実機で検証した。
※「Metroアプリ」という呼称について
Windows 8で導入された新しいWindowsアプリケーションの形態やそのデザイン、ユーザー・インターフェイス(UI)などは当初「Metro」と呼ばれていたが、この名前は変更されることになった。本稿ではMSDNサイトなどでの呼び方に合わせて、「Windowsストア・アプリ」「Modern UI」などと呼ぶことにするが、正式発表後に記述を訂正するので、あらかじめご了承願いたい。
2012年8月31日からドイツ・ベルリンで開催されたコンシューマ・エレクトロニクス・ショー「IFA 2012」において、Windows RT搭載PCが一般向けに展示され、多くの来場者がWindows RTを直接体験することができた(※1)。Windows RTは、ARMプロセッサ(※2)を搭載した、主にタブレット型PC向けのWindows OSである(第1回の記事参照)。今までのWindows PCとはCPUアーキテクチャが異なるので従来のアプリケーションは利用できないし、タブレットという形態のためデスクトップ画面もないだろうと思う読者もいるかもしれないが、さて実際はどうなのだろうか。現地でWindows RT機を操作し、実際にプログラムを使って動作チェックなどを行ってきたので、その結果を報告しよう。
※1 「Windows RT」と「Windows 8」という表記について
本稿では、「Windows RT」といえばARMプロセッサ版を指し、x86/x64プロセッサ版は「Windows 8」のように、区別して表記する。公式には、Windows RTはWindows 8中の1エディションではなく、別のものとされている。「Windows Server」や「Windows Phone」のような製品ファミリの1つという扱いとのことだ。
※2 ARMプロセッサ関連記事(System Insider連載「頭脳放談」)
・第12回「キミはARMを知っているかい?」
・第15回「ARMプロセッサを知らずに暮らせない」
・第128回「ARM版Windows OSの成否はMicrosoftのビジネス・モデルに?」
2012年10月26日、いよいよWindowsの最新バージョン「Windows 8」が発売されるが、これと同時に登場するのが、ARMプロセッサに対応した「Windows RT」である。IFA 2012では以下のようなWindows RT機が展示されていた。
Windows RTはWindows 8と同様に、「Modern UI」のスタート画面を搭載しており、Windows 8で新たに導入される「Windowsストア・アプリ」が動作する。あまり知られていないがWindows RTにも「デスクトップ」モードがあり、エクスプローラによるファイル操作やOffice 2013を使うことができる。
このように、Windows RTのデスクトップ・モードはWindows 8のデスクトップとほぼ同じ外観をしている。しかしx86/x64アーキテクチャのプロセッサで動作するWindows 8と異なり、Windows RTはARMプロセッサで動作している。そのため、従来のWindowsデスクトップ・アプリケーションはそのままでは動作しない。本稿では、Windows RTの特徴について簡単に紹介した後、デスクトップ・モードにおけるアプリケーションの動作検証結果をレポートする。
Windows RTは、x86/x64アーキテクチャとはまったく異なるARMプロセッサ用のWindows OSである。しかしWindows NT系列のOSとして見ると、x86とは異なるアーキテクチャのプロセッサに対応するのはWindows RTが初めてではない。例えばWindows NT 4.0では、x86(i386)版のほかに、ALPHA版、MIPS版、PowerPC版などが提供されていた。
またWindows XPでは、新たにx64 Editionをリリースして64bitのプロセッサに対応していた(Windows Server 2003にもx64版が提供されていた)。x64版WindowsではWOW64という仕組みにより、ドライバなど一部のソフトウェアを除いて既存のx86用Windowsアプリケーションのほとんどが動作するのが特徴だ(関連記事参照)。
これに対してWindows RTでは、既存のx86/x64プロセッサ用Windowsアプリケーションは動作しない。現時点では、Windows RT上で動作するアプリケーションは、(付属するもの以外としては)Windowsストア・アプリのみと発表されている。
Windows 8で新たに導入される「Windowsストア・アプリ」は、「Modern UI」上で実行できるまったく新しいアプリケーションだ。全画面表示による没入型のUIが特徴で、Windowsストアから入手できる。配布の仕組みとしては、iOS(iPhone/iPod touch)やAndroid、Windows Phone搭載のスマート・デバイスのアプリケーションに近いものである。Windowsストア・アプリはWindows 8とWindows RTの両方に対応している。
次に、Windows RTを搭載するPCについて簡単に紹介しておく。すでに発表されているWindows RT搭載PCとして、前述のSamsung ATIV Tabのほかに、DELLのXPS 10やASUSのVivo Tab RTがある。
Windows RTに対応するARMプロセッサは、現時点ではQualcomm、NVIDIA、Texas Instrumentsの3社が製造するものがあるといわれている。そのため、Windows RT対応PCは、これら3社のうちいずれかのプロセッサを搭載している。
例えばSamsung ATIV Tabは、QualcommのSnapdragon S4プロセッサ「APQ8060A 1.5GHz」を搭載している。Snapdragonが提供するカメラや通信モジュール、センサについてもドライバがインストールされており、Windows RTから利用できるようになっている。
Windows RT搭載PCのフォームファクタについては、すでに発表されている製品はいずれもタブレット型か、キーボードとドッキングが可能なセパレート型となっている。ただしこれはWindows RTの制限ではなく、将来的にはノート型やデスクトップ型のPCが登場する可能性もある。
今回は、このSamsung ATIV Tabを用いてデスクトップ・モードの検証をしてみた。OSのビルド番号は9200となっており、これはWindows 8のRTM版と同じ数字だ(連載第1回の記事参照)。ただし、これが最終版のWindows RTかどうかは確認できなかったため、最終的な製品とは異なる可能性もある。
【2012/09/26】画面「Windows NT 4.0のインストールCD-ROMの例」において、PC98フォルダの説明を当初は「NECのPC98-NXシリーズ用」と記述しておりましたが、正しくは「NECのPC-9800シリーズ用」でした。お詫びして訂正いたします。
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