並列分散処理に適したアーキテクチャに対応して、データ処理ロジックをソフトウェアではなく、ハードウェアに渡す「Software on Chip」も、SPARC64 Xの特徴だ。
これは、類似の処理を繰り返すことの多い大量データ処理で特に効果が高い。例えば、以前は夜間バッチで半日掛かっていたような処理も、ハードウェア回路を活用して数分で終わらせることも可能になる。これで、ほぼリアルタイムに分析ができるわけだ。
SPARC M10の面白いところは、こうして独立したノードを提供しながら、管理するOS側からは単純なSMP環境に見える点だ。
「OS側からするとCPU(ノード)間の接続がシステムバスなのかシリアルなのかなんて、どっちでもいい話でしょう? だから使う側に対しては、従来と同じSMPとして扱えるようにしたんです」(志賀氏)
このことがもたらす利用者側の利点は大きい。高速グリッドコンピューティング環境を特別な知識や管理ソフトを必要とせず、単一のOSの下で動作させられるため、導入/運用/管理の面でコストが格段に安く済むかだらだ。
いままでそれを実現しなかったのは、ノード間接続がCPU処理速度と比較してあまりにも遅いという問題があったためだ。CPUがピコ秒単位で動作するのに対して通信部分がミリ秒単位ではシステム全体が遅くなるだけだった。その問題を前述のCPU間での高速シリアルインターフェイス接続などの仕組みで解消する。
「それゆえにSMP的に見せかけたとしても挙動に大きな影響は与えないんです」(志賀氏)
取材中、志賀氏とこんな問答をする場面があった。
志賀氏:なんで皆さんビッグデータというと、安価なマシンを大量に持ってきて接続して使うんでしょうね?
編集部:大規模SMPは高価だから、安価なマシンを活用して、プログラムを修正したり分散管理ソフトウェアを導入したりするのではないでしょうか?
志賀氏:そうですよね。でも、そんなに手間が掛かるシステムでは、ビジネスユーザーがビッグデータを自由に活用できる時代は遠い先になってしまいますよね。このマシンは、そうした課題を軽々と越えられるようになっているんですよ。価格性能バランスの良いサーバを最大1024コアの性能で、単一のOSで効率良く並列動作させられるんです。
編集部:ビッグデータを基幹システムと接続して使うということですか?
志賀氏:このマシンでは、そうした可能性を想定できるように調整したっていうことなんですよ。早い意思決定をするためには、基幹系と情報系が高速に接続できて、ビッグデータも取り込める仕組みが必要なんです。単に統合できるだけでなく、信頼性は基幹サーバにできるレベルですし(下図参照)、コスト面ではOSを幾つインストールしても、VMを大量に作っても追加費用はかからないわけです。ですから、細かなシステムまでどんどん取り込んでしまえる。
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