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» 2013年04月15日 00時00分 公開

「クールな28歳」が、なぜ顧客から選ばれるのか?「クールな28歳」が、なぜ顧客から選ばれるのか?(2/2 ページ)

[森川滋之,ITブレークスルー]
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「理念に共感してくれた」ことが一番の決め手

森川 核心の質問に入ります。冒頭もいいましたように、亀ヶ川さんは「クールな若僧」という印象で、世間一般の経営コンサルタントのイメージとは少し違います。36歳も年長の平山さんが、亀ヶ川さんへのコンサルティングの依頼を決めたのは、事情を知らない人には不思議に感じられると思うのです。決め手は何だったのですか。

平山さん ITに関する課題もあったので、若い人の方がいいという気持ちがありました。そのため「若僧」という偏見はなかったのですが、人物は見ないといけません。面談でじっくり話を聞きました。

森川 第一印象はどうでしたか。

平山さん 性格は明るいですが、無口な方だと感じました。同年代の人と比べると老成している印象でしたね。ただ話しているうちに、言葉は柔らかいが中身がある人なのだということが分かってきました。

森川 面談では、どういうことを聞いたのですか。

平山さん ずばり、「経営コンサルタントの仕事はどういうものか」と聞きました。「企業が抱える問題や気付かなかったところを洗い出し、一緒にアイデアを出す仕事です」という答えでした。コンサルタントには「先生」というイメージがあったのですが、そうではなく同等の立場、同じ目線で考えてくれる人なんだと分かりました。

 いろいろ聞くうちに、良い意味でのプレッシャーを受けました。課題解決にしても、プロジェクト化して、そのスケジュールに乗っかっていけば、必ず好結果が出る。出ないとしたらこちらがやり抜いていないからだ。そういうプレッシャーです。そして、そのプレッシャーのおかげで「やる気になった」のです。

 また、「すぐに始めず、準備を重視しよう」という意見ももらいました。これについても、もっともだと思いました。

森川 亀ヶ川さんの姿勢に関してはいかがでしたか。

平山さん 先に私の話を聞き出してから、自分はどう思うのかを伝えるというスタイルが良かったですね。面談後に飲みに行くことになりましたが、彼のこの話し方のおかげで盛り上がりました。年齢がかなり違うにもかかわらず、2時間があっという間でしたね。

森川 決め手としては以上でしょうか。

平山さん 私の理念に共感してくれたことが大きかったです。音楽家の多くは、音楽だけでは生活できません。音楽家の地位を高めたい、生活レベルを向上させたいと願って、その支援を行う「横浜クラシック音楽振興協会」を2011年11月に立ち上げました。亀ヶ川さんにもその話をしたのです。

 「横浜を音楽の都にしたいんだ」と少し熱く語ったところ、彼は素晴らしいことだと同調してくれ、「自分も協力して盛り上げたい」といってくれました。これが一番の決め手だったかもしれませんね。

信頼関係を次代に引き継ぎたい

森川 亀ヶ川さんを雇ってから成果は出てきたのですか。

平山さん すでに第2校の問い合わせが少しずつ増えてきています。

森川 具体的には、どのようなことを実践したのですか。

平山さん チラシのポスティングと、タウン情報誌への広告掲載です。横浜クラシック音楽振興協会を一緒にやってくれている印刷会社の人とデザインを作成し、それを亀ヶ川さんがチェックし、より良い宣伝文句を出すための支援をしてくれています。チラシの項目、ポスティングの方法、発注方法などの基本についても教えてくれます。それによって費用対効果の高いポスティングができています。

森川 亀ヶ川さんへの評価をお願いします。

平山さん 彼が「こういう考えはどうでしょうか」「こうしてみたらどうでしょうか」と意見を述べてくれ、われわれがそれに一生懸命応じていれば結果が出るという感触を持っています。彼に依頼してから半年たちましたが、さらに半年後が本当に楽しみです。

 とても冷静沈着に当院を診断してくれていると思っています。こまやかな気遣いも感じます。ITに関しては、最新の情報なども押さえているので、頼りにしています。

森川 不満はありませんか。

平山さん ありません。満点だと思っています。

森川 今後、彼に期待することは何ですか。

平山さん 半年間で個人的な関係もでき、信頼感が高まってきました。音楽院は息子に引き継ぐ予定だと先ほど申しましたが、今後は亀ヶ川さんとの信頼関係も引き継いでいきたいと思っています。また、横浜クラシック音楽振興協会も規模が大きくなってきました。こちらのコンサルティングもお願いしたいと思っています。

亀ヶ川さんと平山さん

「同じ目線で考える」ことで、顧客の信頼を得る

 私と亀ヶ川さんとは、5年前、ある著名なコンサルタントが講師を務めるコンサルタント養成講座で知り合った。

 当時の彼は、中堅のソフトハウスに新卒で入社したばかりだったが、すでにチームリーダーとして活躍していた。新入社員が6回コースで十数万円もするセミナーに参加していたこと、同じIT業界であったことで、彼には興味を持っていた。よくよく話を聞くと、私が当時ITコンサルタントとして契約していた企業のシステムを作っていることが分かり、意気投合して今に至っている。

 彼がコンサルタントとして成功しつつある理由が、今回の取材で明確になった。彼は、コンサルタント養成講座で教えられたことを忠実に実践していたのだった。そのポイントは以下のとおりである。

  • 相手を100%受け入れる
  • 問題解決はせず、一緒に考える
  • 高い共感性を持つ
  • 同じ立場、同じ目線で考える

 これは、講師の持論であった「コンサルタントの仕事はクライアントをやる気にさせることである。それさえできればクライアントは自然と増える」に基づくものである。

 では、コンサルタントに専門性は必要ないのか?

 亀ヶ川さんはITに関して専門性を持っているが、それが日本有数のものかといえば疑わしい。しかし、顧客にとっては十分なレベルなのである。

 また、取材中にチラシの話が出てきたが、彼が広告宣伝の専門家ではないのは明らかである。しかし彼には、広告宣伝について相談できる人がいて、その人の力を借りて助言を行っている。

 もちろん専門性は必要である。しかし、顧客の信頼を得て、コンサルタントとして仕事が取れるかどうかは、専門性の高さとはあまり関係がない。顧客は、「自分をやる気にさせてくれる人かどうか」の方が重要だと思っている。これが今回、はっきりと分かった。

 私の尊敬する営業コンサルタントでビジネスパートナーでもある吉見範一さんは、常々「営業とは、人に信頼されることだ」と説いている。その意味で、亀ヶ川さんはハイレベルの営業力があると私は評価している。

 「紹介さえあれば仕事が取れる」と軽く考える人もいるようだが、紹介してもらうのは、実はとても難しいことだ。人を紹介するのは勇気のいることである。紹介した相手が失敗していなくなったとしても、紹介者と被紹介者の関係は残る。そのときに文句をいわれるのは紹介者だからだ。だから、よっぽど信頼できる人しか紹介されない。紹介されるというのは、「トップ営業」の持つ能力なのだ。

 ITエンジニアも同じではないだろうか。顧客の信頼を勝ち得て、顧客に選ばれるためには、専門性だけでは足りないのだ(参考記事:「顧客が本当に欲しかった、『技術力以外』のもの」)。

 もちろん専門性を高める努力は必要だし、その証しとして資格を取得することも重要だ。しかしそれ以前に身に付けることはたくさんあるだろうし、そちらの方が生きるための武器としては有効だと思う。

亀ヶ川剛氏のWebサイト:http://bpcon.jp/se/

筆者紹介

ITブレークスルー代表 森川滋之

1963年生まれ。1987年、東洋情報システム(現TIS)に入社。同社に17年半勤務した後、システム営業を経験。2005年独立し、ユーザー企業側のITコンサルタントを歴任。現在はIT企業を中心にプロモーションのための文章を執筆するかたわら、自分の価値を高める「自分軸」の発見支援にも従事している。

著書は『SEのための価値ある「仕事の設計」学』、『奇跡の営業所』など。日経SYSTEMSなどIT系雑誌への寄稿多数。

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