Fireworksはまだまだ終わらないFireworksがCreative Cloudのアップグレードサイクルから外れた意味

FireworksはCreative Cloudのアップグレードサイクルからまたも外れてしまった。これは開発終了を意味するのか、Fireworks大好きな筆者が現地ロサンゼルスで考えた。

» 2013年05月08日 07時00分 公開
[岡本紳吾hatte.Inc]

 2013年5月6日(現地時間)、アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルスのロサンゼルスコンベンションセンター(LACC)で、Adobe MAX 2013が開幕した。米アドビシステムズ(以下、アドビ)は、1日目の基調講演で、「Adobe Creative Cloud」のバージョンアップ、多数のアプリケーションの機能強化、複数ユーザーでのコラボレーション機能の強化などを発表した。

 この内容は日本でも速報として伝えられ(参照記事:Creative Suiteシリーズがアップデート終了)いくつかのアプリケーションが今回のアップデートから除外されたことも明らかになった。そのアプリケーションはFireworks、Encore、Acrobat、Flash Builder、Lightroomだ。基調講演が終了し、記者向けのQ&Aセッションが終わったころに、時差の関係で日本で基調講演の内容が伝わるようになった。その中で、ひときわ話題になっていたのが「Fireworksが開発中止になる」というもの。そういった事実のニュースリリースをアドビが出していないにもかかわらずだ。

そもそもFireworksとは、どういう製品なのか

 FireworksはWeb制作において、グラフィック作成を担うアプリケーションで、Photoshopとはまた違った生い立ちもあり、独自のユーザー層を持っている。特にビットマップとベクターの画像データを同一ファイル上で扱うことができ、最近ではPhotoshopフィルタを扱えるため、よりデザイン的な面でサポートを強化してきたアプリケーションだ。Web制作の現場では「Fireworks派」と呼ばれる人達が存在し、筆者もまたその1人である。

 そんなFireworksだが、今後Creative Cloudとしてはアップデートされず、Fireworks Creative CloudではなくFireworks CS6として提供が続けられることになった。また、情報のソースとして伝えられているのがアドビの公式ブログにある「The future of Adobe Fireworks」という記事だ。Twitterなどで報じられている内容では、この記事を根拠に、Fireworksは開発中止であると結論している。しかし、筆者はここに大きな誤解があると考えている。

 まず、CS6ではFireworksに限らず新規機能の追加は行われない。また当該ブログでは、「開発中止」という言葉は使われておらず、Fireworksのセキュリティ更新やバグ修正は提供していき、次のMac OS XやWindowsのメジャーアップデートに併せてサポートしていくと記述している。仮に開発中止であるなら、ブログに「discontinued」などといった言葉が登場してもおかしくはない。

 実際、Fireworksがアドビ製品のメジャーアップグレードのサイクルから外れてしまったことは今回が初めてではなく、外れてしまってもその後はしっかりした機能追加がされたうえで復活を果たしてきている。

 筆者は基調講演の時点では、少なくとも今回のアップグレードからは外れたが、将来はアップグレードされるだろうという認識でいた。そしてそれは今も変わらない。

アドビがPhotoshopにEdge Reflowへの書き出し機能を追加した意図とは

 ところが、Photoshopに「Edge Reflow」への書き出し機能が追加されたことで、アドビがFireworksの開発を止めようとしているのではないかといううわさに一層輪を掛けてしまっている状態だ。

 本来、Web制作用のグラフィック作成ソフトとして開発されたFireworksにこそ、Edge Reflowへの書き出し機能が実装されても良いはずなのだ。実際にAdobe Maxの会場でアドビの関係者に話を聞いても、非公式ながら「それが自然だと思う」という回答を得ている。ではなぜ、Photoshopなのか? それは、アドビが考えるクリエイティブワークスタイルに関係しているのではないか、と筆者は予測する。

 今回のCreative Cloudのバージョンアップにより、Creative Cloudを利用するメリットがより一層強調されるようになった。これは、アドビがこれまでのパッケージ販売からサブスクリプション制へ移行する強い意志の表れであると取ることができる。

 Creative Cloudを利用することで、ユーザーは低いコストでアドビのクリエイティブツールをすべて利用できるようになる。パッケージ版だとすべて利用するにはMaster Collection以上が必要で、定価は39万円、アップグレードで16万円ほどだ。大企業ならともかく、中小企業や個人事業主であれば、このような出費は大変な痛手となる。Creative Cloudだと、出費は毎月一定額になり、支払っている限りアップグレードとダウングレードが保証され、さらにパッケージ版では提供されないコラボレーションツールなどを利用することができるようになる。

 そしてユーザーは、これまでは購入したパッケージの中で必要なアプリケーションだけを利用していたのが、パッケージに縛られずさまざまなアプリケーションを利用できるようになることで、仕事の幅を拡げられる。

 それはつまり、これまでコードを書くことがなかったデザイナがEdge Reflowを利用してレスポンシブルWebデザインを手掛けてみたり、そもそもコードに縁がなかった営業職の人達がデザインなどを手掛ける可能性が出てきたことになる。

 アドビがもし、さまざまな職種の枠を超えたクリエイティブワークを考えているのだとすれば、FireworksにEdge Reflow書き出し機能を搭載しても、結局Webを専業とする人達の間で使われるだけで終わってしまうと考え、さまざまなユーザー層を持っているPhotoshopへあえて搭載したのではないだろうか。

 PhotoshopからEdge Reflowへ書き出す際のワークフローはまだ明らかになっていないが、おそらく、HTMLの構造をレイヤ構造に置き換えるような手法が取られると考えられる。であれば、Photoshopに搭載されたEdge Reflowへの書き出し機能をFireworksに搭載することは、そう難しくないのではないだろうか。

 そして、Fireworksはまだまだ終わらんよ、と筆者は考えるのである。

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