2月17日、Life is Tech ! 主催「Edu×Tech Fes 2013 U-18」が開催された。そこで行われた「驚異のプレゼンテーション」をレポートする。
本連載では、Life is Tech ! が主催するイベント「Edu×Tech Fes 2013 U-18〜驚異のプレゼンテーション〜」をレポートする。Edu×Tech Fes 2013 U-18は、テクノロジーから教育を考え、教育からテクノロジーを考えるイベント。天才中高生が語るゾクゾクする3時間を、全7回の連載でお届けする。
スーパークリエイター 山中勇成氏は、高校3年生。ネット上では、「toriimiyukki(みゆっき)」というネームで活動している。好きな食べものは漬物。しょっぱい漬物類が大好きで、特に塩辛が好きだという。
みゆっき氏のパソコンデビューは、小学1年生のとき。「おもしろフラッシュ総合サイト」などでブラウジングを楽しんだ。小学6年生になると、みゆっき氏は自分でホームページを作るようになった。本格的にプログラミングを始めるようになったのは、中学2年生。あるテレビドラマがきっかけだったという。
ドラマの内容は、コンピュータを駆使して事件を解決していくというストーリー。物語には、遠隔操作やハッキングの話が数多く登場し、黒いモニターにプログラミング言語がブワーっと映し出された。「いやぁ、カッコ良すぎでしょ!」みゆっき氏は言う。俗に言う、中2病というやつだ。
「カッコいいなぁ」――それだけで、彼は本格的にプログラミングに取り組んだ。どうやってプログラミングを始めたらいいのか分からなかったみゆっき氏は、Amazonで1995円の本を買った。早速本に倣ってコードを書くと、画面に「Hello World」の文字が。「すごい!」彼は、感動した。しかし、本を読み進めていくうちに、「メモリ」「ポインタ」といったよく分からない言葉がたくさん出てくる。分からない言葉で埋め尽くされた参考書を片手に、彼はいったん挫折した。
そんな彼がもう一度立ち上がったのは、ニコニコ生放送を見ていたとき。当時のニコニコ生放送は、録画が不可能だった。どうにかして放送を見たいと思った彼は、ニコニコ生放送を録画できるサイトを思い付いた。作りたいものが見つかると、すぐに作れるようになってしまっていた。こうして、彼はプログラミングを覚えていった。生放送が好きだった彼は、ニコ生やUstreamのようにブラウザで生放送を見られるサイトも作成した。
大好きな動画に寄り添っていくうちに、セキュリティにも興味を持ち始めた。ニコニコ動画のセキュリティの穴を見つけては、担当者に報告をしたという。そんなことを続けていると、高校1年生の夏休みにドワンゴ社員から声がかかった。「うちで働かないか」――15歳のみゆっき氏は、ドワンゴでエンジニアとしてアルバイトを始めた。また、2012年11月には、情報処理推進機構が行う「未踏IT人材発掘・育成事業」に参加し、その中から数名だけ選ばれるスーパークリエータに最年少で認定。メキメキとスキルは伸びた。
このような経験を通じて、彼は「好きなことを見つけることの大切さ」を実感した。「好きなものを見つけることは大変なこと。でも、見つけた方がいい。好きなことは必ずしも1つじゃなくて構わない。自分もくもんや水泳、エレクトーンなど、いろんなことをやっている。いろいろ手を出してみて、手を広げてみて、さまざまな方面を見ることはいいことだと思う」(みゆっき氏)。
「学校での勉強は、必ずしも必要ではない」と、みゆっき氏は言う。その理由を、自らの体験を用いてこう語った。「自分が通っている学校は、土曜日にも授業がある。しかし、土曜日に授業があると、自分が行きたいと思うイベントに行くことができない。実際に、多くの機会を逃してしまっている。学校を休んででも行きたいが、欠席日数を考えるとこれ以上休めないのが現状。自分は、いろんな体験をすることにこそ価値があると感じている。だから、自分の興味のあるイベントに参加して、そこから多くのことを吸収したい。自分の好きなことを突き詰めて、それを発展させていきたいと思っている。しかし、学校に時間を取られるせいで、それがふさがれてしまう。これは、日本の制度としても改善していかなければならないこと。例えば、計算なんて、今はパソコンがやってくれる。そんな訓練をするよりも、もっと発想することが重要。そのためには何が必要か。日本の学校にも、もう少しいいやり方があるはずだ」(同氏)。
みゆっき氏は続ける。「自分が『必要ない』と言っているのは、日本の学校で行われているような勉強のこと。『勉強が必要ない』と言っているわけではない。例えば、自分の好きな方面の勉強(例えば、自分ならプログラミングの勉強)をすればいい。プログラミングを将来の仕事にしたい人にとっては、複数のプログラミング言語を学ぶことこそスキルを広げるために必要。学校でやらされている数学や古文は、ほとんど役に立たない。自分の印象が悪くなることを恐れずぶっちゃけると、学校の勉強は一切役に立っていない。それよりも、もっとイベントに参加して、スピーカーの話を聴いたり参加者同士でコミュニケーションをとったりしたい。そういう意味で言うと、大学は自分の好きな方面を追求できるし、自分の時間も作れる。中学・高校でも、そのような価値を提供してほしい」(同氏)。
スーパー中高生によるプレゼンテーションが終わると、参加者より多数の質問が寄せられた。
Q1:正直、さぼってしまったり、寝てしまいたいと思うことはないのか? どうしたら、皆さんのようなモチベーションを自分の子に継続して持たせられるのだろうか。
矢倉大夢氏:ぼくは、モチベーションを持つにはどうしたらいいかを考えたことはない。モチベーションがあるものしかやらない。だから、学校の授業で寝たいときは素直に寝るし、飽きたらSNSで友達としゃべっている。そんなふうに気分転換をしてから戻ると、意外にすんなり入れたりする。
VJ TKMi氏:寝たくなったら、寝る。自由にやればいいと思う。
Q2:将来の夢は?
toriimiyukki(みゆっき)氏:気楽に生きていきたい。自分が楽しければ、それでいいと思っている。
矢倉大夢氏:楽しいと思ったことを、ずっとやり続けていられる環境にいたい。その過程で、世界をちょっとでもよくできたらいいなーと思うが、今の段階ではまだ漠然としている。
Tehu氏:自分の楽しさはもちろん大事で、その楽しさを他の人にも伝えていきたい。
角南萌氏:具体的な夢はない。でも、自分が興味のあることをやっていれば、あとはなんとかなるだろうと信じて、楽しいと思うことをやっていきたい。
米山維斗氏:自分は将来研究者になりたいと思っているが、特に何を研究したいというのはこれからどんどん変わっていくと思う。だから、そのときそのときで、楽しいと思うことをやっていきたい。
山本恭輔氏:CGの映画を作りたいと思っている。将来は自分で作ったものを使って、世界中のいろいろな人々に笑顔や夢を与えられる人になりたい。
VJ TKMi氏:将来の夢を作ってしまうと縛られるような感じがする。だから、取りあえず自分が好きなことと、やりたいことをずっとやっていきたいと思っている。
Q3:「好きなことをやっていきたい」と言っているが、具体的にどのようなところに目標や目的を持ってやっているのか?
toriimiyukki(みゆっき)氏:結局、それも重要なのは自分が今好きなこと。今はプログラミングだが、将来音楽になるかもしれないし、それは分からない。
矢倉大夢氏:ぼくも、似たような感じ。自分の好きなことを突き詰めてやれば、世界中の人からフィードバックをもらえる。そうやって、どんどん自分を高めていける。それが、モチベーションの一番大きな要因になっている。
Tehu氏:皆の反応がモチベーションになっている。
角南萌氏:やっていて、「楽しい」「学びたい」と思うものをやっている。今は、心理学に興味があって勉強している。
米山維斗氏:自分が好きなことを、自分が満足するまでやりたいと思っている。どこで満足するかは分からないので、取りあえず満足するまでやる。
山本恭輔氏:皆が喜ぶ「笑顔」が目標。
VJ TKMi氏:国境を越えて、世界中の10代が議論できる場を作りたい。
Q4:子ども向けに、有害なコンテンツをフィルタリングするソフトがある。皆さんのフィルタリング設定はどうなっているのか?
全員:フィルタリングの設定は一切していない。
Q5:学校や企業、行政に提供してほしい環境は?
山本恭輔氏:知識はインターネットなどで自発的に学べる。学校で学ぶべきスキルは、対人関係のコミュニケーション。ぼくも学校からコミュニケーションを学んでいるので、そこをもっと重視してほしい。学校は1つの共同体だから、そこは必要だと感じている。
米山維斗氏:学校はもっと自由になっていいと思っている。例えば、ぼくの作った「ケミストリークエスト」は小学生にこそやってもらいたいカードゲーム。しかし、公立の小学校に持って行くと「企業がやっているからダメ」と言われる。つまり、企業がやっていなければいいということ? これは、意味不明すぎる。また、「小学校の学習指導要領に入っていないからだめ」と言われることも多い。もっと、全体的に自由になっていいと思う。
角南萌氏:選択授業などをもう少し重視した方がいいと思う。自分のやりたいことを先生に教えてもらったり、同じ興味を持つ人とコミュニケーションがとれる場がもっとほしい。
toriimiyukki(みゆっき)氏:うちの学校名には「電気」という言葉が付いているが、休み時間に携帯を使うこともダメだし、トランプをするのもダメ。一見、学校の勉強に害があるように見えるかもしれないが、トランプをやっているからこそ将来カードゲームを作るようになるかもしれないし、携帯を触っていて不便だからこそアプリを作るようになるかもしれない。そういう可能性が、あると思う。なのに、なんで学校はそれをつぶしてしまうのか。
Q6:今の小学生へのメッセージがあれば教えてほしい
VJ TKMi氏:好きなことをやったらいい。好きな対象によってはいろいろ言われると思う。だけど、最終的に自分の責任だと思ってやるんだったら、何をやってもいいのではないか。
山本恭輔氏:好きなことを見つけるために、いろいろなことを体験することが大事。いろんなものに参加して、いろんなことを体験するべき。
米山維斗氏:いろんな体験をすることが大事。例えば、京王線に乗って高尾山に行ってみたりだとか、京王線に乗って多摩動物公園に行ってみたりだとか。博物館などのいろんな知識が得られる場所に行ってみるのもいい。
角南萌氏:「出る杭は打たれる」とよく言われるが、出る杭になることを恐れないこと。たとえ他の人が興味を持っていないことでも、自分が好きなことを信じてやっていけばいいと思う。
toriimiyukki(みゆっき)氏:やはり、好きなことをやった方がいいと思う。20歳までであれば、大抵のことは親の責任。なので、おもいきりはっちゃければいい。大人の言うことは、5割はちゃんと聞いて「うん、そうだな」と思い、5割は適当に流しておけばいい。
Tehu氏:Be Abnormal、それだけ。
矢倉大夢氏:両親に「勉強しろ、勉強しろ」と言われると思うが、適度に勉強して、できるだけ自分の時間を作る。そして、自分の好きなことをやったり、いろいろ体験してみたりする。あとは、読書や博物館などに学ぶことも結構重要だと思う。
Life is Tech! 代表 水野雄介氏は、「日本の教育を変えたい」という強い想いから今回のイベントを開催したという。
参加者の半分は、10代。全7回の連載で紹介してきたが、実際にはわずか3時間のことだった。
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