インテルは同社が推進するオープンクラウドビジョンの進捗を発表した。大量データ蓄積ニーズの高まりに期待を寄せる企業での採用が増えてきているという。
2013年5月22日、インテルはオープンクラウドビジョン実現に向けた活動成果とビッグデータへの取り組みを発表した。オープンクラウドビジョンは2012年10月に公表していたもの。同社のIAアーキテクチャを使ったCPUをベースに、ネットワーク層やストレージを含め、高効率・高集積かつ低価格なサーバ構成のリファレンスを提供している。2012年10月の発表では、一般的な3.5インチのハードディスクドライブを並列に接続、ラック1U当たり32TB、1ラックで最大1PBを実現する構成を披露していた(関連記事)。
「大量データの蓄積が必須となる今後は、会計系などのようにトランザクションが多く、通信のレイテンシやメンテナンス面を考慮した立地が必要なクリティカルなもの以外は、大量データを置くデータセンターへのニーズが高まると考えている」(インテル クラウド・コンピューティング事業本部 田口栄治氏)
現在、分散ストレージシステムでは、富士通が「FUJITSU Cloud IaaS Trusted Public S5」として、同リファレンスモデルに即した分散オブジェクトストレージサービスを、エンタープライズ向けに提供している。それ以前には、クラウディアンが、Amazon S3API互換のオブジェクトストレージ製品を主にデータセンター事業者向けに展開しており(関連記事)、既にニフティクラウドやNTTコミュニケーションズの「Bizホスティング Cloudn Object Storage」などが採用している。
会見でゲストとして登壇したさくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏は、自社の研究部門であるさくらインターネット研究所とインテルとの技術交流に触れながら、「今後は大量データを低コストで蓄積するためのデータセンター需要が増えると考えているため、分散ストレージシステムの検討は以前から行っていた。実データに対するデータボリュームが増えてしまう分散ストレージならではの課題を解消するストレージシステムを検討していた際に、インテルからAmplidataを紹介された経緯がある。評価を進めた結果、インテルが提唱するアーキテクチャとAmplidataの組み合わせで、実サービスでの展開が可能であると考えた」と語った。
さくらインターネットでは、北海道・石狩市にある石狩データセンターにおいて、インテルの提唱するリファレンスモデルに即した構成による分散ストレージシステムを2013年6月に本番稼働、秋頃を目途にβ版サービスの提供を予定しているという。
一方、SDN活用を支援するリファレンスモデルについても、NTTデータにおける事例が披露された。こちらはOpen Networking Platform(ONP)やVNCを使った、OpenFlowをベースとした規格の標準化活動を進めている。
また、インテルデータセンターマネージャ(DCM)は、ハードウェア側に環境情報を送出する仕組みを設けてあり、別途センサなどを設定しなくてもサーバの稼働状況や消費電力などの情報を取得できるものだ。これを、各社がサーバ管理ツールなどで取得して利用できる。こちらについても、富士通が展開するコンテナ型データセンター「富士通Modular Data Center」の管理アプリケーションでの利用事例が出ており、このほかにも、日本ノーベルが2013年5月から、niscomは2013年秋からDCMを採用した製品を展開する予定だという。
インテルではApache Hadoopプロジェクトに対してもXeonアーキテクチャ最適化のための技術協力を進めており、「日本での展開も考えられる」(田口氏)としている。
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