ということで、大変前置きが長くなってしまいましたが、そんな状況の下、今回のWWDCでは、OS X Mavericksに搭載される新版Safariの新機能が発表されました。その内容を挙げると以下の通りです。
これらは一見すると地味な進化に見えます。しかし、僕にとって今回の発表は、まさにアップルとグーグルのWebブラウザに対するアプローチの違いを表現しているように感じました。
Webブラウザの場合、パフォーマンスの向上に関しては、新しいバージョンが発表される度に、各Webブラウザがベンチマーク結果を比べ合い、他のブラウザより何倍速いというアピールをします。ですが、ここは日進月歩で進化しているので、ベンチマークの数字自体にあまり大きな意味は無いと思っています。
ただ、アップルによるパフォーマンスの最適化は、単純にHTML/CSS/JavaScriptなどWebテクノロジ内部の最適化だけでなく、スクロールの滑らかさなど、システム全体の機能などネイティブ技術を活用した改善を行っています。
アップルのアピールポイントで興味深かったのは、その最適化のアプローチが単なるベンチマークによるスピード強化だけではなく、CPU利用率やメモリ使用量、バッテリの利用時間など、実世界でブラウザを使う際に、よりメリットの得られる最適化に注力している点です。
さらには、サイドバーの強化による使い勝手の向上など、レンダリングエンジンとしてのWebKit/HTMLの強化以上に、WebブラウザとしてSafariというアプリケーション全体の使い勝手向上や最適化を推し進めています。この点においても、HTML/Webテクノロジを軸に全ての機能の最適化を行うGoogle Chromeと、開発の方向性の違いを感じました。
特に今回の最適化内容は、OS上の単独アプリケーションとして開発されているGoogle ChromeやFirefoxなどでは難しい、OS XのソフトウェアとMacのハードウェアを含めたシステム全体による最適化が行われているという印象でした。
実際に、基調講演のデモでは、SafariのウィンドウがiTunesのウィンドウに隠れると、SafariのCPU利用率がほとんどゼロになり、消費電力を節約する様子が紹介されました。まさにOSレベルでのチューニングにより実現している一例です。
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