レッドハットが7月23日、同社のOpenStack製品を国内で販売開始したと発表した。当面は直販のみ。将来に向けて検証を進めたい事業者やユーザー組織に対し、レッドハットが直接、全面的にサポートできる範囲で提供していくという。
レッドハットは7月23日、OpenStackをベースとした同社の新製品2種を、同日に国内提供開始したと発表した。同社はこれらを当面、「OpenStackを一緒に育てていただける方」(同社)を対象に提供していく。
新製品は、「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(本記事ではRHELOPと呼ぶ)」と「Red Hat Cloud Infrastructure(本記事ではRHCIと呼ぶ)」。一言でいえば、RHELOPはOpenStackをRed Hat Enterprise Linux(RHEL)と統合・検証し、パッケージ化した製品。一方、RHCIはRHELOPにマルチクラウド管理ツールのRed Hat CloudForms、および仮想化の「Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)」を組み合わせた製品。
RHELOPは無償OpenStackディストリビューションの「RDO」に基づく。RDOはOpenStackプロジェクトが6カ月ごとに出すリリースを、レッドハットがビルドし、RHELやFedoraなどの上で動作するバイナリとして提供するもの。RDOでは「コミュニティのものをそれなりに使える形で出す」(レッドハット 常務執行役員 製品・ソリューション事業統括本部長の纐纈(こうけつ)昌嗣氏、以下同)。
RHELOPは、RDOのコードの動作検証および安定化を行い、2カ月遅れで提供する商用ディストリビューションで、Red Hat Enterprise Linuxと統合したパッケージとして提供する。レッドハットが動作を保証するとともに、技術サポートを提供する。主な対象は、通信事業者やデータセンター事業者などのサービスプロバイダだ。「(OpenStackプロジェクトでOSとして使われている)Ubuntuでは動かなくなる可能性がある」と纐纈氏は話した。これは、RHELで開発中の一部機能を、RHELOPに組み込んでおり、これを現在のバージョンのRHELにバックポートしているからという。例えばネームスペース、VLANの扱いなどで改変を加えているという。
当面RHELOPでは、「OpenStackがまだ成長過程にあるため」、OpenStackプロジェクトのリリースサイクルに合わせ、6か月おきに新バージョンをリリースしていく。だが、将来は2年おきなど、リリースサイクルを延ばすことで、より長期的に安定して利用できるようにしていきたいという。
一方、RHCIは、RHELOPとRHEVに、マルチクラウド運用管理ツールの「Red Hat CloudForms 2.0」を組み合わせた製品。RHCIは、サービスプロバイダよりも企業をターゲットとしており、このCloudFormsが重要な付加価値部分となる。
RHCIに含まれるCloudForms 2.0は、米レッドハットが2012年12月に買収したManageIQの製品(同社がこれまで「CloudForms」と呼んでいたものとは別物)。この製品は現在、VMware vSphere、Amazon EC2、Hyper-V、そしてRHEVの混在環境を管理できる。だが、CloudFormsは現在のところ、OpenStackの管理ができない。レッドハットはこの対応作業を急ぎ、複数の社内クラウド運用基盤、および複数のクラウドサービスを結んだハイブリッドクラウドプラットフォームに進化させるとしている。
なお、CloudFormsはレッドハットで唯一、オープンソースでない製品だという。また、この製品は現在、単体として購入することはできない。将来はオープンソース化、および単体での提供を行う予定という。
レッドハットは2製品を、当面パートナー経由の販売はせず、直販提供していくという。「製品の性格上、それほど安定して動くかどうかはまだ明確ではない。レッドハット自身がエンジニアを顧客にしっかり投入し、確実に動く環境を作っていきたい」。新製品を使いたいという事業者からの問い合わせをすでに受けているが、その顧客も、全面的に採用するというより、今後主導権をとるために、現段階でしっかりと検証しておきたいという意図だという。
では、従来のレッドハット製品ではパートナー関係にある米HPや米IBMが、自社のOpenStackディストリビューションを推進する動きを見せていることについては、「オープンソースなので、いろいろな企業が出してくるのは当たり前。そのなかで一番いい、安定したものをレッドハットが出せるかどうかがカギだと考えている」という。現在は独自のディストリビューションを推進するベンダも、将来はレッドハット版を使うようになることに期待しているようだ。
(2013/07/24:読みやすさのために記事中の表現を一部修正し、文末の一文を加えました)
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