Hyper-Vの仮想マシンでは仮想ディスクのほかに、物理ディスクを直接接続できる。これをパススルーディスクという。ファイルシステム処理を経由しない分だけオーバーヘッドが少なく、パフォーマンスはいくらか向上するが、運用に当たっては幾つか制約がある。その設定方法は?
Hyper-Vの仮想マシンでは、VHDやVHDXファイルなどの仮想ディスクファイルを使うのが一般的だが、これ以外にも物理ディスク(もしくはSAN上のLUN)を直接仮想マシンに接続(アタッチ)して利用する方法がある。これを「パススルーディスク(pass-through disk)」といい(仮想マシンからのアクセス要求を全てそのまま物理ディスクへ渡して処理するため、こう呼ばれる)、次のようなメリットがある。
逆に、次のように幾つかの制約もある。
このような制限があるため、VHDやVHDXの代わりに使うというわけにはいかないが、例えば高いパフォーマンスが要求されるようなボリューム(データ入出力が多いデータベースやログなど)で使用したり(容量固定の仮想ディスクのような用途)、リムーバブルのUSB接続ハードディスクを使った大量のデータの持ち運び用途、のようなケースで活用できるだろう。
Hyper-Vでパススルーディスクを利用するには、仮想マシンの「設定」画面で物理ディスクを選択すればよいが、何の準備もせずにディスクの設定画面を開いても、[物理ハードディスク]の項目はグレーアウトしていて設定できず、操作に戸惑う。
本TIPSではHyper-Vの仮想マシンでパススルーディスクを使う方法を紹介する。
Hyper-Vの仮想マシンで物理ディスクをパススルーディスクとして使うには、システムに物理ディスクを接続後、最初にペアレントOSで「オフライン」状態にしておかなければならない。このためにはまずペアレントOSでディスクの管理ツールを開いて(「コンピュータの管理」ツールでも可)、該当する物理ドライブを右クリックし、ポップアップメニューから[オフライン]を実行する。
ディスクをオフラインにしたら、次はパススルーディスクを設定したい仮想マシンの「設定」画面を開き、「IDE コントローラー」か「SCSI コントローラー」グループに下に、新しい「ハードドライブ」項目として追加する。IDEの場合は仮想マシンの停止時にしか追加できないが、SCSIなら仮想マシンの実行中でも追加できる。
以下の画面は、IDEの下に新しいハードドライブ項目を追加したところである。「物理ハード ディスク」の下に、先ほどオフラインにしたディスクが列挙されているはずなので、該当する物理ディスクを選んで追加する。
以上で操作は完了である。追加する物理ディスクにあらかじめボリュームが確保されていれば、それがそのまま仮想マシンからアクセスできるはずである。何もパーティションが確保されていない新品のディスクなら、仮想マシンでディスクの管理ツールを起動し、ディスクを(必要なら)オンラインにしたり、初期化してから、パーティションを確保してフォーマットすればよい。
最初に述べたように、仮想マシンでパススルーディスクを使っている場合は、その仮想マシンではスナップショットは作成できなくなる。作成しようとすると、次のようなメッセージが表示される。
仮想マシンを「エクスポート」すると、構成情報ファイル(XMLファイル)とVHDファイルのコピーなどが作成されるが、パススルーディスクに関しては何も処理は行われない。仮想マシンの構成情報ファイルにはパススルーディスクの識別情報(どの物理ディスクかという情報)などは記録されているが、パススルーディスクのデータのコピーが作成されることはない。パススルーディスクが障害を起こしても、エクスポート結果から戻すことはできない。
インポート操作(コピー操作)を行うと、オリジナルのパススルーディスクを参照するように仮想マシンが設定される。つまり1台の同じ物理ディスクを参照する、2つの仮想マシンが作成されることになる。この場合、起動できるのはどちらか1台の仮想マシンに限られる。同じパススルーディスクを参照する2台目の仮想マシンを起動しようとしても、パススルーディスクのアクセス違反エラーとなって、起動できない。
■この記事と関連性の高い別の記事
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.