リーダーは「分かりやすい人」であれITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(3)(1/2 ページ)

業務で目的を達成するためには、活力あるチームを作り、運営していくことが重要だ。本連載では、ITエンジニアのリーダーシップスキルの向上に役立つツールや考え方を詳しく紹介する。

» 2013年09月30日 00時00分 公開
[上村有子エディフィストラーニング]

※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。

「分かりやすい」とは何か?

 前回「チーム活性化のために、リーダーが果たすべき役割」で述べたように、チームを活性化させるためには、「チームリーダーの意向をメンバーに浸透させる」ことが必須です。チームリーダーの意向は、リーダー自らがメンバーに働きかけて、積極的にアピールする必要があります。

 昔のように時間がゆっくりと流れているのであれば、メンバーが分かってくれるまで待つというのもよいでしょうが、今はこんなことで時間を無駄にはできません。

 では、リーダーに必要な分かりやすさとは何か? 物理的要素と精神的要素の2つに分けて考えてみます。

物理的な分かりやすさ

 物理的な分かりやすさの要素には、言葉(文字)・表情・態度など、目で見たり耳で聞いたりできるものが挙げられます。

 人はさまざまな表現手段を持っているのですから、リーダーは普段から自分の気持ちや意向を意図的に周囲にアピールし、正しく伝える努力を惜しんではなりません。リーダーの物理的な分かりやすさは、そのまま「影響力」と言い換えられます。リーダーが好むと好まざるとにかかわらず、リーダーの言動はメンバーに大きな影響を与えます。自分が人に与える影響には、細心の注意が必要です。

重要! 物理的な分かりやすさは「表現力」。


精神的な分かりやすさ

 精神的な分かりやすさの代表的な要素は、「信念」です。これは、相手の立場で表すと「信頼感」と言い換えられます。物理的な分かりやすさと違って、目や耳にすることはできませんが、「そばにいても不安を感じない」というのが精神的な分かりやすさの根本です。

 人は、危険なものが近くにあると不安を感じます。同様に正体不明のものが近くにあると、不安を感じるものです。リーダーが精神的に分かりにくい人であると、メンバーは不安を感じてしまいます。逆に精神的に分かりやすい人だと、安心します。そして安心が積み重なって信頼に育ちます。

 皆さん自身も、素性の知れない人や、訳の分からない人にはついていかないでしょう。メンバーについてきてほしいのであれば、皆さんもリーダーとして、意識的に、精神的に分かりやすい人になるべきです。つまり、人から怪しまれるような雰囲気を出すのではなく、シンプルな人を目指すべきです。

重要! 精神的な分かりやすさは「確固たる信念」。


 メンバーに圧迫感を与えることなく、信頼してついてきてもらえるよう、リーダーには物理的な分かりやすさと精神的な分かりやすさの両方が必要です。以下、それぞれについて、詳しく見てみましょう。

物理的な分かりやすさの表現方法

 物理的な分かりやすさの要素には、表情や態度があります。例えば、メンバーが作業の進ちょく報告をしている際、リーダーが無表情のままだと、話し手は「何か変だぞ。もしかしてまずいことをしたか?」と不安を感じてしまいます。

 リーダーは、「自分は常に周りに影響を与える存在である」ことを自覚する必要があります。自分の気持ちを表に出すか否かでさえ、自分の勝手とはいっていられません。何気ないしぐさから誤解が生まれないよう、意図的な努力が必要です。

 ちょっと意識するだけで、表情はいくらでも作れるものです。誰かと会話をしているとき、少し距離を置き、客観的に自分を観察してみましょう。そして、表情だけでなく、自分に備わった全身の伝達機能を余すことなく使って「自分」を示してみましょう。

 そして、自分のアウトプットが思いどおりの効果を上げているかどうか、聞き手のリアクションを観察して確認します。効果が薄いと感じたら、多少の演技も必要です。喜怒哀楽のうち、喜と楽はやや大きめに表現し、怒と哀も、決して抑え込むことなく相手に冷静に伝える術(すべ)を身に付けましょう。大げさにふるまうということではなく、あくまでも率直に、「隠さない」ことを心掛けます。

重要! 相手への効果を意識しながら感情表現する。


感情表現スキルをチェックする

 言葉にするには照れくさいことや角が立つことも、表情を上手に使えばマイルドに伝えられます。この伝達方法は、天性のものではなくスキルです。つまり練習して身に付けられるものです。

 まず自分の現状を知るため、身近な人に次のようなチェックをお願いしてみましょう。

自分の表情を見てもらい どの感情を表現したか当ててもらう
  1. 紙の中央に○を書き、好きか嫌いかで線を書く
  2. 好き、嫌い、それぞれから派生する感情を書き出す
  3. その感情パターンをピックアップして、無言のまま表情で表現する。大げさな表情ではなく、できるだけ普段と近い状態にする
  4. 表情を見て、どの感情を表現したか、当ててもらう。

 自分の意図を表情で正しく伝えられましたか?

 一般に、日本人は「困惑」や「驚き」の表現が下手だといわれています。相手の誤解の原因は自分にあるのかもしれません。目に見える要素が分かりやすい人になるためのポイントは、素直にふるまい、その効果を客観的に把握することです。

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