すでにIoTにJavaを応用できることを示した上で、将来Javaがさらにどのような役割を担えるのかを説明するため、“Java Platform Vice President”であるNandini Ramani氏が登壇した。
Ramani氏は、あらためてJavaがJava MEやCLDCといった組み込み向けプラットフォームを提供してきたことを紹介した上で、「Java 8ではSEとEmbeddedの基盤が共通化されて、よりJava開発者のスキルが生かせる領域が拡大してくる」と説明。また組み込み/IoTソリューションの拡大に向けて数多くのベンダと協調しており、小型デバイスのJava対応は一層進んでいくとのことだ。
そして、一例としてgemalto社のM2M(Machine to Machine:IoTとほぼ同義だが、昨年までよく使われていた言葉)の開発キットがJava Embeddedに標準で対応することに触れた。これについては同社から翌日に正式なプレスリリースが発表された。
Java SEとJava Embedded(旧、Java ME)との境がなくなってきている好例として、APX LabsのAndrew Sugaya氏が紹介された。Sugaya氏は9月上旬に行われたQualcomm主催のカンファレンス「Uplinq 2013」のハッカソンで、Java Embedded技術を使って見事入賞。ハックした内容は温度センサや生体センサで取得した情報をクラウドに送り、さらにクラウドからデータを受信して電球の色を変えるというものだ。
電球の色が変わること自体は実用的な意味はないが、Sugaya氏は「“IoT”としては、ターゲットは電球である必要はなくトースターでも、椅子でも何でも良い。将来は全てのものがインターネットでつながっていくはずなのでエキサイティングだ」と語った。
またSugaya氏は、Java SEは長年使ってきたもののJava ME/Embeddedの経験はなく、たった1日のハッカソンで特に迷うこともなくJava Embeddedを使いこなせたことにも触れた。
これまでJava MEはJava SEと比べて利用できるAPIに大幅な制限があったり、開発環境と実行環境の差異で悩まされたりすることがしばしあったが、Java 8ではSEとEmbeddedのリリースが同期されるようになり、Java 9では「Project Jigsaw」の導入によりAPIセットの差異は、ほとんど気にしなくて良くなるはずだ。
Ramani氏はJavaエコシステムが、ほぼ昨年のロードマップ通り順調に進んでいることを示した(ロードマップ上、昨年と比べて目を見張るトピックはないとも言い換えられる)。
Utzschneider氏は、「JavaOne直前にリリースされたJava SE/Embedded 8開発者プレビューリリースをぜひ試して、フィードバックしてほしい」と説いた。
そして話題はJava EEに移り、クラウドとJava EEを統括するCameron Purdy氏の出番となる。
Purdy氏は一昨年にJava EE 7の構想を、昨年は進捗を、そして今年は無事リリースできたことに触れ、「Java EE 7のリリースが実に順調であった」と語り出した。また、特にHTML5、中でもWebSocketやREST、サーバからのプッシュなど、モダンなWebアーキテクチャをサポートしていることを強調した。
Java EE 7がモダンなアプリケーションアーキテクチャに対応し得るのは間違いではないがWebSocket仕様の範囲内であるサーバからのプッシュやRESTを挙げてJava EE 7がHTML5に対応しているとするのは、いささか強引だと筆者は感じた。
現在のところ、Java EE 7に適合したコンテナは参照実装のGlassFishだけで、活用事例が出てこなかったのは残念だ。WebLogic ServerやWebSphere、JBossなどが対応すれば来年には豊富は事例が聞けるようになるのではないだろうか。
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