Javaが他にも適用されている例として、環境問題に取り組むOpower社が紹介された。同社は米国が世界最大の電力消費国でありながらも電力使用量に無関心な人が多いことを問題視し、シンプルな取り組みとして、まず「近隣の人と比べて、どれくらい電気を使っているか」というレポート(もちろんJavaで作成されている)を郵送するという取り組みを5年前にカリフォルニアのサクラメントで開始したという。
この取り組みは大変な効果を発揮し、今では15万人分相当に当たる電力消費量を削減できているという。
同社では、郵送から始めた通知を電力計と連動させて、メールやSMSなどによるリアルタイム通知を実施したり、クラウドと連携させて、いわゆる“IoT”な温度計を実現したりしている。こうしたあらゆるソリューションがJavaで稼働していることを紹介した。
教育や環境問題でJavaが活躍することを証明した後、話題は宇宙へと移った。a.i. solutionsのSean Philips氏は、NASAの「太陽の磁気プラズマ波による磁力線再結合」の研究ミッション「MMS」でJava、NetBeans RCP(NetBeansのデスクトップアプリケーション向け基盤)、JavaFXが活用されていることを説明した。
a.i. solutionsの役割は、この研究で使われる4つの探査機がデータ測定に必要な編隊を組むための軌道計算、軌道修正指令をすることだという。現在のところJava自体が宇宙空間で動作しているわけではないが、「探査機の発射コントロールに使われるようになったら『JRockit』と呼ぼう」「Java SEは『Space Edition』に改名しないと」などと冗談を飛ばしながら、宇宙の分野でJavaが活躍していることをたたえた。
コミュニティキーノートの最後を飾ったのは今年もJavaの父、James Gosling氏だ。
現在海洋調査用の自立航行ロボットを開発・運用するLiquid Robotics社に勤めるJames Gosling氏は昨年からの進展をたずねられると「JavaFX、Lambdaを活用している!」と報告した。これは、昨年デモンストレーションに使ったGUIアプリケーションがSwingベースであることを揶揄されたことに対応しているものだろう。
昨年はスライドとデスクトップアプリケーションのデモに終始したが、今年は実際に海上に浮かぶ同社のロボットからのリアルタイム動画配信、そしてコントロールコマンドの送信などの様子を見せて会場を沸かせた。
JavaFXで書き直された海上ロボットの管理・監視アプリケーションで地図描画、ロボットの軌道確認ができることを示し、地図の描画はJavaFXのカスタムコンポーネントでGoogle Mapsよりもスムースに動くことをアピールした。さらに、このカスタムコンポーネントはオープンソース化する予定だという。
Liquid Robotics社がJCPに加盟するといったことはなかったが、Javaの父は依然Javaを愛し続け、活用していることを印象付けてコミュニティキーノートの幕を閉じた。
ストラテジー、テクニカル、コミュニティと3本の基調講演ではJavaが昨年描いたロードマップ通り順調に進んでいることを印象付けたが、「Java8の次」「Java EE 7の次」については特に示されず、正直なところ「サプライズのないJavaOne」というのが参加者の共通した認識だ。
しかしサプライズがないことが、Javaの衰退を表すわけではない。JavaFXの適用は順調に進み、いよいよ秒読みとなったJava 8やLambdaのリリースに開発者は大変盛り上がっていた。
来年のJavaOne(2014年9月28日〜10月2日を予定)では、順調に行けば、Java 8の適用事例やJava 9へのロードマップなども聞けるはずなので、期待したい。
山本裕介
Twitter APIのJava向けライブラリ「Twitter4J」やトラブルシューティングツール「侍」などを開発するオープンソースソフトウェアデベロッパ。
株式会社サムライズム代表。
Twitterアカウント:@yusuke
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.