検証コレクション(TABOK関西勉強会)からは、事例を基にしたテスト自動化のポイントの解説が行われた。
検証コレクションの前川博志氏は、テスト自動化のパターンをトイレの進化になぞらえる。和式のトイレに対し、部分的な自動化を実施したとしよう。しばらくすると、システムが肥大化しエンドレスな改造が行われることでROIが欠如したトイレが出来上がるという、よくある「アンチパターン」だ。
これと似たような事例は幾つもあるようだ。続いて登壇した森田誠氏による「自動化事例をまとめてみた」では、「保守的な組織内でテスト自動化をしたい」というある技術者を例に、幾つかのキーワードを提示する。
新しいことに踏み出しにくい文化の企業において、事前にテスト自動化をある程度用意し、部内への紹介と併せて一気にテスト自動化を実施することを森田氏は「3分クッキング」と名付ける。
このようなパターンは悲劇となる。その後、「自動化はすごい」と判断し次々と実施されるが、実際は自分勝手な自動化システムが進んでしまい、評価項目もかぶってしまう。結果として「自動化ハイ」に陥って余計なものまで開発・テストしてしまう「建て増し旅館」が出来上がる。当然、管理コストもかさむ。
その時点でやっとコストが掛かっていることに気付く。同時期に、主に管理していた技術者が他部署に配置転換。テスト自動化の環境はメンテナンスできず、徐々に手動に戻っていく。これを森田氏は「原住民蜂起」と名付ける。
そして時は流れ、別の技術者が自動化に興味を持ち、過去に作られていたスクリプトを再発見、再度自動化が進む…… といったものがテスト自動化のアンチパターンとなる。
より良いパターンでのテスト自動化は、ファクトリーオートメーション(FA)を手本にするといいのではないか、というのが川口慎一郎氏だ。工場の製造工程を自動化したのがFAで、作る、運ぶ、検査するという要素が組み込まれ、作業ミスを減らし、効率性、安全性を上げるための仕組みである。これはテスト自動化で目指すものに近い。
川口氏はオムロンの事例を基に、「FAを逆アセンブルしてみると、手で組み立てていたときの工程と、いまのFAの工程はかなり違うことが分かる。自動化の難しさとは、頭の中で無意識に行っていることを見えるようにすることにある。目に見えていることだけを自動化すると、やっていることが隠ぺいされてしまう」と述べる。
FAにおいては工程ごとに検査、材料を混ぜる、次の工程に流すなどが構造化され、品質の良さを測る方法も同様に構造化されている。プロセス全体が最適化されるよう、効率を計測し、振り返り、改善を行う必要がある。「これはテスト自動化にも通じること」(川口氏)。
「マニュファクチャリングもテスティングも“人の知恵と技術の結晶”という意味では同じ」と川口氏は語る。オムロンの創業者、立石一真氏は「機械にできることは機械に任せ、人間は創造的な分野で活動を楽しむべきである」と述べたという。川口氏は、これに加え「自動化の先にあるものを考えてみれば、創造的で楽しい仕事に変わるかもしれない」とした。
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