招待セッションでは、STARアドバイザーの辰巳敬三氏による「テスト自動化のこれまでとこれから」と題したセッションが行われた。
辰巳氏は1976年に富士通のソフトウェア事業部検査部に配属となり、以来、「生涯一テスター」として、ソフトウェアの品質管理やテスト技術を追いかけ続けているという。
テスト自動化の歴史は長い。辰巳氏が論文を調査したところ、テストに関する論文として、テスト手順の標準化、計算機時間の効率化を述べた「Automatic Program Testing」(IBMカナダ)が1962年に登場しているという。DEC初のコンピュータであるDEC PDP-1の登場が1960年であることを考えると、プログラミングとテストは関係が深いと捉えられるだろう。
1970年代にはテスト自動化に関する取り組みも進み、1972年には「Program Test Method」という最初の書籍も登場する。1970年代にはメインフレームのソフトウェア検査部門において多数のテストツールが使われ始め、1990年代にはマーキュリー社(現ヒューレット・パッカード)のXRunner/WinRunner/LoadRunnerなど商用のテストツールも登場する。
メインフレームの時代からUNIXへ、DOSからWebへ、GUIからモバイルへの移行が進む中、現在ではテストのためのツールも商用製品だけではなくオープンソースのツールが登場している。例えば、Webアプリケーションのテストを行う「Selenium」などが上げられる。
最後に辰巳氏は、テスト自動化のこれからとして、現在「International Workshop on Automation of Software Test(AST)」で研究されているテーマを紹介した。
2013年5月に開催された際に特別テーマとして挙げられたのは、新たな概念「Testing of Software as a Service」(TaaS)だ。これはクラウドのテストに加え、クラウドを使ったテストを含む概念で、ASTを含むさまざまな会合でワークショップが行われているという。
また、辰巳氏はテストに携わる技術者は専門技能が必要であるとし、より具体的な職責として定義されるのではないかとした。そこで辰巳氏は、LinkedInにおいて「Test Automater」という職責がどのくらい存在しているのかを調査してみたという。
その結果、ソフトウェア技術者が353万人登録されているうち、肩書きに「Test Automater」と明記していたのはわずか58人(0.0%)、「Test Engineer」は15万人弱(約4.2%)しかいなかったという。
辰巳氏は「テスト自動化の歴史は古いが、専門家されてからはまだ10〜15年程度しかたっていない。テスト技術者にとって自動化は必須知識。ツールを使うだけではなく、自動化ノウハウを方法論としてまとめたり、新たな開発に挑戦し、世界に打って出てほしい。今からでも先駆者になれる」と述べ、まずは研究会コミュニティに参加することから始めよ、とした。
なお、本稿で照会した講演資料は、テスト自動化研究会(STAR)のページで参照できる。
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