今回の講演会を主催するCA Tech Kidsの代表取締役社長 上野朝大氏は「子どもたちへのプログラミング教育の重要性」と題して講演した。上野氏によれば、現在、CA Tech Kidsの教室には約100人の生徒が通っているという。
上野氏は、「なぜ子どもたちへのプログラミング教育が必要なのか」を、3つの理由を挙げて説明した。
1番目の理由は「21世紀の世界はプログラムで構築されている」。上野氏は「あらゆるデバイス、サービスの背後にはプログラムがある。世界が何でできているのか、世の中を動かす仕組みを知る必要がある」と語った。
2番目の理由は、「消費者にとどまり続けるのではなく、自ら生産する側に回ろう」(上野氏)。ノートパソコンが1台あれば、自宅にいながらにして製品/サービスを作り出せる時代になったことを説明した。
3番目の理由は「プログラミングが養ってくれる力」。上野氏はプログラミングを学ぶことで、「自らのアイデアをどのようにすれば実現できるのか、論理的に考え実行し、障害を取り除きながら実行していく力を養える」と語り掛けた。「そして自らのアウトプットを積極的に世の中へ発信できる。それはプログラミングにとどまらず、社会で活動するための普遍的な力になる」(上野氏)。
この講演会の締めくくりは、コンテスト入賞経験を持つ小学生らが登壇してのパネルディスカッションだった。司会は、前出のCA Tech Kidsの代表取締役社長 上野朝大氏である。
登場した小学生は2人。1人は中馬慎之祐君、小学4年生だ。CA Tech Kidsの教室で作った『サッカーインベーダーゲーム』を紹介した。サッカーボールを蹴って敵を倒すゲームで、GameSaladで制作されている。
慎之祐君は、LEGOをScrachで制御する開発キット「WeDo」を幼稚園の時にプレゼントで与えられているが、本格的にプログラミングを始めたのは小学2年生からだという。
もう1人は、永滝谷晋司君、小学6年生だ。Life is Tech主催の中高生向けプログラミングキャンプに小学生ながら参加し、アプリ開発に目覚めた。iPhoneアプリ『席替え!!楽!!楽!!』を開発し、スマートフォンアプリのコンテスト『アプリ甲子園2013』では最年少ファイナリストに選ばれた。
晋司君のお母さんは、「プログラミングを始めてから、アルファベットを覚えたり、数学の面積の公式を調べたりと、自分で何でも調べるようになった」とプログラミング教育の効果について話した。
以上、CA Tech Kids主催の保護者向け講演会の模様をお伝えしてきた。今回の説明内容から、同社の姿勢、考え方が見えてくる。それは、IT企業として「プログラマー人材は今後ますます必要になる」との認識を持っていること、それに「プログラミング教育は21世紀には『必修』といえるスキル」との問題意識があることだ。
こうした考え方の下、教材(テキスト)と指導者(メンター)を組み合わせる教育方法をシステマチックに展開しようとしているという印象を受ける。上野社長によれば、同社は「2020年には10万人」の子どもを教える目標を持っているとのことだった。
著者プロフィール
星暁雄(ほしあきお)
ITジャーナリスト。日経BP社で『日経エレクトロニクス』記者、オンラインマガジン『日経Javaレビュー』編集長などの経験を積み2006年に独立。現在はフリーランスとして活動。半導体、プログラミング言語、オペレーティングシステム、エンタープライズIT、インターネットサービス、スマートデバイスなど、幅広い分野の取材執筆経験を持つ。イノベーティブなソフトウェア分野全般に関心を持つ。最近は現実世界のモノとソフトウェアを結ぶ技術に特に注目している。より詳細な経歴はこちら
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