ヘッドハンターとの付き合いは、1回の転職コッキリではありません。付き合いが長くなれば、信頼できる相談者になったり、キャリアの提案者になったりもするのです。
ヘッドハンターとの付き合い方、前回はお抱えヘッドハンターのススメと題して、ヘッドハンターと継続的に関係を持ち続けることの利点を解説しました。今回はその続編として、具体的にどのようなことが起き得るのかをご紹介しましょう。
この連載をご覧になっている方はもうお分かりだと思いますが、ヘッドハンターはあなたのキャリアの出世魚のようなものです。出会ったときはヘッドハンター、一度知り合って信頼関係を築いてからはキャリアを相談できるコンサルタント、さらに付き合いを深めると、ジョブに関する情報ネットワークになります。
これをヘッドハンターである私の側から見ると、最初は仕事として始まった関係でも、定期的に連絡を取り、面会や食事の機会を重ねていくうちに、だんだん気心が知れるようになり、やがて半分は大切な候補者、半分は友人という感覚の関係になっていきます。
そして、それくらいの関係になると相手の志向性やジャストフィットするフィールドを深く理解できるようになり、仕事のマッチング精度が高まっていきます。
先日もこんなことがありました。
A社を経営する旧知の社長から「アカウントコンサルタントを探している」という相談があり、私の頭には長年お付き合いのある、当時はある企業の役員を務めていた40代のBさんがすぐ思い浮かびました。
A社は評価を長期的な視点で行う会社で、ビジネスも非常にうまくいっていました。つまり、慌てて拙速に成果を出さなくてもよい状況ということです。仕事の内容もBさんのそれまでの経験を存分に生かせ、これから50代を迎えるBさんが腰を据えて仕事をするにはよい環境でした。何より、A社の社長とBさんの相性は非常に良いという確信が、2人との付き合いが長い私にはありました。
ただ、Bさんにはちょうど別の案件を提案したばかりだったので、その案件がうまくいかなかったら後日、A社を改めて提案しようと一時保留にしていました。ところが数週間後、Bさんから「紹介いただいた会社とは別のところに決めました」との連絡が。
「おめでとうございます。ちなみにどんな会社ですか?」と尋ねると、驚いたことにBさんの転職先はA社でした。たまたま別のルートでA社の社長と知り合う機会があり、すぐに意気投合して「ぜひうちに来てほしい」という話になったそうです。
私の予想通り2人の相性はバッチリで、Bさんは今、A社で以前にも増して生き生きと活躍しています。何が言いたいのかというと、(今回はAさんが自力で入社しましたが)付き合いの深いヘッドハンターには、その人が最も活躍できる会社が分かる、ということです。
紹介会社に勤めている友人がいるから、その人を自分のお抱えヘッドハンターにする、というのはどうでしょうか。実は、最初から友人であるヘッドハンターやキャリアコンサルタントを相談相手にするのは、あまり適切ではありません。知り合いの保険営業を断れないのと同じように、変な気使いが生じたり、本当に客観的なアドバイスがもらえなかったりするからです。
逆に、他人から関係性をスタートし、だんだん仲良くなって適度な距離感にあるヘッドハンターを抱えておくと、精度の高いマッチングを期待できるようになります。
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