お抱えヘッドハンターを持つメリットとして、「自分の想像を超えたキャリア選択の可能性」が広がることも挙げられます。
エンジニアはITのプロフェッショナルですが、キャリアについてはアマチュアなので、今後の選択肢として視界に入ってくるのは、自分のいる世界にとどまりがちです。ところがプロのヘッドハンターを使うと、自分の想像の範囲を超えた提案が行われるのです。
ちょうど今、転職の相談に乗っているCさんの事例を紹介しましょう。大手メーカーの情報システム部門を振り出しに、経営企画室で事業企画を行ったり、グローバルのプロダクト管理を手掛けたりした経験の持ち主です。
Cさんに対し、私は3つのオファーを紹介しました。
1つ目は、製造業からのオファーです。「事業計画を作れる人が欲しい」「グローバルでプロダクト管理ができる人をぜひ」といった、同じような業界でそれまでのキャリアをそのまま生かせる仕事です。これは本人にとって想像の範囲内であり、他のキャリアコンサルタントでもできるマッチングでしょう。
2つ目は、他の業種からのオファーで、運輸業の大手から「メーカーでグローバルのプロダクト管理をやっていた人」を求める案件です。要は運輸業の顧客であるメーカーのニーズを把握していて、かつ海外とのコミュニケーションや交渉ができる人が欲しいというオファーです。これは異業種への転身であり、Cさんの想像の範囲を少し超えたものだと思います。
3つ目は、教育関連企業からのオファーです。顧客企業の要望を引き出し、ニーズに合わせて研修の企画設計と実施(講師)まで行うという業務で、現業の経験が豊富な人材を会社は欲しています。要するに、Cさんがご自身でやってきた業務内容とノウハウを整理してパッケージ化し、人に教えるという仕事です。
Cさんがどれを選ぶかはこれからの話になりますが、自分の知っている世界の範囲だけで転職活動をしていたら、2つ目、3つ目の世界はなかなか視野に入ってこなかったでしょう。しかし、信頼できる第三者から「Cさんだったら、こんな分野もありますよ」とアドバイスを受けると、世界が一気に広がるのです。
Cさんには、自分が研修講師になるというキャリアは思いもつかなかったでしょう。ところが第三者である私から見ると、講師の道はこれまでの経験ときれいにつながっているのです。今後のことを考えると、製造業よりトレーニングの分野に移った方が、業界としての成長性は高いかもしれません。
どんな方向を選ぶかは本人次第ですが、将来を考えるときの可能性は狭いより広い方がよいに決まっています。米国では「よい医者、よい弁護士、よいヘッドハンターを持つことが人生を豊かにする要諦(ようてい)」といわれているそうです。
キャリアの範囲と可能性を広げるアドバイザーとしての観点からも、頼れるお抱えヘッドハンターを持つ意味は大きいのです。
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クライス&カンパニー 代表取締役社長
リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)
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