以上を基に、片山氏は開発迅速化のポイントを4つにまとめた。1つ目は「組織全体で問題意識を共有することと、迅速な意思決定」だ。
「なぜアプリケーション開発の迅速化が必要なのか、ビジネスゴールにひも付けて全組織で認識を共有統一することが重要だ。また、プロジェクトルームを設置するなど、ビジネス部門とIT部門のコミュニケーションを活発化させる施策もカギとなる。ビジネスとITの両方を理解している意思決定権者の設置も有効だ」
特にビジネス部門とIT部門のコミュニケーションについては、「ユーザーのフィードバックをすぐにアプリケーションに反映する」ことや、それを支える開発自動化ツール、テスト自動化ツールを積極的に採用することがポイントになる。
2つ目は「開発は本当に必要な要件に集中する」。システムの設計時には完全なシステムを求めるあまり要件を詰め込みがちだが、それでは開発期間・コストとともに膨らんでしまいがちだ。だが要件を絞れば、期間の短縮化、コスト・人的リソースもコントロールしやすくなる。
3つ目は「従来の手法に固執せず、新しい開発手法、アプローチを検討し、採用する」。4つ目は「作って終わりではなく、保守の迅速化も考慮して開発を行う」ことだ。
片山氏はこれらについて「開発期間の短縮化は全ての企業に必要だという問題意識が大切」と総括。「自社に適した開発迅速化のアプローチを検討し、差別化・革新レイヤーのアプリケーション開発を通じて、環境変化に俊敏に対応できる企業体質の構築を狙うことが大切だ」とまとめた。
以上のポイントを俯瞰すると、おのずとビジネスと開発・運用部門が連携するDevOpsというキーワードが想起される。だが開発の迅速化は、DevOpsの実践者として目を引いている一部Webサービス系企業だけに求められているものではない。特にビジネス部門とIT部門のコミュニケーションや、アプリケーションへの迅速なフィードバックについては、「開発と運用部門が同じ社内にいないと難しい」「SIerに開発を委託している場合は特に難しい」といった見方もあるが、今回の事例は開発ツールを有効に使って、そうした問題をクリアしている好事例といえるのではないだろうか。
DevOpsやアジャイルにしても、言葉の定義や一般的なプロセス、ルールに捉えられてしまうと、その本当の意義や目的を見失うことになりやすい。この点については、リーン開発を提唱したポッペンディーク夫妻がリーン開発の適用について述べた、「あるチームには薬でも、それが別のチームにとっては毒となる」といった指摘も思い出される。
参考リンク
最も大切なのはビジネスゴールであり、その達成のために自社に最適なプラクティスをどう導入し、どう実践するのか―― 今あらためて、既存の手法に縛られない“自社独自の開発アプローチ”が求められているといえるのではないだろうか。
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