ユーザーアカウントには、その「スコープ」(有効範囲)の違いに応じて「ローカルユーザーアカウント」と「ドメインユーザーアカウント」の2種類がある。
これはコンピューターごとに個別に作成されるユーザーアカウントである。ドメインに参加していないスタンドアロンのコンピューターを使う場合は、このアカウントでログオンして利用することになる。複数のコンピューターを持っている場合は、それぞれのコンピューター上でアカウントを作成しなければならないし、デスクトップ環境や設定なども共通化できず(OSやインストールされているアプリケーションなどの違いにより、何でも共通化できるわけではないが)、手間が掛かる。
これは、Active DirectoryドメインやWindows NTドメインなどで作成できるアカウントである。ドメインに参加しているコンピューター全体で共通して利用できるため、コンピューターの台数が増えても、どのコンピューターでも同じアカウント、同じパスワードでログオンできる。OSやインストールされているアプリケーションなどにもよるが、デスクトップ環境や設定なども自動的に共通化される。
ユーザーアカウントにローカルアカウントとドメインアカウントの違いがあるように、グループにも用途やスコープの違いにより、次のような種類がある。詳細についてはTIPS「グループ・アカウントの種類を知る」を参照していただきたい。
グループには、その用途や利用できる場所などに応じて、次の3つの種類がある。
セキュリティグループと配布グループには、そのスコープに応じて次の3つの種類がある。
Windows OSであらかじめ用意されているデフォルトのアカウント(組み込みアカウント)にはさまざまなものがあるし、OSのバージョンによっても変わるので、今回は省略する。必要なら以下のリンクなどを参照していただきたい。
「SID(Security ID)」とは、アカウントを識別するためにWindows OS内部で使用されている識別子である。ユーザー名をいくら変更しても、そのユーザーに割り当てられている権限やユーザープロファイル(ユーザー環境や設定など)が変わらないのは、このSIDが変わらないからである。ただしSIDはアカウントを削除すると消滅するため、たとえ後で同じ名前やパスワードでアカウントを作成しても、以前の環境は維持・復元されず、別のユーザーとして扱われる。SIDは管理画面のさまざまな場面で目にすることになるので(特にActive Directory関連で)、今後詳しく解説する。
ユーザーに割り当てられているSIDは、例えば「whoami /user」や「whoami /all」コマンドなどで確認できる。SIDについては、次のTIPSも参照していただきたい。
ここまでの説明で触れてきたように、ユーザーアカウントやグループアカウントの調査・確認には、コントロールパネルのユーザー管理ツールや「コンピューターの管理」ツールの他、コマンドプロンプトなら「net user」や「net localgroup」コマンドなどが利用できる。ドメインに参加しているコンピューターなら、「Active Directoryユーザーとコンピューター」管理ツールや「net user /domain」「net localgroup /domain」などで確認できる。
これ以外にも、WMICというコマンドラインツールなら、「useraccount」や「group」といったサブコマンドで一覧を取得できる。WMICの使い方については、次のTIPSが参考になる。
PowerShellなら「Get-CimInstance -ClassName Win32_UserAccount」「Get-CimInstance -ClassName Win32_GroupUser」などで一覧を取得できる。PowerShell自体の使い方については、次の連載記事が参考になる。
プログラムやバッチファイル、スクリプトなどでリモートのサーバーへ接続したり、リモートのリソースを使ったりする場合、ユーザー名とドメイン名、PC名をまとめて表現することがある。Windows OSではいくつかの方法があるので、用途やアプリケーションの使用などによって使い分けていただきたい。
ユーザー名の表記方法は「net use /?」コマンドで確認できる(TIPS「Windowsネットワークにおけるユーザー名とドメイン名の指定方法」も参照)。
C:\>net use /?
このコマンドの構文は次のとおりです:
NET USE
[デバイス名 | *] [\\コンピューター名\共有名[\ボリューム] [パスワード | *]]
[/USER:[ドメイン名\]ユーザー名] ……NTLM形式1
[/USER:[ドット付きのドメイン名\]ユーザー名] ……NTLM形式2
[/USER:[ユーザー名@ドット付きのドメイン名] ……UPN形式
[/SMARTCARD]
……(以下省略)……
これは最も基本的な表記方法である。ドメイン名(最大15文字のNetBIOS名)とユーザー名をバックスラッシュ記号で接続する。例えば「MYDOMAIN\USER01」のように指定する(大文字/小文字はどちらでもよい)。「NTLM(NT LAN-Manager)」形式とか「ダウンレベル」形式といい、最も古くから使われている形式なので、ほとんどの場合に問題なく利用できるだろう。
これはドメイン名の部分をFQDN形式のドメイン名(ドット表記のドメイン名)にした形式である。例えば「example.co.jp\user01」のように指定する。インターネット上のサーバーのFQDNドメイン名を指定する場合に使えるが、Active Directory上のアカウントを指定するなら、次のUPN形式を使うのが一般的だ。
「UPN(User Principal Name)」とは、ドメイン名とユーザー名を「@」で接続した、メールアドレスのような形式である。例えば「user01@example.co.jp」のように指定する。
これは少し特殊な使い方であり、どこでも使えるわけではないが、リモートデスクトップでログオンする場合などに、ログオン先コンピューター上のローカルなアカウントを簡単に指定する方法である。通常ドメインに参加しているコンピューターにログオンしようとすると、デフォルトではドメイン名が表示されていることがある。その状態で単にユーザーとパスワードを入力してログオンすると、ドメインにログオンしてしまう。だからローカルのコンピューターにログオンするなら、ローカルのコンピューター名を調べて、ユーザー名として「MYPC209AB334\user01」などと入力しなければならない。だがコンピューター名を知らない場合はこれは面倒だ。
このような場合は、ユーザー名欄の先頭に「.\」と入力する(「 .(ドット)」は自分自身を指し示す際によく使われる表現だ)。するとログオン先がドメイン名からローカルのコンピューターに自動的に切り替わる。後はユーザー名とパスワードを入力するだけでよい。
今回はユーザーアカウントについて解説した。次回はWindowsリソースの管理画面などでよく見かける、「ACL(アクセス制御リスト)」について取り上げる予定である。
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