ソフトウェアライセンスを確実に管理できていなければ、コンプライアンス違反や高額な違反金を請求されるリスクが高まる。今回はソフトウェアとライセンスの現状把握方法を詳しく解説する。
前回はハードウェア管理について解説しました。ハードウェアが把握できたら、次はソフトウェアを把握し、保有しているライセンスを調査します。ここが、IT資産管理の現状把握で最大の肝になる部分であり、IT資産管理の運用を左右するプロセスですので、なるべく詳細にお伝えしたいと思います。
筆者が推奨しているライセンス調査完了までの手順は次の通りです。
ソフトウェアには、さまざまなタイプがあります。保有しているライセンスの現状把握を行う際には、まず、「どのようなソフトウェアのライセンスを調査対象にするのか」を決定する必要があります。
規格(ISO/IEC19770-1:2012)では、これらの全てが管理の対象とされていますが、調査の方法も、管理の方法も、どのようなソフトウェアかによって全て異なります。また、そのソフトウェアが、WindowsやMac、Linux、UNIXなど、どんなOSに載っているのかによっても変わってきます。
こういったソフトウェアの調査においては、インベントリツールといわれるソフトウェアを利用することが一般的です。しかし、インベントリツールで比較的手間を掛けずに収集できるソフトウェアは、以下のものに限定されるケースがほとんどです。
なお、これらの他にも、レジストリやファイル名を指定すれば収集可能なソフトウェアもありますが、現状把握の段階ではどのようなソフトウェアが利用されているのか分かっていないので、この時点ではあまり有効な機能とはいえません。
以上のように、インベントリツールの持つ機能は限られたものではあります。それを念頭に置いた上で、現状把握ではいきなり「100%のソフトウェアの把握」を前提とするのではなく、この機能によって「収集可能な情報から把握していく」ことをお勧めします。
「ライセンスコンプライアンス上は、全てのソフトウェアと必要なライセンスを認識し、その保有状況と利用状況を把握することが大切だ」というのはその通りです。しかし、これまできちんと管理をしてこなかった状況から、全てのソフトウェアを把握することを前提とするのは、たとえ強力なマネジメントのコントロールがあったとしても非常に困難なためです。仮に可能だとしても、ただでさえ長くかかる現状把握に、さらに多くの時間を要することになるでしょう。
IT資産の保有状況・利用状況は日々変化し続けているため、現状把握は、どれだけ短い期間で完了させるかが肝になります。ですから筆者は、「現実的にできるところから手を付ける」ことをお勧めしています。
例えば、
1.Windowsマシンであれば、まずは「プログラムと機能」「プログラムの追加と削除」に表示される、「インストールされているソフトウェア」を把握する
2.Macが多い場合には、なるべくMacの情報も収集可能なインベントリツールを選定する
3.次に運用として、インベントリツールで把握できない“実行ファイル形式”のソフトウェアや、フォント・画像ファイル、LinuxやUnixなどを把握・管理するプロセスを持つ
4.その次に、対象範囲をPCやサーバーからスマートフォンやタブレットなどに拡大していく
といったイメージです。
特にスマートフォンやタブレットの管理については、最近では喫緊の課題として捉えられ、早急にその対策も含めて考えていきたいという要望が増えてきています。しかし、最初からあまり欲張らずに、まずはPCやサーバーを把握してから、次のステップとして検討することをお勧めします。
さて、長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
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