ヴイエムウェアは2014年中に、日本のユーザー組織を対象として、クラウドサービス「vCloud Air」(旧称vCloud Hybrid Service)を提供開始する予定だ。これはユニークなIaaSだといえるが、果たしてAmazon Web Services(AWS)などに勝つことができるのだろうか。
ヴイエムウェアは2014年中に、日本のユーザー組織を対象として、クラウドサービス「vCloud Air」(旧称vCloud Hybrid Service)を提供開始する予定だ。
このサービスは料金体系からしてユニークだ。ユーザーは仮想インスタンスではなく、リソースプールを購入する。リソースプールとは、演算機能については合計仮想メモリ量および合計CPUパワー(例えばvRAM 20GB、CPU 10GHz)、ストレージでは合計容量(例えば2TB)のことだ。ユーザーは事前に、あるいはオンデマンドで購入したリソースプールから、仮想インスタンスを切り出せるようになっている。
仮想インスタンスタイプという概念はない。メモリ、CPUパワー、仮想ディスク容量を、ユーザーが任意の値で組み合わせて、カスタムメイドの仮想インスタンスを作成できる。一般的なクラウドサービスが定食屋だとすれば、vCloud Airはバイキングを出す店のようなものだ。
ユーザーはさらに、稼働している仮想インスタンスを止めることなく、そのスペックを細かく変更できる。アプリケーションを稼働開始後に、メモリ量が足りないと判断したら、追加することができる。例えば財務アプリケーションへのアクセスが月末や期末に集中するなら、その期間だけメモリ、CPU、あるいは双方を強化し、アクセスが減少した時点で平常構成に戻すなどが可能だ。
vCloud Airは企業向けのサービス。Amazon Web Services(AWS)とはコンセプトが大きく異なる。それでもエンタープライズ顧客を獲得しつつあるAWSとは、実質的に競合することになる。そこで、米ヴイエムウェアのクラウドサービス担当バイスプレジデントであるマシュー・ロッジ(Mathew Lodge)氏に、「(ヴイエムウェアが)何を達成したら、それをAWSに対する勝利だと考えるか」と聞いてみた。同氏は次のように答えた。
「企業が、自社のIT戦略を進化させ、事業との整合性を強化する活動の一環として、パブリッククラウドを幅広く採用するようになったら、それが勝利だ。現在、企業のクラウド利用は、特定プロジェクト、特定のケースに限定されている。おそらく利用率は(仮想マシン数で)6%か、それより若干高いくらいだろう。これが50%に達したら、『幅広い採用』だと呼べる」。
もちろん、上の50%のできるだけ多くを、vCloud Airで動かしてもらいたいということだろう。これを実現したいのなら、ヴイエムウェアは少なくとも、AWSをはじめとする他社のクラウドサービスに比べて、vCloud Airがどのように優れているかを、欧米のみならず、日本国内で積極的にアピールしていく必要がある。
vCloud Airの企業向けクラウド市場におけるAWSに対しての優位性、およびヴイエムウェアがAWSに対して劣勢に立たされる可能性について、IT INSIDER No.34「ヴイエムウェアのクラウドはAWSに勝てるのか」にまとめました。ご一読いただければ幸いです。
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