あなたの価値を一番知っているのは、あなたではないヘッドハンター丸山の「いつか、あなたに逢いにいく」(8)(1/2 ページ)

餅は餅屋、宝石は宝石屋。客観的に価値を判断できるプロに任せる方がうまくいくことが多いのだ。

» 2014年10月27日 18時00分 公開
[クライス&カンパニー 丸山貴宏,@IT]
本連載 ヘッドハンター丸山の「いつか、あなたに逢いにいく」のインデックス

連載目次

終身雇用崩壊後の身の処し方

 前回はビジネスパーソンが「お抱えヘッドハンター」を持ち、活用しやすい状況が生まれつつあることを説明しました。しかしそれでもなお、「医者と弁護士、ヘッドハンターがより良い人生を生きるための3点セット」といわれる欧米のような状況とはまだ隔たりがあります。

 その違いは、解雇をめぐる環境にあります。日本よりも欧米の法律の方が企業の解雇権が強く、米国企業ではある日突然、欧州企業では1週間後、2週間後に解雇されることが起こり得ます。

 いつ解雇されるのか分からない欧米に対し、日本では解雇予告が必要で手厚い失業保険もあるので、解雇が欧米ほどは現実的な脅威にはなりません。そのため、米国やヨーロッパの被雇用者がいつ解雇されても対応できる準備をしているのに対し、日本では普段から準備している人はあまりいません。その違いが、恒常的なキャリアパートナーとしてヘッドハンターを活用するかどうかに影響しているのです。

 ところが日本も、ここ10年ほどで状況が変わってきました。

 以前のような日本型終身雇用慣行は2000年代前半、雇用を重視していた大手電機メーカーが大リストラをした時点を節目に崩壊したとされています。そのころ新卒で就職した人たちは現在、30代中盤に差し掛かっていますが、入社時に終身雇用慣行の崩壊を実感していたわけではないので「キャリアは会社が考えてくれる」「会社の言う通りにしていれば間違いない」という発想から抜け切れていない人が、まだたくさんいます。

 確かに会社や上司は目先のキャリアは考えてくれますが、中長期的な未来までは考えてくれません。上司でさえその会社にずっといられるとは限りませんし、もっというと、年功序列がなくなった職場では、上司にとって部下は将来のライバルであり、自分のことで精いっぱいなケースも多いからです。

 従って現代のビジネスパーソンは、何となく「キャリアは会社が考えてくれる」という発想から脱し、「自分のキャリアは自分で考える」ように考えを転換しなければならないのです。

 ただし、自分だけで将来のキャリアを考えようとしても、なかなかうまくいきません。人は限られた世間で限られた経験しかできないので、自分の置かれた状況を俯瞰(ふかん)して見たり、自分を市場の中に相対的に位置付けたりすることが難しいからです。外部の人間の意見を聞きアドバイスを受ける意味は、そこにあります。

個人の市場価値はプロでなければ分からない

 もちろん外部の人間のアドバイスを受けるからといって、他人にキャリアを任せきりにせよという話ではありません。

 キャリアの選択で最も大切なのは、自分の気持ちです。まずは(周囲の情報は関係なしに)気持ちを掘り下げていくことが必要です。「どのような志向を持っているのか」「好き嫌いや向き不向きはどうなのか」「今の会社に対する本当の気持ちはどうなのか」……。そういった要素は自分の中にぐっと入らないと分かりません。しかし大半の人は、いったん気持ちの中に入ると出られなくなってしまいがちです。

 ある程度まで自分で考えたら、後は外部のプロフェッショナルに聞いた方が効率的です。自分の思っていることが市場の相場や常識と合っているのか、実力や給料が市場価値としてどの水準にあるのかは、その道のプロの方が詳しいからです。

 例えば「一生懸命頑張っている割に、年俸がずいぶん安い」という不満のうち、「ずいぶん安い」の根拠は曖昧です。勤務している会社の中での査定や同僚との相対評価はできるかもしれませんが、それが市場全体ではどうなのかを一般のビジネスパーソンが判断するのは無理があります。専門家に聞くことが正しい情報を得るための近道なのです。

 そのときに助けとなるのがヘッドハンターであり、私たちをそのために使っている人もいます。

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