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» 2014年11月28日 19時00分 公開

OpenStack Summit 2014 Paris から見るOpenStackのアジア動向OpenStack最前線〜ユーザ会メンバーが持ち回りで語る「OpenStackのリアル」〜(3)(2/2 ページ)

[中島倫明/長谷川章博,日本OpenStackユーザ会]
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アジアのOpenStack事情

 アジア3カ国のユーザー会代表で行ったパネルディスカッション「User Group Panel: India, Japan, China」では、さまざまなテーマについて議論されました。ここでは議論に参加した視点から、アジアのOpenStack事情について紹介したいと思います。

日本とは異なる規模と運営

 まず目に付いたのは、中国、インドの拠点の多さです。日本では東京を中心に多くのエンジニアが集まっていますが、中国は、北京、上海、西安などを中心に、インドは、バンガロール、プーネ、ハイデラバードなどITが進んでいる地域が中心に、それぞれの拠点で別々の主催者が運営を行っているそうです。

 そのため、勉強会なども地域ごとに行っており、1回の規模は日本に比べ小さい(日本では1回で80〜100名、インド、中国では20〜30名)ですが、頻度は日本より多くなっています。

 一方で、シンガポールやベトナムなど、東南アジア地域や香港、台湾などでは講師を担う人員も不足しており、地元でけん引する企業の数と層が、そのままユーザー会の運営規模に反映されていることが浮き彫りとなっています。

国ごとに異なるOpenStackとの関係

 インド、中国ともにIBMやIntelをはじめとした、外資のIT企業が研究・開発機関として拠点を構えている地域から参加するケースが多いです。インドなどは、学生の参加も多いようで、OpenStack関連技術が単に学術分野で必要とされているだけではなく、外資企業での雇用も意識しているのではないかと推測されます。

 日本では、主に国内の案件需要を満たすようにメーカーやSIerが中心に参加していますが、インドでは、海外の需要を支える要員として開発やサポートエンジニア中心の参加者となっているのも特徴です。

 中国に関しては、外資企業での参加もありますが、国産ディストリビューションも複数あり、また、中国国内での大規模案件も散見されます。さらに、Huawei(ファーウェイ)などのハードウェアメーカーも海外のOpenStack案件に積極投資しています。ITサービスを国産化する傾向が強い中国にとってOSS、特にOpenStackのようにクラウド基盤技術に対して積極的な姿勢がうかがえます。

パブリッククラウドとOpenStack

 日本にいると忘れがちですが、アジアだけではなくEU各国もAWSを初めとするパブリッククラウドのロケーションが自国にあることはまれです。

 通信速度や自国でのデータ保存に関する考え方から日本以上にOpenStackをベースにした国内向けクラウド(パブリック、プライベート双方)がニーズとして高い傾向にあります。特に経済成長著しいアジア各国はOpenStackへの投資とともに自国のIT基盤を整備していく傾向があります。

 クラウドを構築、維持する技術は、今後の情報資源管理・保全上、重要なポイントになると思います。日本でもクラウドの普及に合わせ、意識が高まっていますが、今回のサミットを通じてより一層の必要性を感じた次第です。

ユーザー会は民主的であれ

 最後に、各国共通して言えることは、OpenStackのユーザー会は民主的であることです。特定の人や企業が運営を行うのではなく、複数の企業やさまざまな役割の人々がボランティアで参加しています。まさに今回のサミットでOpenStack Foundation COOのMark Collier氏が述べた「Distributed Power」(分散した力)のコンセプトに近く、この点もOpenStackコミュニティが活発である一因と思えます。読者の皆さんも些細なことでも構いませんので、ぜひOpenStackコミュニティに参加、支援いただけると幸いです。

「OpenStack Days Tokyo 2015」を2月3日、4日に開催!

 今回のコラムでは、日本とアジアにフォーカスし、その概要をお伝えさせていただきました。しかし、これは膨大な情報を発信するサミットの中のほんの一部でしかありません。カンファレンスのセッションは、こちらから動画で見ることができます。しかし、参加者が何に盛り上がり、どこに関心を向け、何をしようとしているか、といった雰囲気は、実際に現地の空気へ触れてみないと実感することはできないと思います。

 次回のサミットは5月にバンクーバー、そして10月には東京で開催されます。特に日本での開催は、海外出張のハードルが高い人にとってはとても貴重なチャンスです。日本でこれだけ大規模な国際ITイベントが開催されるケースはほとんどありません。

 OpenStack Summitは、参加が有償(300〜1000USドル。申し込み時期とパスのレベルによって異なる)と決して安くないですが、その対価を支払っても十分に価値があります。世界最先端の技術とそれを活用するための情報を得られるだけでなく、エンジニアにとっては、世界中の開発者と情報交換する機会を持つことができます。エンジニアの皆さんは、普段の業務では得ることができない新しい刺激を受け、必ずモチベーションがアップできることと思います。今のうちから、予算を確保してもらうために、上司に申請しておくのがおすすめです。また管理職の皆さまは、部下の方が参加したいと申し出たらぜひ快く承諾してあげてください。

 また、サミットに先駆け、国内では2014年に引き続きOpenStack Days Tokyo 2015を2015年2月3日、4日に開催します。このイベントでは、国内での事例や各社の最新OpenStackソリューションの発表の他に、ハンズオンなどさまざまなコンテンツが提供されます。入門編から上級編まで、幅広い内容が提供されますので、こちらもぜひご参加ください。

著者プロフィール

中島 倫明(なかじま ともあき)

日本OpenStackユーザ会会長(2012〜)

一般社団法人クラウド利用促進機構 技術アドバイザーを務めつつ、国内でのOpenStack/クラウドの普及・啓蒙・人材育成を行う。普段は伊藤忠テクノソリューションズに勤務し、オープンソースソフトウェア(OSS)を中心としたクラウド技術の企画・開発を主な業務としている。2014年5月『オープンソース・クラウド基盤 OpenStack入門』(共著/監修:中井悦司、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス刊)を執筆。


長谷川 章博(はせがわ あきひろ)

日本OpenStackユーザ会ボードメンバー

OpenStack Foundation公認アンバサダー

株式会社ビットアイル ビットアイル総合研究所 所長

外資系ソフトメーカーでサーバー仮想化及びクラウド技術のコンサルタントを経て、2011年ビットアイル総合研究所の立ち上げに参画。以降、総合研究所の所長としてデータセンターのファシリティからサーバー、ネットワークなどのITインフラに関わる技術調査、研究、開発を行っている。


特集:OpenStack超入門

スピーディなビジネス展開が収益向上の鍵となっている今、ITシステム整備にも一層のスピードと柔軟性が求められている。こうした中、オープンソースで自社内にクラウド環境を構築できるOpenStackが注目を集めている。「迅速・柔軟なリソース調達・廃棄」「アプリケーションのポータビリティ」「ベンダー・既存資産にとらわれないオープン性」といった「ビジネスにリニアに連動するシステム整備」を実現し得る技術であるためだ。 ただユーザー企業が増えつつある一方で、さまざまな疑問も噴出している。本特集では日本OpenStackユーザ会の協力も得て、コンセプトから機能セット、使い方、最新情報まで、その全貌を明らかにし、今必要なITインフラの在り方を占う。




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