全ての意欲がある人に学ぶ機会を与えたい――オンライン講座サービス「Udacity」の目指す教育とは何か。女性副社長インタビュー第2段。
全ての“テクノロジ”企業に、そして全てのプロフェッショナルに必要なものは教育だ――生涯学び続けるために必要な機会を提供することをミッションとして掲げているのが、コンピューターサイエンスを中心とした最先端テクノロジの講座を多く配信している大手MOOCプロバイダー「Udacity(ユーダシティ)」だ。
グローバルビジネスに明るい阿部川“Go”久広によるUdacityのビジネス開発担当副社長 Clarissa Shen氏インタビュー、後編では、新サービス「コーチング」や「奨学金制度」について、そしてシェン氏のプライベートについても伺った。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 教育機会の均等や職業スキルの提供への取り組みが世界規模で必要であり、Udacityがそれを目標にしていることは分かりました。ただ、素晴らしい内容の講座でも、最後まで修了する学生は実は少ないと聞いています。
「Nanodegree(ナノディグリー:Udacityが提供するオンラインミニ学位)」では有料でコーチング(コーチ役の人がライブオンラインで、学習に関するアドバイスやコーチを行い、学生が講座を継続して行う手助けをするサービス)を開始していますが、これは修了率を上げるための施策ですか?
Clarissa Shen氏(クラリッサ・シェン:以降シェン氏) そうです。2012年にUdacityを始めたときの修了率は決して満足のいくものではありませんでした。そこで学んだのは、「一人で学習している学生がつまずくと、抜け出すのは大変だ」ということです。
教育には、人間同士の交流が必要です。インストラクターや助言者が必要なのです。コーチングのサービスを取り入れたところ、修了率は劇的に改善しました。通常このようなオンラインコースでの修了率は、4〜7%だと思いますが、コーチングサービスを受けている学生ではそれが、50〜80%まで改善されました。もちろんクラスや難易度によって違いはありますが。
学生がスキルを身に付け、キャリアを磨く助けをするのが私たちの役目ですから、修了率の高さは大切な指標です。実際、授業をしっかり受け続けることは容易ではありません。新しいことを学ぶのは大変ですし、仕事を続けながらではなおさらです。困ったときにそばにいてサポートしてくれる人がいることは、学生にとってとても大切だと思います。
阿部川 コーチングは課金サービスであり、運営資金の一部になるとは思います。「高額課金し、たくさんもうけよう」という目標はありますか?
シェン氏 Udacityの目的は、多くの人々に実践的な教育の機会を提供することです。そのための障害となることはより少ない方がいいですし、学ぶために必要なことは極力行うつもりです。だからこそオンラインでの無償提供なのです。
私たちには「Students First(学生が一番)」というモットーがあって、オフィスの壁にも掲げています。その意味するところは、常に学生の立場になって考えること、彼らの目標は何で、それに私たちが応えられているか、Udacityのやり方は彼らの生活にあっているか、彼らはどうやって学習しているか、うまく学習できているか、ということです。
コーチングの目的はもうけることではなく、学生がクラスをより受けやすくすることなので、それが彼らの障害になってはいけません。費用は常識の範囲内で学生の負担にならない金額です。あくまでも学生の学習をサポートするためのものなので、サポートが必要なくなればすぐに終わっても構いません。一カ月で修了できる学生なら、その分だけしか請求はありません。
阿部川 コーチになるにはどのような資質が必要ですか、またコーチはどのように募集しているのですか?
シェン氏 私たちが求めているのは、まず教えることや人を助けることに情熱がある人です。次に、技術に関するバックグランドを持っている人。幸いなことに、私たちのミッションに共鳴してくれる技術者はたくさんいます。IT業界で現在仕事をしている技術者で、パートタイムやフルタイムでコーチを引き受けてくれている人も多くいますし、Udacityを終了した、いわば優秀な卒業生で、学生を助けたいと希望している元学生もコーチをしています。
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