ビジネスマンが生涯学び続けるためにテクノロジーは何ができるか――オンライン講座の雄「Udacity」のVP、クラリッサ・シェン氏に話を聞いた。
2012年の登場以来、利用者数を増やし続けている「MOOC(Massive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座)」。インターネット環境さえあれば、人気講師の最先端のコンテンツをいつでもどこでも誰でも無料で受講できるとあって、経済的な理由などで教育の機会を得られない人や、生涯学習を希望する社会人に人気だ。
受講者にとっては良いことづくめのMOOCだが、提供する事業者側は何を目的にサービスを展開し、どこに目標を据えているのか。アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、いま注目のグローバルIT企業トップに話を伺うインタビューシリーズ、第1回はMOOCの代表的な事業者であり、コンピューターサイエンスを中心とした最先端テクノロジの講座を多く配信している「Udacity(ユーダシティ)」のビジネス開発担当副社長 Clarissa Shen氏に、Udacityの理念、そして今後の展望などを伺った。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 本日はお時間をいただき有難うございます。「@IT」は、15年の歴史があるITに特化したオンライン専門のメディアです。
Clarissa Shen氏(クラリッサ・シェン:以降シェン氏) Udacityは、@IT読者のようなテクノロジ企業のリーダー、エンジニア、プログラマー、マネージャーといった方々に向けてサービスを提供しています。私たちもオンラインでサービスを提供しておりますから、@ITは大先輩ですね(笑)。こちらこそ、よろしくお願いします。
阿部川 そもそもUdacityとは、どんな目的で始められたサービスですか?
シェン氏 現在は、子どもがある一定の年齢になると幼稚園に入り、その後小学校から大学までがいわゆる教育です。その後仕事を始めて60歳前後で引退するまで、教育は一切行われません。これが教育の古いモデルです。しかし現在では、仕事のキャリアそのものが、一直線に続いているものではありません。
私たちは、教育は一生涯続くものだと信じています。人はいつでも教育を必要としています。次のレベルに自分を高めるために、あるいは新しい仕事をするために、ミニ教育やミニ学位といったものが、その都度必要になっています。技術の分野ではなおさらです。
私たちUdacityのミッションは、「学生に教育の機会を与え、教育機会だけではなく、人生を高めるような新しいキャリアの機会を提供する」ことです。特にテクノロジの分野はどんどん進化しています。一度学んだからといってそれで終わりではなく、常に新しいことを学び続けなければなりません。私たちは、学生が学ぶためにより適した方法を提供したいと考えています。
阿部川 Udacityは、生涯にわたって学ぶ機会を提供するものだということですね。
シェン氏 Udacityの学生の多くは、25歳前後から30代後半の現在仕事を持っているプロフェッショナルです。そんな彼らが新しい仕事に就いたり、新しいテクノロジに関して知識が必要な業務に就いたときには、どうしたらいいでしょう?
大学に入り直して、新しい学位や単位を習得すればいいのでしょうか。それには2〜4年の期間が必要です。家族もあるでしょうし、ローンなどの支払いもあるでしょう。会社を辞めて大学に入り直すことは難しいと思います。そのような方のためにUdacityは、とても実践的な内容の講義を提供しています。私たちの目的は、新しい機会が訪れたらUdacityで実践的な知識やスキルを学習してもらうことです。
仕事を続けながら学習も継続するのは簡単なことではありません。しかしとても大切なことです。簡単ではないからこそ私たちが存在しているのだと思います。Udacityという企業名は、英語の“audacity(大胆、ずぶといこと)”から来ています。新しいことにトライするには、勇気が必要だと思うからです。汗を流してしっかり取り組むことが必要になりますが、それをしない限り新しいことは学べません。
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