5人のメンバーで100分の会議をすれば、メンバー個々の分給×100分×5人分相当のコストが発生する。
チームのメンバーが相互に関わり合いながら仕事をする上で重視すべきものに「時間」があります。「時間が大切」なのは当たり前ですが、時間の重みをメンバー全員が本当に実感できているでしょうか。
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
有名な寓話(ぐうわ)を一つ紹介します。
ある日、母親が息子に言いました。「あなた名義の口座に毎日1万4400円の振り込みをしているのよ。それは何に使おうとあなたの自由。でも、その口座のお金は翌日には持ち越せなくて、使っても使わなくても毎晩、日付が変わる時刻に残高がゼロになるの。有意義に使いなさいね」
1万4400円は決して少ない額ではありません。レストランのディナーに2人で行けば、そこそこのものをオーダーできます。自由に使ってよいとなると、一生懸命使い道を考え、やりくりを工夫するのではないでしょうか。毎日意識してちゃんと継続して使っている人は、1年で500万円以上使えます。それに気付かない人との差は、「ちりも積もれば山となる」のことわざ通り、とても大きくなります。
1万4400円は、1日24時間=1440分の「1分」を「10円」に置き換えた金額です。誰でもこの世に生を受けた日から、毎日1440分の時間を受け取ります。時間は目に見えないし、当たり前のように使っているので、特にありがたみも感じず、無駄に使っても罪の意識を持たないものです。
人間関係において「貸し借り」や「取り引き」といえば、お金のやりとりをイメージしますが、会社では時間こそが貸し借りや取り引きの対象です。
リーダーがミーティングを招集すると、リーダーはメンバーから時間をもらったことになります。5人のメンバーから100分ずつもらえば500分。先ほどの換算であれば5000円分の価値のある打ち合わせにしないと、チーム全体にその分、損をさせたことになります。メンバーがサボって開始時間を遅らせれば、一緒にミーティングをしようと待っている同僚に、待たせている時間の合計分、損をさせることになります。
しかも現実では、メンバーの分給は1分10円では済みません。彼らの時給は600円どころではありませんよね?
皆さんは、自分の時給を計算したことがありますか? もともと時給で働いていればよく知っているでしょうが、年俸や月収の場合は、自分の1分にどれほどの価値があるのか、疎くなっているのではないでしょうか。
しかも実際には、給与明細に記載されている1.5倍以上の金額が、あなたに支払われています。社会保険や年金、退職積立金の会社負担分、通勤費以外の交通費、あなたの机の占めるオフィスの賃料、あなたが使う備品の数々、その他、目に見えないオーバーヘッドを会社は経費として支出しています。1分当たりの価値を計算してみましょう。
自分の時間が、そして相手の時間がいかに価値あるものか、リーダーだけでなく、メンバー全員に自覚してもらいましょう。打ち合わせの時間に5分遅刻したり、待ち合わせの時間に数分遅刻したりする人がメンバーの中にいませんか? わずか数分でも常習者を許さないよう、こと時間に関しては厳しく、チームで共通認識を育てましょう。
時間の価値をチーム全員で自覚する
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