会議の質を高めるために、リーダーが仕掛けるポイントITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(9)(1/3 ページ)

会議の5ステップ「巻き込み」「ぶつかり」「意味付け」「軸出し」「結び」、それぞれのステップでリーダーがメンバーをうまくファシリテートするためのポイントを解説しよう。

» 2014年04月08日 18時00分 公開

 会議は適切なファシリテートがあると、飛躍的に良い成果を出せます。前回は、会議のファシリテートに必要な5つのプロセスを紹介しました

会議のプロセス

  1. 巻き込み
  2. ぶつかり
  3. 意味付け
  4. 軸出し
  5. 結び

 今回はそれを踏まえて、プロセスごとにリーダーが行うべきポイントを解説します。

※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。

「巻き込み」段階のポイント

 この段階の目的は、メンバー全員に発言してもらい、参加意欲を引き出すことです。また、最初に提示された話し合いの目的を各自が理解しているかどうか確認するフェーズでもあります。

 「今、開発中の案件Bの作業が、最近スケジュール通りに進まない。どうすれば解決するか?」というテーマで、チーム内で話し合うとします。巻き込みフェーズではまず、メンバーに自由に意見を述べてもらうと良いでしょう。例えば、「なぜ進まないのかなあ。原因は何だと思う?」と質問を投げ掛け、原因について各自が思っていることを外に出してもらいます。

 みんなが活発に発言してくれれば問題ありませんが、そうではない場合は、リーダーが順番に指名していくとよいでしょう。「Aさんはどうかな。原因は何だと思う?」「B君はどう?」と、指名はするけれど、参加者に責任ある答えを求めるようなプレッシャーは与えず、自由に答えやすい雰囲気を心掛けてください。

 このフェーズでは、互いの意見を批判・評価するのは禁物で、できる限り活発に意見を引き出すことを目指します。意見を出してくれたメンバーに、「そうだね」「なるほど」と相づちを挟むと、スムーズに進行します。

 「他にどう?」と投げ掛けても意見がなかなか出ないときは、すでに出ている意見を広げていくような質問をします。例えば、A君が述べた「先月、運用チームへ引き渡した案件Xの手戻りが結構多くて、割り込みの作業で時間を取られるからだと思います」という意見をベースに、「さっきA君が、思い当たる原因を言ってくれたけれど、それに対してBさんはどう? 同じように感じる? それとも……」と話を関連付けつつ、他に意見を広げていくような質問をします。あるいは、「Bさんはライブラリアンを担当してもらっていますが、その立場ではどうですか?」と、1人1人の役割をちょっと意識するような質問の仕方も、視点が変わって良いでしょう。

 参加者全員に意見やコメントを発言してもらうことが、この段階での必要最低限の仕掛けです。ここでのリーダーの役割は「煽り役」です。

「ぶつかり」段階のポイント

 巻き込みフェーズで、メンバーが活発に意見を出し、「私もそう思います!」「それ、よくあるよね!」と各自がお互いに同意すると、そのまま結論へ急ぐことがよくありますが、ここではあえて、反対意見を募ります。「もしQなら、どうでしょう?」と、リーダーが質問します。

 例えば、「案件Xの割り込みの作業で時間が取られるから、という意見が出ましたが、仮に割り込みを全て断ったらどうなるでしょう?」とか「案件Xに専任で担当する人を決めたらどうかな?」と、一見ナンセンスなものでも、あえて深くかき回す目的で質問します。このぶつかりを実施すると、次の3つのメリットを期待できます。

  1. 隠された意見を表に出せる
  2. 提出された意見への理解を深められる
  3. 固定観念にとらわれる危険性を減らせる

隠された意見を表に出せる

 少し詳しく説明しましょう。メンバーの大部分が同じ気持ちであるように見えても、異なる意見を持つメンバーがおとなしい性格だったら、黙っていることが多いものです。それが実は正しい判断であるかもしれないのに、ここでその芽が摘み取られてしまうことになります。メンバー自身があえて反対意見を述べなくても、リーダーがあえて状況を変えて質問し、視点の異なる反対意見を出してもらうことで、おとなしいメンバーも意見を言いやすい雰囲気を作れます。

提出された意見への理解を深められる

 早々に意見がまとまると、安易に納得し、思慮が足りなくなることが往々にしてあります。「総論賛成、各論反対」が見抜けず、結論が出てから足並みがそろわないということが無いように、この段階でたくさんのイレギュラーケースを洗い出し、それに対する理解をみんなで深めていくことは、意義があります。

固定観念にとらわれる危険性を減らせる

 同じ環境で仕事をしていると、考え方が妙に似てくることがあります。自分のチームでは常識と思われていることが、他の組織では非常識であることもあり、それに全く気付かないこともあります。

 リーダーがあえて異なる立場を想定し、「先月号の雑誌で○○株式会社の不祥事を報道していたよね。あれをうちに当てはめると……」「例えば、自分が運用チームの立場だったら、その考え方は通用するかな?」と、メンバーの視点を変えると、見落としていた点が浮かび上がってくることがあります。固定観念に凝り固まってしまった集団を、ちょっと離れた位置から客観視し、自分たちの常識のゆがみをチェックすることも、ぶつかりフェーズを行う意義といえます。

 もしここで感情的な対立に進みそうなら、そもそもの話し合いの目的など、互いが共通に認識するポイントまでいったん話を戻すと、狭い対立点に固執して身動きがとれないような事態を避けられます。枝葉での議論を根元に戻すことで、違う視点に移れます

 以上の3つのメリットを引き出すために、リーダーはメンバーにカメラのファインダーをのぞかせるように、意図的にズームアウト、ズームインやフレームの移動を仕掛けてください。このフェーズでのリーダーの役割は「切り込み役」です。

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