エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は会議の「無駄」を省く必殺技を伝授する。
エンジニアが社会で生き抜くための考え方やノウハウを伝授する本連載。今回は会議の「無駄」が発生するロジックを解説し、タイプ別の無駄削減法を指南する。
筆者はサラリーマンとして13の会社に勤めてきたが、会議のない会社は1社もなかった。そして率直に言って、会議は嫌いだった。
他人の話を聞くのは退屈だし、時間の無駄だと感じるからだ。たいていの場合、組織で物事を判断する人は決まっている。彼(彼女)が必要な情報を集めて物事を決定して、それを後から知らせてくれたら、それで十分だ。
過去を振り返ると、会議中に居眠りして、いびきがうるさいと起こされたことが数回あるし、眠らないために会議以外のことで時間をつぶしていたことは数え切れないくらいある。
どうしても出席しなければならないが自分には関係ない会議に出る場合は、英文の記事や論文のコピーを持って行った。英文だと他人に見つかっても、会議と無関係なものであることがすぐには露見しないので、好都合だったのだ。また、筆者は将棋が趣味なので(棋力はアマチュア四段程度だ)、会議中に頭の中で将棋を指し始めることもあった。最初から玉が詰むまで指しても、会議は終わらない。その場合は戦型を変えて、もう一局指す。
ある投資運用会社(以降、運用会社)で働いていたころ、とある会議のコストを計算してみたことがある。その会社では1カ月に一度、運用する資金の運用方針について意見を交換する会議を行っていた。ある時数えてみたら、出席者は30人だった。
社長も若手社員も出席していたので、出席者の平均年収は1200万円くらいだと推定した。一年に250日出勤し、一日に8時間働くとして、年収を時給に換算すると、6000円になる。会議は1時間半かかったので、一人9000円。30人×9000円で27万円のコストが、一回の会議に掛かっている計算だった。
会社というものは、従業員一人が人件費の少なくとも2倍は稼いでいなければ成り立たないから、27万円を2倍すると54万円。資料作りのために若手社員数人が丸一日以上かけて資料を作っていたから、会議に掛かっているコストは実際のところ54万円よりも、もっと多いだろう。
その会議は滞りなく進み、数人の部長や課長クラスが資料に沿ってプレゼンテーションを行い、社長は全てに「感想」を述べた。得られた成果はそれだけだった。
会議の時間には会議以外の仕事が止まるわけだから、組織は会議を「例外」だと考えなければならない。
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