医療、ヘルスケアに関連したテクノロジビジネスやスタートアップの動向を、エンジニアやビジネスマンに対して紹介するイベント「Digital Health Meetup Vol.2」のパネルディスカッション「医療革命! 医師のIT活用とその未来について」の模様をお伝えする。
IoTやウェアラブル機器の普及で広まりつつあるヘルスケアIT。しかし、そこで集まる生態データは電子カルテや医療で生かされていないのが、現状だ。@IT特集「ヘルスケアだけで終わらせない医療IT」ではヘルスケア/医療ITベンダーへのインタビューやイベントリポートなどから、個人のヘルスケアだけにとどまらない、医療に貢献できるヘルスケアITの形を探る。
今回は、医療、ヘルスケアに関連したテクノロジビジネスやスタートアップの動向を、エンジニアやビジネスマンに対して紹介するイベント「Digital Health Meetup Vol.2」の講演「医療革命! 医師のIT活用とその未来について」の模様をお届けする。
前回紹介した「医療政策の動向から読み解く、これからの医療・介護業界」に続いてのセッションでは、現役の医師や、医療関係のサービスを展開するベンチャー企業の経営者らによる「医療革命! 医師のIT活用とその未来について」と題するパネルディスカッションが行われた。
ディスカッションはまず、モデレーターの大室氏があらかじめ用意したキーワードの中から、会場の参加者が1つを選び、そのテーマについてパネリストが意見を述べるという形で進められた。
最初に選ばれたテーマは「医師会」だ。医師の職能団体である「医師会」は、一般的なイメージとして医療業界において絶大な影響力を持っていると捉えられているのではないだろうか。
モデレーターの大室氏は「勤務医の中には医師会に所属していない人も多く、実際には開業医によるギルド的な性格が強い」と説明する。しかし、他業界から医療やヘルスケアに関するビジネスで参入を検討している企業にとって、「医師会」の業界における実際の影響力がどのようなものなのかは興味深いテーマに違いない。
実際にクリニックを立ち上げた経験から「(医療機関を開業する場合)医師会に入ることによるメリットはあるので入った方がいいが、気を使い過ぎる必要もない」と話すのはメディヴァの大石氏だ。
「本当に患者の立場に立った医療サービスを提供する場合、医師会のお達しに従ってやっているとできないんですね(笑)。夜間の診療時間延長やカルテ開示については反対もありましたし、その点での摩擦はありました。ただ、『患者にとって良い医療』というものを考えて実践していれば、地域社会の中で認めてもらえるようになり、それに伴って医師会の中でも評価してくれる人、支援してくれる人は出てきます」(大石氏)
メディヴァは、主に医療機関や行政機関に向けたコンサルティングを中心に、在宅医療や地域包括ケア関連の支援、ヘルスケアサービスの開発、運営を行っているが、特長となるのは自らも複数のクリニックを経営しており、そこでの実践内容をベースとしたコンサルティングやオペレーション支援を提供している点だ。
実際の医師が提供する情報を元にしたオンライン病気辞典サイト「MEDLEY」において医療情報配信サービスを提供している豊田氏は、サービス立ち上げ時に医師会所属の医師らと話をする中で「(一般に思われているほど)医師会は閉鎖的な組織でもない」と感じた。
豊田氏によれば、医療情報の提供サービスについては、かつて医師会においても『やっていかなければならない』という話が出ていたとのこと。ただ、その試みに対し、強くコミットできる人が少なかったことや、実現のためのテクノロジ、スピード感を持てなかったことが理由で実現には至っていなかったという。
「そうした経緯もあって、信頼できる医療情報を出していくのであれば、(業界外の企業による取り組みであっても)積極的に支援したいという医師会所属の医師も多いのです」(豊田氏)
サイバー・バズの高村氏は、2013年から、ヘルスケア関連の口コミサイトである「Doctors Me」を展開しており、ピジョンやライフネット生命保険との連携など、業域を拡大している。「これまでのサイト運営の中で、医師会などからのネガティブな反応は特になかった」という。一方、「今後は病院の検索や口コミについても掲載していくことを考えており、そうなるとまた何らかの反応があるかもしれませんね」と話した。
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