しかし転職1.0によるマッチングでは、企業にとってもエンジニアにとっても最良の選択とはならないケースが増えてきました。エンジニアも企業も、転職という一大イベントを乗り越えてマッチしたはずなのに、あっという間に「こんなはずじゃなかった……」となる。
企業からすると、採用したエンジニアが思ったように活躍してくれなかったり、すぐに辞めてしまったりする。エンジニアにとっては、仕事の内容が思っていたものと違ったり、働きづらい環境だったりする。そんなミスマッチの話は、残念ながら頻繁に聞こえてきます。
どうしてこうなった?――原因を考えてみると、転職サービスのビジネスモデルがエンジニアの幸せにも企業の幸せにもマッチしていなかったのでは……という仮説にたどり着きました。
転職サービスの主な収入源は、企業がエンジニアを採用したときに支払う手数料(採用されたエンジニアの年収の30%程度)です。一見すると妥当な仕組みのようですが、エンジニア視点での「入社した後、やりがいのある仕事ができるか」、また企業視点での「採用した後、活躍してくれるか」という点について、十分なケアがなされていない場合が多いようです。
エージェントはあくまでも「転職のプロフェッショナル」であり、ほとんどは「ソフトウエア開発のプロフェッショナル」ではありません。企業からの要求やエンジニアの意向を技術的な側面から正しく把握し、お互いに最適なマッチングを提案する……本来はそういう存在であってほしいのですが、残念ながらそこまでの知識や経験を積んだエージェントはとても貴重である、というのが実態です。
まとめると、「ITのプロフェッショナルではないエージェントが採用の瞬間をゴールとしてマッチングを行う」システムが、転職1.0の限界として顕著になってきたということです。
前回の連載では、転職サービスに依存せず、ソーシャルなつながりを活用して転職することを「転職2.0」として紹介しました。IT勉強会に行って発表したり、技術的な内容をブログに書いたり、GitHubでコードを公開したり。そんな日ごろのアウトプットをアピール材料にして、直接求人に応募したり、逆に企業から声をかけられたりといったルートでの転職活動です。
また、SNSなどでのつながりが転職に結び付く「ソーシャル転職」や、従来のエージェント型とは違う取り組みをしている転職サービスも紹介しました。このようなルートでの転職も、「転職2.0」の事例としてだいぶ定着してきたようです。
こうして振り返ってみると、3年前は「転職2.0」のベータテスト期間だったのかもしれません。そう考えると、菌類にはなかなか先見の明があったと言えましょう(自画自賛 その3)。
しかし時代はさらに変化していきます。この連載はこれから、バグフィクスやブラッシュアップを経て正式リリースされた「転職2.0」をキーワードに、エンジニアを採用しようとする企業や転職サービスの取り組み、転職したいエンジニアを取り巻く環境、そして優秀なエンジニアが働きがいのある企業で存分に活躍するために、双方が取るべき戦略についてお話しします。
菌類もエンジニアです。エンジニアとしてこの先生きのこるための生存戦略を、皆さんも一緒に考えていきましょう。
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