EMCジャパンの製品戦略および新製品発表会では、XtremIO 4.0の提供開始がアナウンスされた他、新たにグループに加わったVCEの新製品も。新プロジェクト「Project CASPIAN」にも注目したい。
2015年6月25日、EMCジャパンが製品戦略説明会を実施、新製品の発表も行った。2015年5月に米EMC主催のイベント「EMC World 2015」で発表された内容を踏まえ、日本市場での展開を示した形だ。
同社ストレージ製品戦略は、米IDCと共同で毎年調査しているリポート「Digital Universe」での「2020年には、70億の人々、300億のデバイスがネットワークに接続し、44ゼタバイトのデータが生まれる」という予測が基になっている。具体的には、「2.5」「3.0」と定義する二つのITシステム基盤が扱うデータをカバーする製品ポートフォリオが挙げられる。
「3.0」は“第三のプラットフォーム”として、米IDCが定義したIoT、非構造化データなどで構成される新しい種類のデータ群を支えるITシステム基盤を指す(関連記事)。この3.0との対比で「2.0」とされるのが既存の基幹業務アプリケーションを支えるITシステム基盤だ。ここで、EMCが「2.5」としているのは、既存の基幹業務アプリケーション群のクラウドへの移行、3.0プラットフォームと接続可能なものへの変革を前提としているため。いわば、既存のシステム環境を3.0的なものと接続できるように改変していくものとして定義されている。既存のIT投資を生かしながら、多様なアクセスを受け付けられる環境にデータを再配置していこうということだ。
このあたりの直近のEMCの製品戦略については、先のイベントリポートで紹介した通りだが、日本市場では幾つかの製品がこの日、提供開始になっている。まずはこれらを整理しておこう。
オールフラッシュアレイ専用の独自OS「XIOS」を搭載したXtremIO 4.0は、40Tバイトの「X-Brick」を搭載したモデルの販売を開始する。X-Brickとは、6Uサイズのストレージコンポーネント。新モデルでは40TバイトのX-Brickを最大で8台まで拡張できる(合計320Tバイト)。これに「平均で6倍程度の重複排除率を考慮すると、1920Tバイトのデータを格納できる計算」(大塚氏)になるという。また、無停止、パフォーマンス劣化なしでの容量追加、データの自動再配置も実現しており、常に「一ミリ秒以下のパフォーマンス」(プレスリリースより)を維持できるとしている。
また、XtremIOが持つコピーデータ管理機能については、VMwareやOracle Database、Microsoft SQL Server、Microsoft Exchangeなどの運用管理ツールとも統合できるため、多様な運用プロセスの自動化も可能だという。
Software Defined Storageコントローラー「ViPR」では、ソースコードを「Project CoprHD(カッパーヘッド)」としてGitHub上で公開、ストレージアクセスのための情報を広く他ベンダーに提供している。「多様なストレージ製品との接続を一社のみでサポートし続けるのは不可能」(飯塚氏)であることから、オープンソースコミュニティのエコシステムを活用しようという狙いだ。
EMCでは、ViPR Controllerの機能強化版のリリースも予定しており、2015年第三四半期にはOSSコミュニティに公開するとしている。ライセンスは、Mozilla Public License 2.0。これにより、ViPRのAPIを活用したインフラ調達用の「カタログ」開発や運用ワークフローの自動化を各自が(あるいは各ベンダーが独自に)自由に開発できる環境を用意する。ViPR自体は多様なストレージシステムと接続できることから、「マルチベンダーのストレージ向けの単一オープンなコントロールプレーンとして機能する」としている。
EMCでは2014年10月にVCEをグループ配下に迎え入れることを発表していた(日本法人はVCEテクノロジー・ソリューションズ)。会見では、2015年4月にVCEのジャパン カントリーマネジャーに就任した西村哲也氏が登壇、ScaleIOを搭載したフルラックの「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー」製品「VxRackシステム」を発表した。2015年第三四半期をめどに受注を開始するとしている。
コンバージドインフラストラクチャーは「垂直統合型」とも呼ばれる、サーバー/ストレージ/ネットワークなどを一つのラックに収めたサーバーシステム。検証済みの構成で出荷されるため、すぐにシステム立ち上げが可能だ。
同社ではCisco UCS、VNXなどで構成する「vBlocks」をコンバージドインフラストラクチャー製品として提供してきた。こうしたコンバージドインフラストラクチャーに対して、同製品は「ハイパー」の名を冠する通り、スケーラビリティが高い構成になっている。
今回発表されたVxRackシステムは、ScaleIOを採用しており、1000台以上のサーバーまでスケールさせられる点、VMware ESXiだけでなく、KVMにも対応、ベアメタルプロビジョニングの機能も盛り込んでいる点が特徴だという。スイッチにはシスコ・システムズのNexusを採用、運用監視にはVMware vRealizeもオプションで導入可能。
「EMC World 2015」でひときわ注目を集めたのが、「DSSD」だ。2015年度中にリリースされる予定であることから、会見でも詳細が示された。「EMC World 2015」で初披露された際のリポートでその実装詳細を紹介しているので、引用しよう。
独自設計のフラッシュメモリモジュールは、それぞれ512のNAND素子を内蔵し、PCIe接続インターフェースを2つ備えている。一般的なSSDと異なり、メモリモジュールにはコントローラーを搭載せず、メディア管理やウエアレベリングなどの処理は、DSSDが別途搭載しているCPUボードで実行している。これにより、メモリモジュール単位ではなく、装置全体としてNANDメモリの性能を最大限に引き出し、その利用を最適化しているとする。NANDメモリへのI/Oの高度な並列化が、DSSDの高速性の大きな要因となっている。
DSSDは、NANDメモリを多数搭載し、サーバーとPCIeで接続するオールフラッシュ装置。「SAP HANAのようなインメモリデータベースでの利用に適している」(大塚氏)という。
DSSDはブロックストレージとして扱える他、オブジェクトストレージ的にも扱えるため、APIを介してのアクセスが可能。また、Apache Hadoopで使われるファイルシステム「HDFS」は「DSSDプラグイン」を介してネイティブアクセスも可能だという。
この他、興味深いプロジェクトとして「ベールに包まれた」状態で紹介されたのがEMCの中で構想されている“Project CASPIAN”だ。こちらもEMC World 2015でデモが行われていたもの。
フルラックの「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー」になるようだが、既存製品より、オープンな環境との接続やスケール性を意識したプロダクトだという。具体的には、IaaS構築ソフトウエアの標準となりつつあるOpenStackを使ったインフラ構築・運用に最適化した構成になると予想される。OSSプロジェクトとしてスタートした「CoprHD」と同様、オープンなエコシステムのメリットを享受する製品になるようだ。
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