生まれ変わる日本オラクル、クラウドソリューション販売体制を強化“POCO”って何だ?

30年の節目を第二創業期と位置付けた“新生”日本オラクルが新年度事業戦略を発表。クラウドトータルソリューション提供企業に生まれ変わろうとしているようだ。

» 2015年07月01日 12時49分 公開
[原田美穂@IT]

 2015年6月30日、日本オラクルは新年度の事業戦略説明会を開催した。日本オラクルは創業30周年を迎えるに当たり、2016年度を「第二創業期」と位置付けている(日本オラクルは6月を決算期にしているため、2015年7月からが2016年度)。

全く新しいチャレンジ「POCO(ポコ)」に見るクラウド推進の4軸

 事業戦略発表に登壇した日本オラクル代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏は、「ラリー・エリソン氏やマーク・ハード氏とのミーティングの中で『日本オラクルはこれからまったく新しいことにチャレンジしてほしい』という話があった」(杉原氏)という戦略策定時のエピソードを語った。

日本オラクル代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏

 この日発表された新年度の事業戦略は、いままでの日本オラクルと何が違うのか。杉原氏いわく、2016年度の日本オラクルの重点施策は「POCO(ポコ)」。POCOとは「The Power of Cloud by Oracle」の略称。前年度もオラクルはクラウド事業を推進する、と表明していたが、今年度はさらにそれを推し進める形になるようだ。杉原氏によると、POCOの軸は四つ。「SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大」「システム事業の拡大」「エンタープライズ営業の強化」「地域ビジネス成長に向けた支社体制の再編と拡充」だ。それぞれ詳細を見ていこう。

SaaS/PaaS/IaaS事業の拡大

 日本オラクル内の組織を改編し、ソリューション単位で選任組織化する。併せて、営業サポート担当者を増員してオラクルダイレクトのサービスを強化する。Oracle Cloud World 2015でも話題になっていた日本国内でのデータセンター開設も進める。

システム事業の拡大

 引き続き安定稼働を担保するシステムを、オラクル社の製品で提供できる体制を強化する。Oracle Exdata、Oracle ZFS Applianceなどのエンジニアドシステムズ製品群の販売強化。特にストレージ領域を強化し、Oracle ExadataとOracle ZFS Applianceを組み合わせた提案も推進する。「オラクルは“クラウドだクラウドだ”と浮かれているわけではない。クラウド事業を強化すればそれだけ信頼性、性能、キャパシティの面で優れたハードウエアが必要になる。ハードウエアの技術開発への投資を継続する意図はここにある」(杉原氏)と、システム事業がクラウド事業にとって重要であることを強調した。

エンタープライズ営業の強化

 POCOでは直販営業力の強化も掲げる。日本オラクルとして、グローバル企業における拠点システム立ち上げの支援体制も強化していくという。海外拠点設立や統廃合など、地域を問わず企業が戦略的に拠点を立ち上げる際に、クラウドなどを活用したシステム立ち上げの支援体制を強化するとしている。

 「特にグローバルで展開する製造業系企業に対しては、この“POCO”を推奨できると考えている。事業部門が持つ課題に対して適切に提案できるよう、各業界や業務が持つ課題を深く研究して提案していく」(杉原氏)

地域ビジネス成長に向けた支社体制の再編と拡充

 「国内市場の売り上げのうち、都心部以外ではまだ市場開拓の余地がある」(杉原氏)として、地方へのクラウドを軸にした販売体制を強化する。エンジニアドシステムズを使った各種ソリューションをクラウドとして提供できる体制が整いつつあることで、従来よりもオラクルが提案するソリューションの市場が拡大することを見込んでいる模様だ。

 POCOに向けて組織体制も一新、パートナー事業を取りまとめる「アライアンス事業統括」および「エンタープライズ営業統括」、クラウド/オンプレミスを問わずデータベースやミドルウエアを提供する「クラウド・テクノロジー事業統括」や、SaaSアプリケーション販売を推進する「クラウド・アプリケーション事業統括」、ハードウエア販売を推進する「クラウド・システム事業統括」を組織する。加えて、杉原社長直轄の「クラウド事業戦略室」「グローバル事業戦略室」も置かれる。

ストレージサービス価格でも優位だが、それだけではない

 2015年6月22日(米国現地時間)、米オラクルが発表した「Oracle Archive Cloud Storage Service」は、予告していた通り、Gバイト当たり0.001米ドル/月と、AWS(Amazon Glacier、Gバイト当たり0.011米ドル/月)よりも低価格で提供される、クラウドアーカイブストレージサービスになる。

 「オラクルは、新興ベンチャーのようなSaaSやIaaS“だけ”の企業ではない」(杉原氏)として、この会見でもOracle Archive Cloud Storage Serviceの説明があった。

 オラクルからすると、エンタープライズシステム全体が、何らかの形でクラウドを利用することが前提となったいま、アプリケーションやミドルウエア、ハードウエアを含めたエンタープライズシステム全体を提供する中で、インフラサービスやSaaSは1ピースにすぎない。Primaveraのような業界・業務特化型ERPパッケージを多数獲得してきたオラクルからすると、サーバーノードやストレージの「単価」はさほど重要ではなく、ソリューションを展開する中での一要素となる。全体から見るとストレージサービスで収益を上げる必然性はさほどないと考えられる。

 加えて、ストレージに関しては自社データセンターに自社ハードウエアを供給可能であるため、「規模が拡大すれば」という条件付きになるが、単純な価格競争面では優位となることが予想される。これは、ストレージだけでなく、自社エンジニアドシステムズを利用したIaaS展開全般にいえることだろう。

国内企業でもPaaS採用に向けた検証がスタート、SaaS人材は200人獲得を目指す

 「Oracle Cloud World 2015」で登壇した米オラクル CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)のラリー・エリソン氏は、Oracle HCMなどのSaaS事業、Oracle Cloud Platformサービス群によるPaaS事業を積極推進すると語り、現在のオラクルの「競合はIBMでもSAPでもなく、セールスフォースとAWS」であるとしていた。また、これを受けて日本オラクルでもOracle Cloud Platformの選任チームを組織し、技術者育成に取り組むと発表していた。

 その成果を示すように、会見当日は東京ガスグループにおけるOracle Cloud Platformのグループ基盤への導入に向けた検証がスタートしたことも発表された。検証しているのは、Oracle Cloud Platformサービス群のうち、アプリケーション実行基盤「WebLogic Server」のPaaS版「Oracle Java Cloud Service」およびRDBMS「Oracle Database」のPaaS版「Oracle Database Cloud Service」、開発環境「Oracle Developer Cloud Service」。検証は、東京ガスグループ全体のシステム基盤整備を推進するティージー情報ネットワークが行っている。同社では、今後、モバイルバックエンドサービス「Oracle Mobile Cloud Service」も採用を検討しているという。

 この他、サッポロビールにおける「Oracle Marketing Cloud」の採用、リクルートライフスタイルにおける「Oracle Service Cloud」の採用も同日発表となった。

 SaaS事業では、Oracle Marketing Cloud、Oracle Service Cloudの他、「Oracle HCM Cloud」「Oracle ERP Cloud」「Oracle EPM Cloud」「Oracle Sales Cloud」の顧客獲得を目指し、200名規模の人員を新規に採用予定だという。

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