情シスはビッグデータやUIプロトタイピングをどのように生かせばビジネス拡大に寄与できるのか特集:Biz.REVO〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜(番外編)(1/2 ページ)

2015年7月2日にオープンストリームおよび豆蔵による共催セミナーが開催。その模様から、情報システム部門がビッグデータやUIプロトタイピングを活用して「ビジネスに寄与するシステム開発」を行う効用を考える。

» 2015年07月30日 05時00分 公開
[吉村哲樹@IT]

関連特集:Biz.REVO−Business Revolution〜開発現場よ、ビジネス視点を取り戻せ〜

市場環境変化が速い近年、ニーズの変化に迅速・柔軟に応えることが求められている。特に、ほとんどのビジネスをITが支えている今、変化に応じていかに早くシステムを業務に最適化させるかが、大きな鍵を握っている。では自社の業務プロセスに最適なシステムを迅速に作るためにはどうすれば良いのか?――ユーザー企業やSIerの肉声から、変化に応じて「ITをサービスとして提供できる」「経営に寄与する」開発スタイルを探る。

本特集、前々回の「新しいツールに飛び付きがちな技術者よ、ビジネスマンとしての基本を軽んずべからず」では、開発者がビジネス視点を持つことの重要性や、ビジネス視点を持つために必要な心掛けなどをお伝えし、前回の「ロジカルシンキングは必須。変化に強い技術者になるには」では、ビジネス視点を持った開発者像に少しでも近づくには具体的に何をすればいいのか? SI企業の育成施策の事例を聞いた。

本リポートで紹介するセミナーは、開発者ではなくユーザー企業の情報システム部門が主な対象となっているが、「開発者がビジネス視点を持つ」のとは逆に、「情報システム部門がビッグデータやUIプロトタイピングを活用してビジネスに寄与するシステム開発に携わる」ことの有効性について、開発者にも参考にしてほしい。


オープンストリーム 代表取締役社長 吉原和彦氏

 2015年7月2日、オープンストリームおよび豆蔵による共催セミナー「ビッグデータ時代の今、情報システム部門に求められるイノベーション〜情報システム部門が主導権を握る為に必要な戦略的な業務革新の進め方〜」が開催された。冒頭の開会あいさつに登壇したオープンストリーム 代表取締役社長 吉原和彦氏は、セミナー開催に至った背景について次のように説明した。

 「ビジネス環境の変化スピードが増す一方の現在、多くの企業が急激な環境変化に対応すべく、事業部門主導で業務改革を進めている。豆蔵もオープンストリームも、そうした企業の支援を数多く手掛けてきたが、その過程において情報システム部門が果たすべきミッションについて思うところが数多くあった。そのため、今回この場を借りて情報システム部門の方々にわれわれの経験をフィードバックし、これから本格的なビッグデータ時代を迎えるに当たって何らかの気付きやヒントを得ていただければと考え、本セミナーの開催に至った」

ビッグデータ時代におけるシステム企画で情シスがなすべきこととは?

 続いて、豆蔵 IT戦略支援事業部 第1グループ長 シニアコンサルタント 金子聖史氏が登壇し、「ビッグデータ時代の要求開発〜貴社の要求を具体化します〜」と題した講演を行った。

 「要求開発」とは、ビジネス要求からシステム要求を正確に導き出すために豆蔵が独自に開発したメソドロジ。これまで多くの企業で成果を上げてきたが、金子氏によれば「ビッグデータ時代になると、これまでのシステム企画・開発になかった新たな課題が持ち上がってくる」という。

うまくデータを活用できないパターン(金子氏の講演資料より)

 「ビッグデータを活用したシステムの企画・開発に当たっては、従来のシステムとは異なり企画立案と投資効果の内容がなかなか見えず、ぼんやりとしている。そのため、まずはこの両者をシステム企画のフェーズにおいて具体化し、はっきりさせる必要がある」

要求開発ビッグデータ型(金子氏の講演資料より)

 そのために豆蔵では、三つの独自アプローチを提唱しているという。

 一つ目が「要求開発キャンパス」。これは、要求開発の手法を使って遂行した過去のプロジェクト成功例の中から、共通した成功パターンを抽出し、それを基にプロジェクトの成果物のフォーマットを定義したもの。結果や成果が見えにくい上流工程において、「何をやればいいか」というフレームワークを提示することで、従来は曖昧になりがちだったビッグデータプロジェクトの企画立案フェーズにおいて、要求事項を具体化できるようになるという。

 二つ目のアプローチが、「豆蔵データディスカバリー」と呼ばれる豆蔵独自のシステム企画のメソドロジ。従来のように、プロセスの設計を行ってからそれに既存のデータを当てはめたり、あるいはすでに保有しているデータを基にシステムを設計したりするのとは異なり、「データの取り込み/加工」と「画面設計」を繰り返す反復型アプローチを採用することで、興味のあるデータを随時取り込んでいきながら段階的に効果を検証していく。

 従来のアプローチと比べ、データの追加や検索・評価軸の切り替えが柔軟に行え、かつ短期間・低コストで検証が可能なため、ビッグデータ時代のシステム企画には極めて適した方法だという。

豆蔵データディスカバリーの全体像(金子氏の講演資料より)

 そして三つ目のアプローチが「豆蔵トレーニング」と呼ばれる各種の教育メニューだ。金子氏は、「ビッグデータ時代に即した要求開発を行うためには、情報システム部門の人材の底上げが不可欠だ」と述べる。

豆蔵 IT戦略支援事業部 第1グループ長 シニアコンサルタント 金子聖史氏

 「かつて“守り”のIT投資が主流だった時代には、情報システム部門は経営層の『コスト削減』や事業部門の『業務効率化』といった具体的な要請に応えることが主だったミッションだったので、システムの企画プロセスも分かりやすかった。しかし“攻め”のIT投資が叫ばれるようになった今日では、これまで情報システム部門が意識したことがなかった『売り上げ向上のためのIT』といった新たな要請に応えていく必要が出てきた。

 また、ビジネス向けのパブリッククラウドサービスが普及し、事業部門が情報システム部門を通さずに直接クラウドベンダーと契約するケースも増えてきた。こうした状況下でシステム部門がビジネスに寄与するためには、経営層や事業部門に自ら積極的にシステム企画を提案できるようにならなければいけない」(金子氏)

 豆蔵トレーニングでは、ビッグデータを使った、より質の高いシステム企画が行えるようになるための各種トレーニングサービスを用意しているという。具体的には、e-Learningによる事前学習とグループディスカッション、そして実際にツールを使った実習によって高い学習効果を図るカリキュラムが組まれている。また実習においては、ID-POSや気象データなど社外のオープンデータも積極的に活用し、より実践的な学習ができるよう工夫が凝らされているという。

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