米Amazon Web Services(AWS)が2015年10月に「AWS re:Invent 2015」で発表した「AWS IoT」は、デバイスとサービスの間の分離を特徴とする。IoTデバイスはできるだけシンプルなメッセージのやりとりに徹し、AWS上の関連サービスの活用により、クラウド側で各種のアプリケーションを迅速に開発できるようにする仕組みだ。
米Amazon Web Services(以降、AWS)が2015年10月に開催した同社の年次イベント「AWS re:Invent 2015」(以降、re:Invent 2015)で、「AWS QuickSight」とともに発表の目玉となっていたのは「AWS IoT」のβ提供開始だ。サービス提供開始リージョンには東京も含まれている。
このシンプルなネーミングのサービスは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスをAWSや他のIoTデバイスに接続し、情報のやり取りができるようにするサービスだ。IoTデバイス側でのAWS IoTへの対応を実現する「AWS IoT Device SDK」と、モノからの接続を管理し、そのメッセージをAWSの各種サービスや他のモノに送り届けるとともに、場合によってはサービス側から命令を送り届けるための、AWS側での各種サービスで構成されている。
AWSはre:Invent 2015で、温室内のセンサーが取得した情報に基づいて、この温室のファンの電源を自動入切するなどの適用例を展示した。
面白いのは「AWS IoT Button」。これはAWSがre:Invent 2015で限定的に配布していたボタンで、米アマゾンの「Dash Button」のハードウエアを使い、AWS IoTを活用して、簡単なIoTアプリケーションの開発を体験できるようになっている。例えばこのボタンで、動画配信サービス「Netflix」が配信するビデオの遠隔操作やピザの注文、家族への緊急連絡、フィリップスの「Hue Light」の点滅など、想像力次第でいろいろなことが実現できるという。
AWS IoT Buttonの動作の仕組みは、AWS IoTのアーキテクチャをよく表わしている。このボタンを押すと、押されたことを知らせるだけの簡単なメッセージがAWSに送られる。AWS側ではこのメッセージを受けて、ユーザーによる事前設定に基づきAWSのサービスを呼び出す。これにより、ピザ発注からライトの点滅まで、ユーザーがAWS上に作っておいたアプリケーションを実行できる。
つまり、IoTデバイス側は、シンプルなメッセージングをするだけでもいい。AWS IoTは、このメッセージを受けて、事前に設定されたルールに基づいて、ちょっとした集計や変換などを行った後、AWSサービスを呼び出すようになっている。
なお、Dash Buttonとは、無線LAN(Local Area Network)接続されたボタンで、押すだけで特定の商品(例えば衣類用洗剤)のオーダーが「Amazon.com」に届くというもの。米アマゾンは商品メーカーと組み、さまざまなボタンを開発して販売している。同社はまた、ボタンではなく各種の家電製品や家庭用品に、同様な機能を組み込めるよう、少数の商品メーカーと提携し、「Amazon Replenishment API」というAPI(Application Programming Interface)の実装を実験中だ。遠くない将来に、このAPIは公開されるという。例えば、アマゾンは浄水器メーカーのブリタと組んでいるが、浄水器のフィルターが一定の使用回数に達したら、新しいフィルターを自動的にAmazon.comに注文するといったことができる。
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