日本気象協会は「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」の成果と2015年度の活動計画を発表。日本気象協会に各社の情報を集約し、気象予測では人工知能の研究機関の協力ることで、精度向上を目指すという。
日本気象協会は2015年10月26日、2014年度に取り組み始めた「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」の初年度成果と2年目の活動について明らかにした。プロジェクトは、日本気象協会が気象予報と併せて、POS(販売時点情報管理)データなどを一元集約、分析結果を参加企業に提供することで精度の高い需要予測を実現する目的で行われている。
食品の流通では一般に、食品メーカー(製)、卸売事業者(配)、小売事業者(販)の各社が、それぞれ独自に気象情報や各社が持つPOSデータなどに基づいて需要を予測している。しかし、製・配・販各社が需要予測で用いるデータは十分に共有されておらず、各流通段階にて生産量や注文量に予測誤差が発生するため、廃棄や返品などの無駄が生じる一因となっている。
そこで本プロジェクトでは、日本気象協会が、気象情報に加えてPOSデータなどのビッグデータも集約して解析。需要を予測した上で、製・配・販の各社に提供する。
2014年度は、季節商品の代表としてミツカン(Mizkan)の「冷やし中華つゆ」を、日持ちのしない日配品の代表として相模屋食料の「豆腐」を選択。それぞれの売上、発注量、廃棄量、気象といった各種データを解析し、需要を予測・解析した。
解析の結果、気象情報による需要予測に基づいて生産量を調整すると、最終的な生産実績に対して不要に発生している二酸化炭素を、冷やし中華つゆでは約40%、豆腐では約30%それぞれ削減できることをデータ解析上で確認したという。こうした成果を用いて冷やし中華つゆの生産量を調整したところ、2014年夏と比べて2015年8月末時点で2割弱の在庫を圧縮できたとしている。
2015年度は対象地域を全国に拡大し、対象商品をネスレ日本のコーヒーやポッカサッポロフード&ビバレッジの炭酸飲料など、2014年度同様に天候や季節による変動が大きい数十商品に拡大するPOSデータ解析には2015年度から新たにローソンやバローホールディングス、カメガヤのデータを用いる。
このPOSのデータ解析では、産業技術総合研究所が2015年5月に設立した「人工知能研究センター」が参加し、人工知能技術を用いて顧客行動などを分析する。さらに、Twitterなど、消費者が発信するSNSの情報も分析対象として、需要予測への反映を目指すという。気象情報には、「アンサンブル(集団)予測」を用いた長期予測なども活用して予測精度の向上を図るという。
日本気象協会およびプロジェクト参加各者は、各流通段階で適正な在庫を確保することで、商品の安定供給を可能にし、最終的に消費者もメリットのあるビジネスモデルの構築を目指す。
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