「Airbnb」「Uber」に代表されるシェアリングエコノミー型サービスは、日本ではまだ発展途上にある。その成長において、何が障壁となっているのか。課題を掘り下げながら、「日本型シェアリングエコノミー」の形を探る。
「使っていない○○をシェアしてお小遣いを稼ぐ」と謳(うた)うシェアリングエコノミー系のサービスが盛り上がりを見せている。部屋、室内空間、土地、クルマなど、遊休資産を個人間でシェアすることでお金を生み出そうという流れだ。モノのシェアだけでなく、専門スキルの提供や、家事代行、家庭料理作りといった無形資産(能力)をシェアする動きも盛んだ。
ただ、日本におけるシェアリングエコノミーは、まだまだ黎明期の域を出ていない。「Airbnb」や「Uber」の急成長で一気に火が付いた米国の盛り上がりには程遠い感がある。Airbnbは、それまで旅行をしなかった人を旅に誘い出し、Uberは、タクシーの利用経験がない人の需要を掘り起こした。シェアリングエコノミー=共有型経済圏という新たな経済圏を築き上げることこそがこれらのサービスの真骨頂なのであり、その点において日本はまだまだ発展途上だと言わざるを得ない。
日本のシェアリングエコノミーが、早期に米国並みになっていない理由は、大きく二つあると筆者は考える。一つは、シェアリングエコノミーの本質的な特徴やメリットが十分に理解されていない点。二つ目は、既存業界や法律との軋轢だ。一つ目の「不理解問題」は、日本人の安心・安全を重んじる意識とつながっている。総務省が公開している平成27年度版の「情報通信白書」のシェアリングエコノミーを取り上げたページに、その一端を垣間見ることができる(参考リンク)。
この中で、AirbnbやUberに対するユーザーの利用意向調査の結果が示されている。ちなみに、情報通信白書では、Airbnb、Uber共に名前は明記されていないが、内容を読めばこの両者に対する調査であることは明らかだ。それによると「利用したくない」あるいは「あまり利用したくない」と答えた人が、20代から60代の全年代にわたり、Airbnbで73.7%、Uberで77.2%だった。実に7〜8割の人が、両サービスを懐疑的に見ていることが分かる。また、利用したくない理由として最も多いのが「事故やトラブル時の対応に不安があるから」で、Airbnbで61.1%、Uberで64.0%に上る。
つまり、サービスそのものに対して、あるいは何かトラブルがあった場合において、個人が相手では「信用できない」「十分な対応を得ることができない」と考えている人が多いということなのだが、この結果自体、シェアリングエコノミーの本質的な特徴やメリットを十分に理解していない人が多いことの証とも受け取れる。
シェアリングエコノミーの最大の特徴である、「レビューを使った個人間での相互評価システム」は、AirbnbやUberの評判を見る限りでは、基本的にはうまく機能している。もちろん、サービスの拡大に伴い局地戦的なトラブルはあるだろうし、検索すると驚くような事例も報告されている。ただ、その多くは、クルマや部屋を提供する側が受けたトラブルであり、シェアされる側、つまり使う側の不利益という視点では、6割以上の人が「不安を感じる」程には多くないように感じられる。
トラブルに対する備えという点でも、それ相応の仕組みを用意しているプラットフォームは多い。例えば、DeNAが2015年9月からサービスを開始した、自家用車をシェアする「Anyca」というシェアリングエコノミー型のサービスがある。個人が自分のクルマをレンタカーのように他人にシェアして報酬を得る仕組みだ。このサービスでは、損害保険の強制加入やトラブル解決を仲介するためのヘルプデスクの設置など、事業者からレンタカーを借りる場合と遜色ない仕組みが用意されている。「個人間のクルマのシェアだから」という理由だけで、クルマを借りる際の選択肢から「Anyca」を排除する必要はないように思える。
ただ、「メリットやトラブル時の対応などを理解してもらうためには、説明会を開くなどリアルの活動に力を入れる必要があり、実際そうしている」(DeNA オートモーティブ事業部 カーシェアリンググループ・グループマネージャー 大見周平氏)と「不理解」の解消に相当のリソースを割かざるを得ない現状を訴える。その一方で「丁寧に説明すれば、メリットを理解してくれる人も多い」(大見氏)のも事実だそうだ。個人間のクルマのシェア自体が未知の仕組みなので、サイトのQ&Aを読むだけではユーザーの不安は解消されないが、ちゃんと説明してサービスに対する理解が進めば、「使ってみたい」と思う人も増えるということだ。
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