インターネット黎明期からエンタープライズITの主導権争いに至るまで、そしてIT活用の今後は――@IT 15周年企画「編集長対談」(1/3 ページ)

2000年5月22日にサイトオープンした@IT。15周年の記念企画として、これまでのITの変遷を振り返り、今後のIT活用を占う。

» 2015年10月26日 05時00分 公開
[唐沢正和ヒューマン・データ・ラボラトリ]

 15年前の2000年5月22日にサイトオープンした@IT。本稿では、その記念企画として、@ITの立ち上げ時に編集長を勤めた新野淳一氏と現編集長の内野宏信の対談模様をお届けする。内容は、インターネット黎明期と@ITの立ち上げ、コンシューマライゼーションの潮流、クラウド、ビジネスにおけるIT活用、エンタープライズITの主導権争いと今後について、と多岐にわたった。

 この15年間におけるITの変遷を振り返り、今後のIT活用を占うものになっているので、エンジニアはもちろん、企業の情報システム部門から事業部門まで、ITに関わる全ての人にぜひ一読いただきたい。

@IT編集長 内野宏信(左)とITジャーナリストであり、ブログメディア「Publickey」を主宰する新野淳一氏(右)

インターネット黎明期と@ITの立ち上げ

内野 インターネット黎明期の中で、テクノロジ情報を解説するWebメディアとして2000年に「@IT」が立ち上がりました。当時、技術系の解説記事やハウツーを掲載するサイトは、他にはなかったのでは?

新野 立ち上げの時に、国内外を含めていろいろなサイトをチェックしましたが、技術系にフォーカスしたサイトはあまりなかったと思います。その中で意識したのが「ZDNet Japan」でした。「ZDNet Japan」は、IT系のニュースサイトで、特に米国のニュースを翻訳して配信し、うまくいっていた。これから始める少人数のベンチャーで同じことをやっても意味がないし、物量も経験も向こうの方が勝っているのは明らかだった。そこで、ニュースサイトのように速報性で勝負するのではなく、記事を蓄積していくことで価値が高まり、読者と密着したサイトを作るべきだと考え、技術解説に特化した「@IT」を立ち上げました。

内野 「@IT」の最初の「フォーラム」(@ITの「コーナー」のこと)構成は、「Linux Square」(現「Linux&OSS」)、「XML eXpert eXchange」(その後「XML&SOA」。現在はフォーラム停止中)、「Master of Network」(現「Master of IP Network」)、「Windows 2000 Insider」(その後「Windows Insider」現「Windows Server Insider」)、「PC Insider」(現「System Insider」)、「IT Business Review」(その後「Business Computing」となり「@IT情報マネジメント」として別サイト化)というラインアップでしたが、これらのテーマはどのようにして選んだのですか。

新野 いろいろ取り上げたいテーマはありましたが、当時は2人しかスタッフがいなかった。そこでエンタープライズITでのニーズが高そうなテクノロジをピックアップしていきました。この中で、フォーラムに入れるかどうか最後まで悩んだのがXML。当時のXMLは、注目度は高かったが、比較的複雑な内容で、まだ定番のテクノロジとはいえなかった。どこまで扱えるか逡巡した結果、将来性があるテクノロジであり、新しく立ち上げるサイトのテーマとしてふさわしいと判断して採用することを決めました。

Linux

内野 Linuxも、当時はまだエンタープライズITとしては実用化されておらず、フォーラムとして取り上げるには若干早かったようにも思えるのですが。

新野 Linuxは当時すでにエンタープライズITのトレンドになっており、レッドハットにインテルが投資したり、IBMがコミットしたりするなど、その勢いが加速度を増している状況でした。「今後、エンタープライズITにとって重要なテクノロジになる」ということを予測していたのです。

2000年問題とエンタープライズIT

内野 一方、「@IT」がスタートした頃のエンタープライズITでは、「2000年問題」も大きな話題になっていましたね。

新野 2000年問題といっても言葉だけが先行していて、本当に深刻な問題が起こるとは思っていませんでした。ただ、2000年問題をきっかけに、エンタープライズITの重要性に注目が集まったということは重要なトピックだったと思います。

 1995年にWindows 95が登場して以来、インターネットが爆発的に普及し、ITバブルが巻き起こりました。つまり、コンシューマーITを中心に業界全体が盛り上がっている中で、浮かび上がってきたのが2000年問題であり、これを機にエンタープライズITにも目が向き始めたわけです。2000年問題は、エンタープライズITが今後の成長分野として認識され始めた重要なタイミングだったと思いますね。

内野 当時のエンタープライズITではCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)が注目されていました。しかし「システムさえ導入すれば、全てうまくいく」と盲信している企業も少なくなかった。今振り返ると、エンタープライズITはまだまだ成熟していなかったと感じます。

新野 確かに成熟していなかったが、期待度は高かったはず。例えば、ERPにしても、システムにデータを入れるだけで会計業務がとても楽になるといったように、エンタープライズITがビジネスの役に立つものになっていくという認識が広がっていった時期だと思います。

SOAPとSOA

内野 2000年を過ぎたころから、UNIXやWindowsサーバーをベースにしたオープンシステムの動きが加速していきましたね。

新野 その流れの中で、XMLが一気に注目を浴びた。オープン化されたさまざまなシステムと情報交換するために、標準的なデータフォーマットが必要になったからです。当初は、その本命がXMLと見られていましたが、そうはならず、XMLに通信プロトコルを加えたSOAP(Simple Object Access Protocol)によるWebサービスが発展し、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)の波が訪れることになった。ただ、実際には、SOAを理解できている人はほとんどいなかったと思います。当時は、ネットワーク経由で機能が連携して、そのための呼び出しプロトコルを標準化するという仕組み自体がまだ浸透していなかった。

内野 確かに、それまではハードもアプリケーションも1対1のシステム構成でした。サービス同士がネットワーク経由で連携することは想像もできない世界ですね。

新野 そうしたSOAの考え方を啓蒙していったのが2000年代前半です。この時代になって、情報システムは分散して連携していくアーキテクチャであり、それが全てインターネットの上に載っていくという姿が見え始めてきた。

Javaと.NET

内野 「@IT」を立ち上げたその年に、「Java Solution」(現「Java Agile」)と「Insider.NET」というフォーラムを追加していますが、J2EE(現Java EE:Java Enterprise Edition)と.NETという二つのテクノロジはエンタープライズITにとって重要になると見ていたのですか。

新野 .NETは、まさにSOAを推進する次世代テクノロジとしてマイクロソフトが提唱したもの。エンタープライズITをインターネットの上に載せて分散システムを構築していくというトレンドに沿ったテクノロジであり、「@IT」でも見逃せないテーマでした。J2EEは、その言葉通りJavaでエンタープライズシステムを構築していくのに重要なテクノロジで、フォーラムとして取り上げるのは必然的でした。特に2000年代前半は「情報システムで堅いものを作るにはJava」という意識が強くなっていたと思います。

内野 J2EEによって標準化が進んだことで、開発効率は格段に上がったはずですね。

新野 J2EEでコンポーネント化していくという概念が広がったことは、今振り返ると重要なポイントだったと思います。

セキュリティ

内野 一方、セキュリティのフォーラム「Security&Trust」が開設されたのが2001年。エンタープライズITにおけるセキュリティ問題に注目が集まり始めたのも、ちょうどこの頃だったように思います。

新野 当時は、エンタープライズITのセキュリティはどうしたらよいのか、業界全体が分かっていない状況でした。記事を作る側も手探りで、まずはアンチウイルスやファイアウオールなど、シンプルなエンドポイントセキュリティのテクノロジを紹介する記事が中心的でしたね。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

AI for エンジニアリング
「サプライチェーン攻撃」対策
1P情シスのための脆弱性管理/対策の現実解
OSSのサプライチェーン管理、取るべきアクションとは
Microsoft & Windows最前線2024
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。